舞子 と 芸妓     (41 斎藤孝)

京都の芸者に囲まれて至福の一時だった。「芸者」というコトバしか知らなかった。「舞子」と「芸妓」に分けられてそれぞれ違いがある。82歳の老人なってやっと芸事の伝統世界を理解できた。

煌びやかな京踊りの夜。京都には「花街」と呼ばれる区域がある。「先斗町」や「祇園」は歌で知っていたが行ったことがなかった。花街で芸妓遊びするという優雅な時間は持てなかった。そもそも「京踊り」なるものも良く分からない。

2025年1月26日は生まれて初めて「京踊り」を見に行った。正式には、「北野踊り」という。別名、「上七軒をどり」と呼ぶ。「おどり」でなく「をどり」と書く。場所は、「北野天満宮」の近くにある「上七軒歌舞練場」。本番の公演は3月から始まる。その練習舞台を見物できたのである。

三味線の音色と小太鼓の音、そして気品ある粋な小唄。島田髷・黒裾引きに揃えた「芸妓」と色とりどりの鮮やかな衣装の「舞妓」がそれに合わせながら踊る。服装や髪形の違いから「舞妓」と「芸妓」を見分けることができた。

乱読報告ファイル (71)  西洋の敗北

ここのところ、いろんなところでトランプ以後、の論議が盛んである。この本も本屋ではいかにもこのトランプ論であるように位置付けているが、そういう意味で読むべき本ではない、というのが読後の率直な感想だし、久しぶりに本らしい本を読んだ、という爽快感がある。

ヨーロッパ論についてはシュペングラーの 西欧の没落 に挑戦したことがあるが、正直、ついていくのが精いっぱいで、読後に何を得たのか、自分でもよくわからない、ただ、この文明が崩壊しつつあるようだ、と言うような漠然とした不安感しか残っていない。そこへ行くとこの本は論旨が明快であるうえ、社会思想史、なるものをかじってみた自分にとってなじみのある領域の書でもある。

西洋、という単語を著者はまず明らかにする。その対象はイギリス、アメリカ、フランス、イタリア、ドイツ、日本であって、これが政治家やジャーナリストが考える今日の ”西洋“ で 日本という ”アメリカの保護国“ まで拡大した、NATOの西洋 であるが、この広義の西洋の中で、イタリアでファシズム、ドイツでナチズム、日本で軍国主義を生み出した三か国は、歴史的に見て自由主義国とは言えない、と定義する。歴史的に見自由主義国とは、圧政を自由主義、民主主義的革命によって成立した国、すなわちイギリス(名誉革命)、アメリカ(独立宣言)、フランス(フランス革命)というのが本論の基本的な見方である。このあたりの論議はさておいて、重要なのは、この ”敗北” が日本にもあてはまる、という著者の歴史観だろう。また著者は現在のロシアがかつてのソ連の延長にあり、プーチンもまたスターリンの延長線上にとらえる、西洋側のロシア観を明快に否定する。

この本が新たに書かれたきっかけがウクライナ戦争であることはあきらかであるが、この戦争に直面しているロシアの現実が、いわゆる西欧諸国のロシア観と大きく違うことが示される。この本では数多くの数字をあげてより詳細にのべているが、その大意は次の二つの文節に凝縮されるだろう。

”プーチンシステムが安定しているのはそれが一人の人間によるものではなく、ロシアの歴史から生じたものだからだ。プーチンに対する反乱という、ワシントンがしがみつく夢は夢物語でしかない。そんな夢物語は、プーチン政権下でロシアの生活状況が改善したという事実を見ようともせず、ロシアの政治文化の特殊性を認めようとしない西洋人の現実否認から生まれる”

(問題の一つは)”西洋の思想的孤独と、自らの孤立に対する無知だ。世界中が従うべき価値観を定めることに慣れてしまった西洋諸国は、心から、そして愚かにも、ロシアに対する憤りを地球全体と共有できると期待していた。しかし彼らは幻滅を味わうことになる。

このような事実はいつから、どうして発生してきたのか。その最も基本的な原因は、西欧諸国(本論の西洋の定義ではなくより広範な意味での)における価値基準が変化したこと、その根本が我々日本人の感覚では理解できないのだが、宗教とくにプロテスタンティズムが消滅したことにあり、それが著しいのは、そもそもプロテスタントの論理によって成立したアメリカである、というのが本書の問題意識のようだ。

僕は宗教というものが理解できず、ましてやカソリックとプロテスタントとの教義のことなど、わかるわけはないのだが、大陸での迫害からアメリカに脱出した人たちの支えがプロテスタントとしての矜持であったことは、マックス・ウエーバーの主著(”プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神”)によって解説されている。この本もおっかなびっくり覗いたくらいなのだが、勤勉とたゆまぬ努力によって自分を高め、その結果によってのみ社会が進展する、というのが基本だろう。この倫理が潰えてしまったのがいまの西洋の現実っであり、結果的に富の偏在や権力への執着を招き、結果が例えば米国の現実を生んでいるのだ、と著者は言うのだ。この思考過程は現実をしめす各種の数字によって納得できる議論が展開される。詳細について解説する能力などないので、僕なりに理解し感じたことだけをまとめてみる。

1.我々(日本人、としておこう)にはソ連とロシアの区別がついていない。ロシアの国力は一般的な知識をはるかに超えて大きい。これは率直に反省すべきことのようだ。

2.ロシア(ソ連ではなく)もまた、民主主義に基づいた国である(著者は権威主義的民主主義、と呼び、少数派の権利尊重という、我々の使う意味での民主主義の不可欠な条件を満たしていないからだ、と定義する)。プーチンはソ連型の権威主義と完全に異なり、ソ連時代の計画経済の失敗から、国家が中心的役割を担う(権威主義)が市場経済を尊重し、労働者層に特別の注意を払う。片や今の西洋では大衆を基本的にはポピュリストにしか意味のないものとして軽蔑する風潮がある。

3.西洋の代表であるべきアメリカはプロテスタンティズムの基本を逸脱することが続き、富の著しい偏在と、一部エリートの理論第一の政治が弱者救済という名目のもとに逆差別を生み、国の分断を引き起こしている。今回のトランプ政権への期待はそういう内在する課題(陰謀論など)の裏返しであろう。著者はこの観察の結論として、今のアメリカは ニヒリズムに支配されている、と結論する。これは恐ろしい予言ではないか。

4.NATO諸国の間に生じている摩擦もその根底には、上記したとおりロシアの現実についての誤解があり、それがスカンディナビア諸国の中立放棄などの結果を引き起こした。他方、欧州各国を除いた ”そのほかの国” がロシアに理解を示し、あるいは公然とロシアに加担している、しようとしている現実は明確である。このあたりの議論で、著者は hubris (傲慢、自信過剰)という単語を使っているが、これは特にアメリカの行動を理解するのに意味があると感じる。

5.このような 西洋の混乱 の理由が宗教の変節によるのだ、と言われても我々日本人(基本的には無宗教)には理解しがたいのが当然かもしれない。著者は人類学の大家でもあるのだが、その見方からすると、日本とドイツは家族構造が類似していて(そのほかの西欧諸国とは違って)、いわゆるグローバリゼーション論者とは一線を画し、国々はすべからく違う存在だと考える点で共通しているのだそうだ。このあたりについて考えることが、文頭にかいた トランプ以後、についての議論にも資するのかもしれない。

やっと一応読了はしたが、論旨には賛成する点が多く、特に中段で展開される論旨は明確な数字をベースとした、説得力に富む明快なものなので、一息いれたうえ、覚悟して再読したい、と思っている。こういう本は珍しい。

 

エマニュエル・トッドはフランス人口統計学者歴史学者人類学者学位Ph.D.ケンブリッジ大学1976年)。研究分野は歴史人口学家族人類学。人口統計を用いる定量的研究及び家族類型に基づく斬新な分析によって広く知られている。フランスの国立人口学研究所に所属していたが、2017年に定年退職した[2]2002年の『帝国以後』は世界的なベストセラーとなった。経済現象ではなく人口動態を軸として人類史を捉え、ソ連の崩壊英国のEU離脱や米国におけるトランプ政権の誕生などを予言した。

 

 

 

八ヶ岳南麓も雪です  (グリンビラ総合管理HPより転載)

現在の外気温マイナス0度、雲が多いですが時折青空ものぞいています。さて、市内昨晩雪が降りました。薄っすらと積もり、アイスバーンも多く非常に危険な道路状況です。

塩カル散布の道路もありますが、ブラックアイスバーンになっていますと滑りますので安全運転第一です!

 

不眠・便秘・夜間頻尿などに悩んでいませんか? (普通部OB 篠原幸人)

小生、1月4日ごろからインフルエンザに罹患し(予防接種は受けていたのですが)、発熱はなかったのですが、消化器症状と咳・痰、更に倦怠感が続いてダウンしていました。しなければいけない仕事は何とか出来るのですが、何となくだるくてやる気があまり出ない。恒例のゴルフ大会も初めて欠席しました。やはり昔と違って、体調不良が長引きますね。でもそんな時は無理せず、今まで以上に身体を休ませることにしています。しかし、先週からゴルフもテニスも復活しました。この「徒然」を再開したのも元気になってきた証拠と思ってください。

年齢と共に、病気とは言えないほどだが、起こってくるものに不眠、便秘、夜間頻尿などがあります。特に70~75歳以上の高齢者には不眠が35%以上、便秘は50%以上、夜間頻尿(夜中に2回以上トイレで起きる)は20%あるいはそれ以上あると言われています。

不眠に対しては、睡眠薬を常用している方もおられるでしょうが、一般的な睡眠薬は認知機能を低下させる可能性があり、お勧めできません。しかし最近の新しい睡眠導入物質には生体内にある比較的無害なものもあります。かかりつけの先生と相談し、古い睡眠薬と少しづつチェンジしていくことも必要です。

便秘も大敵です。年齢と共に筋力ばかりでなく腸管の運動能力も落ちてきます。更に沢山お薬を飲んでいる方はそれが便秘につながらないか主治医に相談してください。また食物繊維や水分摂取不足、合併する病気によっても便秘がひどくなります。先日亡くなられたTさんは高齢女性によくあることですが、なかなか便通のことなどは外来でもおっしゃらない方でした。しかし強い便秘があったようで、トイレで長く息んでおられたのかその直後に普段は高くない血圧が急に上昇したようで、脳出血で亡くなられたとのことです。

夜間頻尿は多くの方の悩みの種ですね。不眠の原因にもなります。しかし市販の漢方薬などでは効果のある方は少ないようです。特に、夕食時の中等量以上のお酒や水分の過剰摂取は出来れば避けるべきです。最近、キッセイ薬品からのミニリンメルトというお薬を出した患者さんに著明な夜間頻尿減少効果がありました。ご本人もびっくりされたほどです。但しこれは副作用も多い薬です。主治医とよく相談して使用可能な場合のみ試しに使ってください。

老化は認知障害ばかりでなく、不眠・便秘・夜間頻尿などの形でも忍び寄ってきます。早めの対応が必要です。 食生活の注意・多量の飲酒制限・出来る範囲で身体を動かすこと・月並みだけれど規則正しい生活・細かい体調変化への早めの対応、なんてもう聞き飽きたかな。

エーガ愛好会 (300) 地上より永遠に

月いち高尾、何回目だったか忘れたが、故後藤三郎の友人で参加していた川名君と映画の話になり、それがきっかけで始めてみたこのシリーズも実に300回になった。各位のご協力に感謝である。記念すべき300号ははからずもかつて名作といわれた作品をめぐって、いわば時代観の相違というべきか、この企画はじまって以来の論戦となった。このあたり、企画のレーゾンデートルだろうと信じて満足している。

(42 保屋野)誰かが云っていましたね。「名作とはツマラナイものと心得よ」掲題エーガはその典型でした。

真珠湾前夜のハワイの陸軍中隊を舞台に、兵士へのイジメ等過酷な世界を描いたベストセラーの映画化らしいですが、脚本がイマイチなのか、面白くも無く、感動も無く(テーマが)良く分からないエーガでありました。

ただ、俳優陣は豪華で、ランカスター、モンティー、の男優陣、カー、リードの女優陣は目の保養になりました。しかし、二組の恋愛劇は超陳腐でランカスターとモンティーの魅力を半減させていましたが・・・これがアカデミー作品賞?・・・私の感受性が(老化により)劣化してるせいなのでしょうか・・・70年前に観たら「傑作」と思ったかも?

(44 安田)外連味の無い160kmストレート、外角低めのストライクの感じです。僕も保屋野さんほど辛口ではないですが、似たり寄ったりです。

小津安二郎の「東京物語」を最初観た時、”なんでこの映画が世界的に賞賛されるのか?” と訝しがったものです。絶賛するドイツの監督ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders) をあまり理解来ませんでした。「地上より永遠に」も同じようなもので、僕のような素人凡人にはその素晴らしさが理解できない極上の代物なのかと思ったものです。ランカスターとカーの波打ち際のラヴシーンは、’50年代当時としては、発想といい、舞台のユニークさといい、2大スターの絡み合いといい、語り草になっていますね。「慕情」のウイリアム・ホールデンとジェニファー・ジョーンズの海岸べりのラブシーンは、もしかすると「地上より永遠に」にヒントを得たのかも?

(HPOB 金藤)「地上より永遠に 」 観ました。   お二人と全く同じ感想です。 出演者にモンゴメリー・クリフトの名前があったのでわざわざ観たのですが・・・プンプン

(編集子)このことについては、まさに年齢のギャップを感じます。僕らの年代でこの映画は確かに高い評価を受けているし、小生も感銘とまでは行きませんが、いいフィルムだったと思っています。考えてみると一つひとつのカットなんかの問題でなく(この間も書きましたけど、シナトラを失ったモンティが一人でトランペットを吹くシーンは気に入っていました)、この映画の意味は、そのメッセージ性だと思います。やっこたちとほぼ一まわり年長の僕らには、小学校時代に身をもって感じた戦後の窮乏、アメリカ人に対する混乱した思い、そんなものが”戦争”の無意味さ、組織というものの非情さ、そういうものを理屈ではなく肌で感じた記憶があります。戦後、イタリア映画に同じようなテーマを持った作品が多くでましたね。この作品もそういう感覚で受け取られるべきものなのだと思います。ドナ・リードは本国へ帰る船の上で、事情はまったく違うデボラ・カーに自分とモンティの間柄を嘘で固めて打ち明けて、せめて自分なりの決着をつけようとします。裏を知っているカ―の複雑な思いの表情が胸に響きました。あれは単に恋愛ものの都合のいい決着ではなく、そういうものを引き起こした戦争という愚挙への怒り、その思いが永遠に消えないものなんだ、ということ、それを骨身に感じた人間にずんとひびいたんですが。

’(保屋野)これまでも、賛否分れた「名作」が多くありましたね。記憶にあるのが、「道」」「パペットの晩餐会」「市民ケーン」「我が谷は緑なりき」「レベッカ」・・・各自の感受性や好み及びこれらを観た年齢等も影響してるのでしょう。評価が分かれるのは当然で、これも「エーガ愛好会」の良さなのでしょうね。満場一致、というのは、「ローマの休日」「大いなる西部」「サウンド・オブ・ミュージック」・・・大傑作と評価の高い「第三の男」や「荒野の決闘」でもイマイチという変人(私?)がいましたね

(普通部OB 船津)中司さん、同感!何か皆様がボロ映画と酷評して居るのに違和感を感じていました。貴兄の解説に賛同致します!

グーグルでもなんでもこの映画を探すと必ずこのシーンが第一にでてくる。これが今回議論を呼んだ原因かもしれない。

(33 小川) あらためてプライム・ビデオで観ました。ノスタルジーに溢れていて懐かしかった、戦後7年、中学生時代の作品ですね。皆さんとの感想の違いはジャイさんと同様、育った時代背景の違いでしょうね

 

 

乱読報告ファイル (70) バルセロナで豆腐屋になった   (普通部OB 菅原勲)

「バルセロナで豆腐屋になった」定年後の「一身二生」奮闘記(著者:清水建宇、岩波新書、2025年)を読む。

一身二生(イッシン ニショウ)とは、聴きなれない言葉だが、著者によると、この出典は福沢諭吉の「文明論之概略」(1875年)に出て来る言葉のようだ。「方今我国の洋学者流、その前年は悉皆漢書生ならざるはなし、・・・恰も一身にして二年を経るが如く、一人にして両身あるが如し」。(著者:このところの我が国の洋学者たちは、ことごとく以前は漢学を学んでいた人たちである。まるで一つのからだで二つの人生を生きるかのように、一人のなかに二人いるかのように)。こりゃー、まるでR.L.スティヴンソンの「ジキル博士とハイド氏」(1886年)じゃないか(だが、こっちは二重人格か)。小生も、昔、同じ岩波新書(1986年)で、丸山眞男の(「文明論之概略」を読むの上・中・下巻)を読んだ記憶があるが、誠にお粗末ながら、その内容は全く覚えていない。いや、もしかしたらどうにも手に負えなくて上巻の半ばあたりで途中棄権していたのかもしれない。

実は、朝日新聞の記者だった著者が、定年後、バルセロナで豆腐屋になると最終的に決意したのは、伊能忠敬の生涯に触れてからだ(小生、まだ読んでいないが、伊能については、井上ひさしの「四千万歩の歩み」(1990年)、太田敏明の「一身二生」(2018年)などがある)。

千葉の佐原村の大地主であり、広範囲に酒から廻船業までを営む伊能家に見込まれ婿養子になった伊能は、49歳で隠居する時の伊能家の財産を30万両、今の貨幣価値でおよそ75億円にも増やしていたと言われており、極めて有能な事業家として前半生を終えている。以降の後半生は、皆さんご存知のように、16年間で通算10回の測量を行い(4回までは自腹を切って負担)、日本全国を徒歩で調べ、その地図を作製した。当時の平均寿命は40代半ばとみられているが、73歳まで生きている。つまり、伊能は、一身二生そのものを体現しているわけだ。

さて、著者は、一身二生を実現するに当たって、その移住先をバルセロナに決めたわけだが、その決め手となったのは、取材で世界各地を訪れた経験から、唯一、アジアから来た異国人を奇異の目で見られなかったのがバルセロナであったことだ(著者の本音は、終日、拝めるA.ガウディのサクラダファミリアにあったのではないか)。また、移住であれば、何年も暮らすことになる。ところが、バルセロナの豆腐は中国製らしく日本のものとは全く違う代物で、例えば、冷ややっこや湯豆腐で食べることなど出来ない。そして、豆腐大好き人間である著者が何年もそれを食べるのを我慢することも出来ない。さすれば自分で作るしかない、ということで、バルセロナに日本の豆腐屋が誕生することになるわけだ。

著者は、2007年、秋、停年退職し、その後、日本で、スペイン学校に通い、豆腐屋で修業し、中古の製造機械、道具などを購入し、バルセロナで店の物件を探し、改装工事を発注し、労働居住ビザ取得の手続きを進めるなどなど。そんな準備のためにかれこれ3年も掛かって、2010年4月、62歳の時に、晴れてバルセロナに豆腐屋を開くことになる。

豆腐の製造は著者の責任だが、売り場を預かるのは奥さんだ(著者はカミサンと呼んでいるが)。ところが、ほぼ10年後の2020年、何事にも蛮勇を振るって頼りにして来た奥さんの乳癌が再発、転移したことから、治療に専念するため二人で日本に帰国することになった。

その結果、バルセロナの豆腐屋は他の日本人に引き継いで貰うことなり、後日談だが、著者によると、この豆腐屋は、その後、益々発展しているようだ。しかし、それに引き換え、悲しいことに奥さんは亡くなってしまう。

「おわりに」で述べているように、著者は、一身二生するためには、用意周到が必須条件である冒険者の心得が足りなかったと反省する。例えば、バルセロナの豆腐事情すらよく調べず、アジアからの輸入品やドイツ、スペイン製が沢山出回っていることも知らず、突進し、お客の動向をつかめず、多くの人を雇って資金繰りで苦しんだ、などなど。しかし、一方、その冒険の甲斐もあった。新たに大勢の友人を得、沢山の事を教えられ、学び、喜びを分かち合うことが出来た。「心穏やかな日常」は手放したが、それに勝るとも劣らない「宝物」を貰ったのだ。

(HPOB 小田篤子)私の読みたい本のメモにも載せていた、「バルセロナで豆腐屋になった」の感想読ませて頂きました。

海外のお豆腐は、甘かったり、硬かったりしますが、その地の人の好みもあり、開業するまでの経緯を知りたいと思いました。東京タワーの下にもある「とうふ屋うかい」が我が家から近い所にあり、時々利用しています。ちょうど我々の年齢にはお豆腐料理は食べやすくて良いですね。
✩私も見たいと思っていた《蔵王の樹氷》に斎藤カメさんご夫妻が先頃行っていらしたようですが、夫の勘違い?もあり、我々は八甲田の樹氷や函館に来月行くことになりました。
函館では、本「レイモンさんのハムはボヘミアの味」のレイモンハウス(歴史展示館)に行く予定です。
こちらはボヘミア(カールスバート)生まれのカール·レイモンさんが北欧、ドイツ、パリ、アメリカ、日本、カムチャッカ等を経て、函館で勝田旅館の娘と巡り会います。
駆け落ちのように結婚し、祖国や満州、北海道等で色々な悲しい出来事を体験し、最後は函館でソーセージ作りで成功する…というジェットコースタードラマのような実話です。

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一身にして二生を経る  森岡清美(成城大学名誉教授)

 「一身にして二生を経るが如し」とは、福沢諭吉(1835-1901)が『文明論之概略』(1875)の緒言で漏らした述懐である。二生とは二つの生涯のこと、今生と後生あるいは前生と今生をいう。前生はこの世に誕生する前の生、後生は死後の生であるから、現在の一身では今生だけしか経験できないところ、前生と今生の二生をこの一身で経験するような人生であると、諭吉は述懐したのである。彼は中津藩士の家に生まれ、蘭・英両語学力で幕臣として出世コースに乗ったが、明治維新以後は仕官せず、慶応義塾を創立して日本の教育・言論・思想に大きな影響を与えた。維新後を今生と把握すれば、それ以前は前生というべき落差のあることを、60歳を超えた晩年の回顧ではなく、早くも40歳で実感していることも注目に値しよう。

 

オハイオ州―トランプの出身州のこと    (44 安田耕太郎)

オハイオ州はアメリカでは “Birthplace of Aviation” と云うそうです。初めて飛行機で飛んだライト兄弟(Wright Brothers) の出身州です。ついでに最近話題になる Rust belt states はどの州かチェックしてみました。Although there is no definitive boundary, the states that are considered in the Rust Belt—at least partly—are:  云々、というのがいわゆる rust belt  の定義のようです。
いずれにせよ、”さび付いた地域” と呼ばれるのはうれしいことではありませんよね。
  • Illinois (Land ofLincoln) リンカーンが生まれた州
  • Indiana    (Hoosier State) 田舎者の州
  • Michigan (Great Lakes State)五大湖の州
  • Missouri (Lead State)鉛の州
  • New York (upstate and western regions)
  • Ohio (Birthplace of Aviation) 飛行機発祥の地
  • Pennsylvania (Key Stone State) 1776年の独立時の13州の中央に位置し、独立宣言が起草され採択された州。West Virginia (The Mountain State) すべての地域がアパラチア山脈の山岳内にある。
  •                                         (編集子) 米国各州はそれぞれニックネームを持っている。アメリカ人得意のジョークだと思っていたが、たとえばカリフォルニアの場合は、”1968年に正式に決められた” という記述があるので結構マジなものらしい。小生が覚えていた範囲では、安田情報に連なっていえばミズーリの鉛に対抗して
  • Nevada    (Silver State)
  • Arizona  (Copper State)
  • California (Golden State. Gold でなく形容詞になっているのは単に名産品ということだけでなく歴史的背景もあるようだ
  • Idaho(Potato State)
  • 貴金属に対抗してじゃがいも、とは面白い。ほかに名前が思い出せないがあるミステリで探偵役の警部がミズーリ州出身なのをからかう場面があった。ここの生まれの人は猜疑心が強くて何でも証拠を要求(Show me !)するので、この州の別名は Showme State, ともいうらしい。
 Image, State Symbols - California State Library

 Image, California Stats and State Symbols for Reporter Fact ...

The Golden State” has long been a popular designation for California and was made the official State Nickname in 1968. It is particularly appropriate since California’s modern development can be traced back to the discovery of gold in 1848 and fields of golden poppies can be seen each spring throughout the state.

 

冬の夜におすすめのカクテルです    (バー アンノウン  川島恭子)

ホットウイスキートウデイ (Hot Whisky Today)

お好みのウイスキー30ml(濃さはお好みで)

角砂糖1個 または同じくらいの量の砂糖 又はハチミツ

レモンスライス1枚

クローブ2、3個(レモンスライスに差し込む)

上記の材料を耐熱グラス またはコーヒーカップなどに入れ、熱いお湯を注ぐ。

ス子ットランドでは風邪を引いたときに飲まれるほど、健康的な飲み物といわれています。体を温めたい時や冬のキャンプなどで飲むと芯から身体が暖まりそうですね!

(編集子)小生が風邪気味の夜愛用してきているミックスはこういう名前で呼ばれると知って満足。ただしクローブ、なんて高級なものは入れてない。

(風邪がひどいときはこれを飲んだあと、布団を重ね、部屋をガンガン暖めてパジャマがびっしょりになるくらい汗をかくのがいい。もっともこの療法は体力も消耗するので、最近はやっていないが)

僕も七福神ファンです (34 小泉幾多郎)

KWV44年卒閑人会恒例の七福神巡りの報告があり、昔懐かしさを感じたものです。小生も長年七福神めぐりをしてきました。残念乍ら安田君のように人を纏めてまでに歩く能力に欠け、単独或いは家内と共に歩いたのでした。当初は1987年の三浦半島七福神から秩父・下谷・隅田川七福神を回りましたが、2000年から、退職したこともあり、毎年喪中でもなければ出掛けることにしました。しかし残念ながら、高年齢化と共に、1万数千歩という距離を歩くことが難しくなってきました。

2021年横浜の野毛に成田横浜別院という1箇所七福神があることを知ってから、翌年は横浜の柿生の浄慶寺(秋葉山神社)という一箇所七福神、昨年は川崎市桜本商店街にある桜本九福神が至近距離に七福神が点在しているとかで、お茶を濁してきました。今年も横浜から近い長津田駅からの福泉寺と言う一箇所七福神へ昨日お参り。この福泉寺は、長津田駅からタクシーで600円、徒歩10数分、丁度年寄り向きのワンダーランドスポットで、楽しめました。本尊の薬師如来は見られなかったが、七福神は一箇所に纏まり、他にぼけ封じ観音、ぼっくり大師、いぼ取り地蔵等のほか、戒壇巡りと称し本堂脇に真っ暗闇の階段を手摺を頼りに 進むと本尊と握手した途端に明かりに遭遇するという仕掛け迄あり、年寄りを喜ばして呉れました。

過去2000~2020年にお参りした七福神を羅列すると、日本橋・港・北千住・池上・目黒山手・新宿山手・東海・金沢・五日市・羽田・寄居・佐倉・鶴見・横浜・桐生・川崎・瀬谷の各七福神。

蔵王のモンスター (41 斎藤孝)

怪獣ゴジラは立ち上がり吠えていた。真っ白な雪のコジラである。雪の闇夜で樹氷の恐竜の群れにとり囲まれた。そこは雪の蔵王にある樹氷のジュラシックパークである。

 蔵王の樹氷原はライトアップされた幻想的な大自然の美術館になった。暗黒の雪原に真っ白な巨大な肖像が次々と現れていく。大魔神は繊細なガラス細工の鎧を着ていた。お洒落な伊達武者。

蔵王の守護神である樹氷巨人「スノーモンスター」だった。

老夫婦は冷蔵庫を探索するような極限の寒さの中、南極越冬隊の姿になりふるえながら樹氷アートを楽しんだ。樹氷は世界的にも珍しい気象現象であるという。シベリア大陸からの季節風が蔵王連峰にぶつかり、多量の過冷却水滴と雪が常緑針葉樹のアオモリトドマツに長時間吹きつけることで生まれる。大きくなった樹氷は「スノーモンスター」と呼ばれるが、「ゴジラ」にそっくりだった。

カラフルな光に照らされ、漆黒の闇の中に浮き上がる樹氷の姿は、ファンタジーの世界に迷い込んだようだ。キャタピラ付き雪上車「ナイトクルーザー号」は、ライトアップされた樹氷群を雪煙を上げながら登っていく。樹氷が造り出した幻想的な大自然のアートを堪能した。蔵王は樹氷の芸術家だった。

「樹氷のビーナス」と「樹氷の微笑」は発見出来なかったが、蔵王温泉の湯と地酒ホットワインで満足できた。

(42 河瀬)スノーモンスターパークの写真。光の陰影が素晴らしい。

一昨年にも10メートルのモンスターが見れましたが、これも温暖化による多量の日本海水蒸気のせいでしょうか。
世界にも稀な蔵王の樹氷が外国人観光客に知られるとホテルが一杯になりますね。蔵王がニセコにならないように。
一昨日「ブータンが温暖化で氷河湖の崩壊に怯えている」というNHK番組を見ました。崩壊危険な湖が7つもあるそうです。樹氷の崩壊ではそんなことは起きませんが、氷の落下で人が死ぬこともあるそうですね。