ギボウシは見返り美人か    (41 斉藤孝)

 軽井沢の小さな山野草の庭で擬宝珠(ギボシ)の『見返り美人』から歓待された。

ギボウシは『見返り美人』であると妄想した。

背筋をすっと伸ばし首筋が綺麗だ。まっすぐ伸びた茎は、乙女の細いうなじのようで気品がある。その優美な茎先に筒状の花をいくつもつける。

浮世絵師「菱川師宣」は、女性を美しく見せる演出法として、歩みの途中で後方に視線を送る姿を描いた。「モナリザの微笑」にも匹敵できるような演出である。