エーガ愛好会 (333)ヘプバーンの佳作2本  (学生時代クラスメート 飯田武昭)

映画「緑の館」

映画「緑の館(Green Manshons)」(1959年)はウイリアム・ハドソンの恋愛小説を映画化した作品。主演はオードリー・ヘップバーン、アンソニー・パーキンスで、監督は当時、ヘップバーンの夫だったメル・ファーラー。助演に、リー・J・コッブ、早川雪洲。

物語は南米ベネゼイラの反乱軍から逃れてアマゾンの原始林に迷い込んだ青年(A・パーキンス)が、先住民に捕らえられて処刑寸前で族の酋長(早川雪洲)に一命を助けられたが、原始林に現れる不気味な妖精か魔女を処罰する任務を受けて原始林に入り込むが、動植物と触れ合う内に妖精(A・ヘップバーン)とも出会う。妖精は仲の悪い祖父(リー・J・コッブ)と暮らしているが次第に過去の悲惨な住民闘争の事実が明かされ、青年は妖精に恋心を抱くようになる。一方、先住民は青年が戻って来ないことに痺れを切らし、原始林を捜索し妖精を大木の上に追い上げ、下から火をつけて大木ごと焼き殺してしまう。青年は先住民に事情を説明し、原始林の先の光の差し込む丘に立つ妖精の元へ駆けあがり抱き合うのであった。

 

映画「噂の二人」

映画「噂の二人(The Loudest Whisper)」(1961年モノクロ) リリアン・ヘルマンの戯曲「子供の時間」(1930年代)を映画化した作品。主演はオードリー・ヘップバーン、シャーリー・マクレーン、ジェームス・ガーナー。製作監督は「ローマの休日」のウイリアム・ワイラー。

物語は全寮制の女子中学校で女教師二人(カレンとマーサ)に虐められていると誤解した一人の意地悪い女生徒が、苦し紛れに大嘘をつく。それを丸のみで信じた女性の校長が学生たちを親に引き取らせ、その噂が街中に広がってしまう。カレンと婚約している若い男性医師(ジョー)は、二人の側に付き、噂の払しょくに腐心するが、最早手遅れの事態となり、やがてカレンは実はマーサを本当に好きだったと告白する事態に発展する。挙句の果てはカレンは精神を病んで自殺してしまう結末はあまりにも惨い。

この映画の見所は、当時、人気絶頂の2大女優オードリー・ヘップバーンとシャーリー・マクレーンの迫真の演技であろう。多くは室内でのドラマ仕立てのストーリー展開で2大女優と助演者たちの名演技で物語を引っ張る力は、流石に名匠ウイリアム・ワーラーだと思う。結末までのストーリー展開に疑問を持つ人もいるかも知れないが、舞台ドラマを観る感覚で、俳優の演技を主体に、人物の配置やカメラワークを楽しむ積りならお勧めのサスペンス感を煽るシリアス・ドラマだと思う。個人的な見解だが、この映画でも私の贔屓のシャーリー・マクレーンの演技力は、オードリー・ヘップバーンを圧倒している。彼女は悲劇・喜劇を問わずオールラウンドに名演技が出来て、ダンスも踊れる最もチャーミングな女優だった。

監督ウイリアム・ワイラーは「ローマの休日」(1953年)の後、A.ヘップバーンをこの映画で使い、その後に「おしゃれ泥棒」(1966年)でもヘップバーンを3回目の主役に使っている。ワイラー監督は他にも「ミニヴァー夫人」「大いなる西部」「ベンハー」など、数々の名作を残しているが、この映画はワイラー監督の「必死の逃亡者」(1965年モノクロ)と似たような屋内でのドラマの緊迫感を醸し出す設定になっている。「必死の逃亡者」は、とある閑静な住宅街の平和な幸福な家族の家に、3人の強盗が侵入し、家族とのやり取りの緊迫感が漲るストーリー展開。幸せな家族の夫婦をフレドリック・マーチ、マーサ・スコットが演じ、3人の強盗はハンフリー・ボガート、ロバート・ミドルトン、デューイ・マーティン。保安官役にアーサー・ケネディ、ギグ・ヤングも出ている。こちらも俳優の名演技、舞台設定でモノクロ映像が生きている映画の典型だと思う。

(金藤)ヘップバーンの出演映画に「マイヤーリング」1957 原作 「うたかたの恋」があったのも最近知りました。オーストリアの皇太子役は、当時、ヘップバーンの夫だったメルファーラーが演じてるのですね!メルファーラーはミュージカル「リリー」で知りましたが、皇太子役?と思いますがいかがでしょう?

(飯田)ヘップバーン&メル・ファーラーの「マイヤーリング」(1957年)は残念ながら観ていません。この映画は元々、アメリカのテレビ映画として製作。放送された作品と承知しています。
小説「マイヤーリング(Mayerling)」を映画化したフランス映画(邦題)「うたかたの恋(Mayerling)」(1936年製作)は日本公開は1946年頃ですが、シャルル・ボワイエ、ダニエル・ダリューという当時の人気俳優二人が主演で日本でも大ヒットした作品です。こちらは一見の価値があります。

映画「リリー」は、このコーナーで私が時々話題に挙げる作品(小品)ですが、物語はフランスの片田舎の街で、孤児の娘(レスリー・キャロン)が生きることも儘ならない心境で歩いている間に、親切な人、意地悪な人などに出会う内に、人形劇の小屋に出会い、その人形遣い(メル・ファーラー)が、次第に孤児の娘に恋心を抱くストーリーです。人形使いは顔を出さずに、幕の後で人形を操りセリフを語るという設定ですので、娘は人形使いの顔を最後まで知らずに話しかける会話で物語は進行します。メルヘンチックな映画の典型みたいな作品で、挿入歌「ハイ、リリー、ハイロー」は好きなメロディーです。

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マイヤーリンク (Mayering)事件

ルドルフ・フランツ・カール・ヨーゼフ・フォン・ハプスブルク=ロートリンゲンドイツ語Rudolf Franz Karl Joseph von Habsburg-Lothringen1858年8月21日 – 1889年1月30日)は、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の子で皇太子ハプスブルク=ロートリンゲン家の世継ぎとして周囲に期待されたが、父帝との反目や政治的対立などから孤立し、男爵令嬢マリー・フォン・ヴェッツェラと謎の死を遂げた(「マイヤーリンク事件英語版」)。その死については、今もなお謎に包まれている。