”長いお別れ” について   (大学クラスメート 飯田武昭)

菅原さんの「長いお別れ」(著者:R.チャンドラー/1954年、訳者:清水 俊二、発行:早川書房/1976年)を読む」を拝読して、その最後のパラグラフで「結局のところ、小生にとっての最高のハードボイルド小説は、E.ヘミングウェイの「武器よさらば」だと、勝手に決めつけている」という文脈について書きます。

私は推理小説・探偵小説が学生時代に流行った時期にR.チャンドラーという作家が居たことは知っている程度の、推理・探偵小説に馴染みの薄い人間ですが、E.ヘミングウェイの方は所謂ロスト・ジェネレーション時代を描いた作家として、その小説は何本かの大作映画になっています。代表的な作品では「陽はまた昇る」「キリマンジェロの雪」「武器よさらば」「誰がために鐘は鳴る」「老人と海」などで、どの映画もそれなりに映画館で楽しんで観た作品ですが、「武器よさらば」(1957年製作、監督チャールズ・ヴィダー他 主演ロック・ハドソン、ジェニファー・ジョーンズ、ヴィットリオ・デ・シーカ)は戦場で傷ついた兵士(R.ハドソン)が野戦病院から、確かニューヨーク州北部のシラキュースにある病院で看護師(J.ジョーンズ)をしている女性との恋愛を映画のメインに描いた作品だったと思いますが、私の感覚ではハードボイルド感はあまり無くて、むしろこの時代の映画でのハードボイルドの代表作は「三つ数えろ」(1946年製作、ハワード・ホークス監督、主演ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール)だと、勝手に思い込んでおります。

ところで、今回改めてハードボイルドという言葉の意味を調べたら以下の通りで、語源は「硬いゆで卵」(「hard-boiled」)という単語だと知り、自己の浅学菲才を改めて悟りました。

「ハードボイルド」は、英語の「hard-boiled」が語源です。

  1. 固ゆで卵: 元々は文字通り、黄身まで固くゆでられた卵の状態を指しました。
  2. 非情な性格: 卵が固く流動しないことから、「感情に流されない」「非情な」「妥協しない」といった人間の性格を表すようになりました。
  3. 文芸・作風: 第一次世界大戦後のアメリカ文学において、感傷を排し、客観的で簡潔な描写で現実を描く写実主義の手法として定着しました。

ところで、小説や映画の主人公の性格(キャラクター)を表すハードボイルド以外に、虚無感を表すニヒル(ラテン語、nihil)という役柄もありますが、こちらの方での代表作は画家モジリアーニの半生を描いたフランス映画「モンパルナスの灯」(ジュラール・フィリップ主演)だったかな~と、これ又、勝手に思い込んでおります。

(編集子)HBについては思い入れがあるので、過去何回かテーマにしている。飯田兄、本稿2023年1月27日、同3月17日、2021年11月20日付記事をご一読いただければ幸甚。小生、HBと目されるなかで映画化された作品には自分のイメージと全く違うことがほとんどなので、落胆することが多い。しいて言えば、ロス・マクドナルドの ”動く標的” がポール・ニューマンの渋みが出ていてよかった。