秋の七草をめぐって  

(42 保屋野)船津さんはじめ、花がお好きな方々へ。

花の雑誌を見ていたら、昭和の初期、当時の文化人が選んだ「新・秋の七草」、初めて知りました。

秋海棠(永井荷風)、オシロイバナ(与謝野晶子)、コスモス(菊池寛)、彼岸花(斎藤茂吉)菊(牧野富太郎)、葉鶏頭(長谷川時雨)、赤マンマ~イヌタデ(高浜虚子)だそうです。・・・なるほど。                                       知ってました?

(普通部OB 船津)そんなキョウヨウ、キョイク無き暇人ですが知りませれです。当たり前だなぁ。ろくに本も読んどらんし、ーーーーー!

(44 安田)秋海棠(しゅうかいどう)、葉鶏頭(はげいとう)、赤マンマ~イヌタデ、この3つは呼び方を含めて花の写真をネットで調べて初めて知ることが出来ました。昔の文人の恐ろしいばかりの教養には魂消ます。
文章を書く力などは、現代人・将来人はパソコンの影響で、劣化の一途を辿りそうです。森鴎外、夏目漱石、永井荷風・・・などは次第に読まれ無くなってていきそうです。それこそ菅原さんの仰る“にふう”って誰ですかの時代になってきました。僕の娘は小学生時代に、“お父さんは富良野でスキーしてきたのだよ” と書いて知らせたら、“とみよしの” は何処なの?と尋ねてきました。北海道の富良野は地理で勉強しているはずなのに・・・。そんな時代を迎えつつあるのですね!

(金藤)新・秋の七草 知りませんでした!その中から私の身近にあった三つの草花に関してです:

「オシロイバナ」は黒い種を割ると中に白い粉(胚乳)が入っています。 幼い頃、鼻筋にに塗ってみたかったのですが、毒があるので口にしてはいけないと言われていましたから顔には塗りませんでした。
花で、けん玉を作って遊びましたがなかなか入りません、茎を曲げると雌しべの茎・紐になる部分が長くなり入りやすくなりました。
「赤マンマ」はその名の通り 赤い粒をバラバラにして、やはり幼い頃、おままごとに使いました。 私が小学校低学年の頃までは住宅街の道端にも咲いていました。
「シュウカイドウ」は漢字で「秋海棠」と書くのは初めて知りました!
実家にも昔からありましたから、八王子に住むようになった時に株分けして持ってきました。
秋に開花後、葉も茎も枯れますが地中に球根が残り、春になると毎年生えて来ますが、一時無くなってしまいました でも、近所の方に株分けして差しあげていましたので、今度は私がお願いして株分けしてもらい出戻ってきました
ガーデンセンターで売っているベゴニア類と比べると、半野生ですから地味ですが、優しいピンク色の花が垂れ下がり気味に咲き好きな草花の一つです
(編集子)安田兄、こういう時代だからこそ、オリジナルを大切にして子孫に伝承するのが我々の務めですぜ。例によってグーちゃんからコピーしておきます。

秋の七草とは、山上憶良(やまのうえのおくら)が詠んだ下記の2首の歌にちなんでいます。

1.「秋の野に 咲たる花を 指折り かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」 (万葉集)

2.「萩の花 尾花葛花 瞿麦(なでしこ)の花 姫部志(をみなえし) また藤袴 朝顔の花」 (万葉集)

歌の中にある「朝顔の花」については、朝顔・昼顔・ムクゲ・桔梗など諸説ありますが桔梗が有力とされています。秋の七草は、春の七草のように粥にして食べたり、というようなことは特にありません。

平安時代貴族は、秋の七草が咲いていた花野(はなの)を歩きながら歌を詠むという風流な遊びをしていました。花野に咲く秋の七草を月の光で愛でていたのでしょうか。

エーガ愛好会(94) 今週観た映画です   (HPOG 小田篤子)

①アリー、スター誕生顔にコンプレックスが有り、小さなバーで唄っていたアリー(マドンナ)が、後に夫となるロックスターに見出だされ、グラミー賞を取るまでになります。しかし夫はアルコール、麻薬中毒になっていく…。

マドンナの歌、演技に迫力があり、堕ちていく彼をかばう姿が意地らしい。会場で待っている彼女をよそに、自宅のガレージで自殺してしまうとは最後が悲しすぎます。「ザ·フォー·シーズンズ」のジャー·ジー·ボーイズ、「ボヘミアン·ラプソディー」のクィーン等も有名になり、忙しくなると相手が離れていくシーンがありますね。
②愛と哀しみの果て
資産家の娘(メリル·ストリープ)はケニアに渡り、農園をする約束で結婚。しかし夫は部隊に参加し不在がち。夫に病気を移されたり、洪水でコーヒー園もダメになってしまう。親しくなったサファリツアー ガイド(ロバート·レッドフォード)も一緒に暮らすことを約束してセスナ機で出かけますが、墜落死してしまいます。サバンナの夕焼けの景色が素晴らしい。サファリ ツアーの夜はロマンチックですが、怖そうです。
③Good Will Hunting /旅立ち
主人公(マット ·デーモン)は昼は工科大学の掃除係、夜は悪仲間4人と遊んでいる。しかし教授らに凄い数学の読解力があることが分かり誘われるが、幼い時受けたの虐待等で性格が歪んでいることも知れる。教授は友人の精神学教授(ロビン ウイリアムズ)に頼み、主人公は立ち直り、良い会社にも受かりますが、愛を選び、好きな彼女の元に旅立ちます。
好きなマット·デーモンが24年前で可愛い。どんな数学の難問も解けてしまうのは不自然な感じがしますけれど
人に心を許すことのなかった主人公が教授(ウイリアムズ)に抱き付き思い切り泣くシーンはグッときました。ロビン ウイリアムズは、やはり先生役の、「今を生きる」を思い出させました。
④めぐり逢えたら
ママが亡くなった8歳の男の子ジョナが、Xmasの日の電話相談で、”寂しそうにしているパパ(トム·ハンクス)に、新しい奥さんが欲しい”と言います。それを車の中で聴いたアニー(メグ·ライアン)は感動し、だんだん興味を持ち、婚約を解消して会いに行きます。
バレンタインデーのハートマークが赤く輝くエンパイアステート ビルの屋上でエレベーターが終わった直後、ジョナ、パパ、アニーは逢うことができました!
この映画はXmasから大晦日の頃が中心なのでアニーの家の飾りや、男の子とパパの家(ハーバーにある)からの花火、最後のエンパイア ステート ビルの照明と夜景などとてもキレイです。そしてこの映画は、ケーリー・グラントとデボラ・カーの「めぐり逢い」のオマージュ作品でしょうか、何回もふたりのシーンが出てき、女性は皆泣きますが、男性は「女の映画だ」と馬鹿にします。
原題は「Sleepless In Seattle」ですが、日本語のタイトルは「めぐり逢えたら」としたのはお見事ですね。又途中に色々な懐かしい曲が入っていたのも良かったです。
⑤(小泉様の見事な解説の後ですが)リバティ·バランスを射った男
西部が変わる時期で今迄とは違い、レストランや新聞社(SHINBONE は新聞を連想させる?)が登場したり、ジェームス・スチュアートがエプロン姿で決闘したのも珍しく、楽しく観ました。

(保屋野)

私は、昨年「めぐり逢えたら」を観ただけなので、コメント出来る資格はありませんが文中、ロビン・ウイリアムスの「今を生きる」を見付けて嬉しくなりました。この映画は、30年前に、会社の研修で観ましたが、素晴らしい内容で、大いに感動した記憶があります。

昨年の「ベスト10」で1票も入らなかったのが不思議なくらいの名作だと思います。

(編集子)ミッキー、今週は大活躍のご様子、結構ですね! 編集子はここのところBS劇場に縁がありません。やっこ情報にもありますが、11月もあまり関心がもてないようです。

エーガ愛好会(95)  フォートブロックの決闘  (34 小泉幾多郎)

自分の牧場を持つことを夢見る青年ラット(ドン・マレー)が、徐々に野心を燃やすようになり、酒場女で娼婦のキャリー(リー・レミック)と知り合い、彼女が大切に貯めてきた資金を元手に土地を買い、トム(スチュアート・ホイットマン)を相棒に、牧場経営に成功して行く。キャリーと親しさを増すことで、彼女と懇ろだった町の有力者イエフ(リチャード・イーガン)との関係が怪しくなってくる。ラットの牧場は、銀行頭取のコンラッド(アルバート・デッカー)の引き立てもあり、順調に推移し、その姪(パトリシア・オーエンス)と結婚することになった。しかし、別の娼婦と結婚することになった相棒のトムを誹謗したことから仲違いし喧嘩別れしてしまう。

トムは馬泥棒に身を落とすことになり、イエフ達からリンチを受け死んでしまう
やら、イエフに殴られたキャリーが大怪我する等支えとなってくれた人々の不幸な出来事が続く。イエフの悪どさに怒ったラットは、人々から出世に逆らうことから、やめろとの説得を振り切り、酒場でイエフと殴り合うことになった。劣勢になったイエフが、ラットに向け銃を向けたと同時に、イエフは銃声に倒れた。キャリーがピストルを構え立っていた。当然皆が見ていることからキャリーの正当性は疑えないにしても、内心ラットはキャリーを弁護することを誓うのだった。

以上があらすじ。野心ある若者は、ナイーブで腕に自信もなさそうだし、早撃ちでもなく、銃は殆んど撃たない、最後に酒場で殴り合いをする程度。西部劇の爽快さは求めようがない。それでも開巻から、また途中でも、原題名の主題歌がハリー・ウオーレンの歌で唄われると、これぞ西部劇とも思える。主人公は、かって世話になった娼婦と出世した現在の地位との狭間で悩むのだった。西部劇ではあるが、それまでの単純な強い男のアクションから現代的なドラマを扱った西部劇に転換を試みた作品と言えるだろう。

 監督は、SF特撮で名を残したリチャード・フライシャーで、恋愛、ギャング、戦争、歴史スペクタクル等あらゆるジャンルを手懸けた。主演のドン・マレーは「バス停留所」でのモンローとの共演が有名。リー・レミックは「酒とバラの日々」でアルコール依存症を演じた。パトリシア・オーエンズは「サヨナラ」でマーロン・ブランドの婚約者を演じていた。

 

 

(編集子)見るつもりだったのが用にかまぇて見損なった。リチャード・イーガンに テーブルロックの決闘 以来会える機会を逸したのが残念(この映画にはあのドロシー・マローンがいたこともあって彼の陰影のある演技がよかった。

 

”山小屋” の問題について     (大学OB  小関健)

友人から送られてきた紹介文ですが、ご興味があろうかと思い転送します。

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『山小屋クライシス 国立公園の未来に向けて』
吉田 智彦 著 山と溪谷社(ヤマケイ新書)
2021/09 192p 990円(税込)
まえがき コロナ禍が浮き彫りにした小屋の問題
1.山小屋が抱える諸問題
2.国立公園の歴史と構造
3.対談「これからの国立公園」【イントロダクション】
登山を趣味にする人以外には意識されないだろうが、さまざまな社会的要因から危機に瀕している重要インフラに「山小屋」がある。山小屋は単なる休憩・宿泊場所ではない。登山者の安全管理や非常時の対応のほか、登山道の管理など環境保全といった公共的機能を果たしており「なくなっては困る」ものなのだ。本書では、日本の山小屋、そしてその役割が重要になる国立公園について、差し迫った数々の問題を紹介しながら、それらの背景にある行政の意識や構造的課題、法制度のほころびなどについて、山小屋のオーナーをはじめとする当事者・関係者への取材をもとに論じている。

危機」を浮き彫りにしたのは、2019年6月に、山小屋へ物資を運ぶヘリコプターが機体故障により運航停止になり、多くの山小屋の運営に影響を及ぼした出来事だ。山小屋の脆弱な状況とその原因は、日本の社会構造そのものの欠点にもつながっているようだ。著者は1969年、東京都出身。20代半ばに勤めていた会社を辞めて、ニュージーランド、カナダ、アラスカなど諸国をまわる。カヤックやトレッキングを通じて自然と人間のあり方を考えるようになり、エッセイ、ノンフィクションや写真、絵を発表しはじめ、現在も活動を続けている。

●山小屋は単なる宿所ではなく、さまざまな公共的な役割を担う

2021年7月現在、山と溪谷社が運営するヤマケイオンラインに登録されている山小屋は、全国に1,169軒。その業態は、大きく分けて営業小屋と避難小屋からなっている。営業小屋では有料で食事や寝具が提供されるのに対し、避難小屋は原則、無人で無料もしくは維持協力金などを支払うことで使用できるものと、緊急時の使用に限られるものがある。

営業小屋は、旅館業法では簡易宿所に該当するが、その機能は単なる宿所にとどまらない。環境省による「『国立公園』とは?」という資料では、「山小屋の機能」として次のものが挙げられている。「宿泊の提供」「物資の供給(売店・食堂)」「休憩所」「登山者に対する情報提供・安全指導」「給水」「公衆トイレの提供」「医療(診療所)」「救難対策(緊急避難所・救助)」「登山道等の管理・清掃」

しかし今、多くの営業小屋がさまざまな理由で危機的な状況に陥っている。もし、彼らが営業を続けられず、山小屋を閉鎖した場合、その山域は宿所を失うだけでなく、環境保全の面でも人命救助の面でも、空洞化してしまうことになる。

●山小屋の危機を浮き彫りにした「ヘリコプター問題」

2019年6月下旬、山小屋物資輸送業界最大手のヘリコプター会社、東邦航空の機体が故障し、北アルプスを中心に荷上げ作業(*平地から山小屋へ物資を供給する作業)ができなくなり、正常な状態に戻るまで約1カ月間を要する事態に陥った。ちょうど夏山シーズンに向けた小屋開けの準備期間と重なり、約40軒の山小屋が開業を延期したり、食事を出せない、改修工事ができないなどの影響を受けた。

東邦航空による山小屋物資輸送業界の占有率は約8割に及ぶ。そして、北アルプスや南アルプス、八ヶ岳などの山域を営業区域とする同社松本事業所では、故障によって輸送が滞った2019年6月当時の物資輸送用の機体数は3機だった上に契約数は約120件あった。その3機のうち2機が、一時的に飛行できなくなった。

これを偶発的なトラブルとしてやりすごすのではなく、山小屋、さらには国立公園の存続に関わる大きな問題として世間へ発信したのが、北アルプスにある雲ノ平山荘主人、伊藤二朗さんだった。山荘の公式ホームページで「登山文化の危機! 山小屋ヘリコプター問題」というタイトルのレポートを発表した。その要所を抜粋する。

「今まで行政が山小屋の公共性を正式に評価し、制度に落とし込むことをしてこなかったため、いざ山小屋が存続に関わる重大な問題に直面したとしても、山小屋の運営を公的に支える仕組みや法律が存在しない。例えば何らかの理由でヘリコプター会社が山小屋の物資輸送から全面的に撤退、それによって山小屋が経営困難になり、結果的に国立公園の運営に重大な支障をきたすとしても、民間事業者の個人的なトラブルという位置付けに過ぎず、他のヘリコプターを行政が手配するなどの代替え措置も存在しない」

伊藤さんは2020年2月、個人名義で「『山小屋ヘリコプター問題』協議会設置の要望書」を作成し、環境省自然環境局長宛に提出。この要望書の中で、ヘリコプター会社の山小屋物資輸送事業が、なぜ現在のような状況になったのか、産業構造の面から分析している。その内容に当たる主なものをふたつにまとめてみた。

1 90年代のバブル崩壊後、スキー場建設や農薬散布、林業などのヘリコプター需要が急激に落ち込み、ヘリコプター会社同士の統廃合が進んだ。その一方で、当時比較的安定していた山小屋物資輸送の需要に各社が力を注ぎ、山小屋との契約を結ぼうと争奪戦が繰り広げられ、価格競争により料金が安価に抑えられていた。

2 2011年に起きた東日本大震災後、電力会社の事業再編でヘリコプター需要が拡大。全国的な防災・減災を目指す国土強靭化計画関連の公共事業、リニアモーターカー関連事業などの巨大事業が増えると同時に国策によるドクターヘリの需要増加から、ヘリコプターの供給力が不足状態になる。そんな中、それまで、3、4社で共存していたヘリコプター会社が「ハイリスク、ローリターン」の山小屋物資輸送事業から撤退を始める。残った東邦航空が8割の輸送を担うことになっていった。

伊藤さんは、航空業界で行われている事業の中で、行政の補助金で運用されるドクターヘリや消防・防災ヘリ、リニアモーターカーのような公共事業が大半を占めるようになったことも大きいという。それに対し、高高度の山岳地帯で物資を機体外に吊るして操縦するという、高度な技術を要するパイロットを養成するために必要な時間と経験の場となっていた農薬散布や治山関連の作業が、時代の変容とともになくなったことにより、山小屋物資輸送の人材も育たなくなってしまっているのだ。その結果、この事業は縮小の一途をたどっている。

インフラが整備された場所の規制を山小屋に適用することで生まれた「ほころび」

建物は老朽化する。特に高山帯にある山小屋は、1年の約半分を雪に閉ざされ、休業せざるをえない。休館中に、ひどいところでは建物が丸ごと雪の中に埋もれてしまうこともある。そのため建物の傷みが早く、最悪の場合、春に行ってみたら崩壊している可能性すらある。
壊れれば直さなければならない。また、利用客の数やニーズによって改築や増築をしなければならない場合もある。増改築に伴う建物の構造や建材の種類などは、現行の建築基準法や旅館業法などの規制が適用されることになる。

建築に関する規制のひとつである「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(省エネ法)は、断熱効果の向上やエアコンを省エネ設計のものにするように促す法律だ。これは、山小屋も建物の延べ面積が該当すれば、例外なく適用される。しかし、「エアコンを完備した山小屋など日本にはありません。約半年を雪に閉ざされ、無人となる山小屋に、それほどシビアな省エネ基準が必要か、疑問が残ります」と、全国で3番目に古い営業小屋である常念小屋のオーナーである山田健一郎さん。

建築基準法も消防法も、規制の対象となる建物が、道路・水・電気といったインフラが整備されている場所にあることを大前提に作られている。そのため、山小屋でこれらの規制を守ろうとすればオーバースペックになることがあったり、そのためだけに余計なエネルギーが必要になったりすることが多々あり、時には逆効果となって建物を傷める原因になってしまう。結果、さらなる費用がかかってしまうことにもなりかねない。
こうした現行法の規制を受けずに、建物を維持管理する方法がある。それは、「修繕」を小まめに行うことだ。小規模な修繕であれば、建築基準法の届け出は不要なのだ。とはいえ、資材が必要となれば物資輸送が必要になり、自ずとヘリコプター問題につながっていく。

そんな事情を抱えた中、これまで登山人気を牽引してきた中高年の人口が減りはじめている。そして近年、登山者たちの質や動向も変わってきているという。「コロナになって、宿泊者が大きく減ってテント泊や日帰りの登山者が増えました。山小屋宿泊の『密』を避けたこの流れは、コロナ禍が収束しても変わらないでしょう。宿泊売上を主として維持してきた山小屋の営業努力だけではどうにもなりません」

2021年、こうした状況が続けば山小屋の存続そのものが危ぶまれると、北アルプスにある5つの山小屋団体からなる北アルプス山小屋協会が2割程度の値上げを発表した。ここで興味深いのが、この値上げに対して利用者へ理解を求める文書に、北アルプス山小屋協会と並んで、北アルプス山域を管轄する環境省の中部山岳国立公園管理事務所が名を連ねたことだ。経営面、しかも宿泊料の値上げという基本的には個々の経営者が判断するテーマに、民間とは一線を画すことが多い行政が名を連ねるのはとても珍しいことだったからだ。このことからも、山小屋の公的機能が重く見られていることと、現在の状況がいかに深刻かが見て取れる。

※「*」がついた注および補足はダイジェスト作成者によるもの

コメント: 健康増進だけでなく、自然に親しみ、環境意識を高める効果に鑑みると、登山文化は廃れさせてはいけないものだと思う。だが、その登山文化を守る上できわめて重要な役割を担う山小屋が危機に瀕し、その解決の大部分が民間のみに任せられている、そしてそのことが一般に認識されていないのは大きな問題といえる。山小屋が危機を脱するには、修繕や物資輸送インフラの確保など「機能を維持する」のと同時に、デジタル技術など新しいものを取り入れて「魅力を高める」という、いわば「両利き」の方策が求められる。後者は民間の努力によるところが大きいが、前者には行政の支援が不可欠といえよう。山小屋と行政、そして登山者をはじめとする我々一般市民が協力する場が、ネット上などに用意されるのが理想ではないだろうか。

(編集子)三国峠麓に我々の三国山荘が建設されたころの熱気に満ちたことが思い出される。観光立国、といいながら現実には行政の怠慢と杓子定規の現実を改めて考えさせられる一文である。

”とりこにい” 抄 (13) 中山峠

夫婦ふたりで気ままに歩ける時期が終わり、同期の仲間たちとの都合の調整も難しくなってくると、アラインゲーエン、などというのはおこがましいが、一人で出かけることが増えた。地理的なこともあったが、たしか加藤泰三の ”霧の山稜” の一節に(ケベック地方を思わせる)と書いてあったのが心に触れて、それ以来、行くことが何回かあった、北八ツの周辺がほとんどだった。一度は知ったつもりで樹林帯に入り込んで道を失ってあわてたこともあったが、1年下の村井純一郎にすすめられて、高見石小屋にも数回投宿した。創業者が宿泊客と素直に語り合いながらストーブを燃やしてくれる、そういういい小屋だった。今は完全にコマーシャリズムに徹した、並の小屋になりさがってしまったようだ。

あの  “ 高見石”  はもう、ない。 

そのころ、サラリーマン生活にも倦怠感を覚え始めたころの晩秋の1日。

 

                            中山峠

無為 -

こそは尊きもの ー と信じていたあの頃

シラビソはおれのために初夏の歌を歌ったものだったが

無為とはなにか?

と 愚かにも問いを発してこのかた

彼女たちは秋にしか歌わなくなった

OCTOBER も暮れ方になれば

高い蒼さのなかで

彼女たちも からだ寄せあい

凍りつく冬の日を語り合うだろうが

いまはささやきかわす言葉も聞こえない

旅人は黙って西の峠を目指す

ふたたび

無為、とはなにかー

とつぶやきながら

 

乱読報告ファイル (12) マクリーン  女王陛下のユリシーズ号

高校2年の時、現在 ”エーガ愛好会” グループで鋭い視点のコメントを書いてくれているスガチューこと菅原勲にミステリの面白さを教わった。普通部時代にホームズ物・ルパン物は卒業していたし、、彼の言う通り、推理小説大国イギリスのものから始めようと、きっかけは覚えていないが初めて買ったのがメイスンの “矢の家” だった。この本の(というか翻訳の)持っていた独特のトーンですっかりファンになり,それからいわゆる ”本格物“ にはまってしまったのだが、そのほとんどすべてが早川ポケットミステリ、通称ポケミスだった。その後、読む範囲が広がって、冒険小説、というジャンルになると、今度は同じハヤカワだがサイズの小さい、ハヤカワ文庫を買うことが多くなった。結果、小生の書棚に並ぶ、ハヤカワ文庫本は数えたことはないが60冊はくだらないはずだ。しかしそのほとんどはすでに忘れ去られたというと寂しいが新刊でいまの本屋ではまず並ぶことのないものばかりである。ところが昨晩、なんということなく例の本屋へ立ち読みによったら、なんと、この本が復活しているではないか。嬉しくなってまた、買ってしまった。

グレゴリー・ペック、アンソニー・クイン、デビッド・二-ヴンの ”ナヴァロンの要塞” という映画を見た人は多いはずだ。しかし映画ファンの第一の関心は俳優であり、監督であり、時として音楽も論じられるが、作品の原作者に注意をはらうことはほとんどあるまい。この映画の原作者、アリステア・マクリーンの処女作が この ”女王陛下のユリシーズ号“ なのである。その後、マクリーンは数多くの傑作を残し、英国冒険小説を語るときにまず第一に語られる存在になっている。

第二次大戦で欧州本土を手中に収めたヒトラーは独ソ不可侵条約を踏みにじって、ソ連へ侵攻する。対ヒトラーで連合した英米両国は、共産主義国ソ連を敵視してきていたが、背に腹は代えられずソ連支援を行わざるを得なくなった。アメリカはそのため、大量の物的支援を行い、大船団をソ連の不凍港ムルマンスクへ送り続けるのだが、その援護のために英国はなけなしの艦艇を同行させる。そのうちの一隻、巡洋艦ユリシーズ(同名の駆逐艦がこの小説に描かれた戦闘の12か月後のに就役した)の1週間の苦闘を描いたのが本書である。当時世界最強と恐れられたドイツの新造戦艦ティルピッツと遭遇するかもしれない不安の中、ノルウエイの基地から発進してくるドイツ空軍機の猛攻にさらされ、船団を護衛するユリシーズ号の艦内ではどんなことが起きていたのか。

小生が愛読してやまないジャック・ヒギンズもその最初のヒット作 ”鷲は舞い降りた“ は同じ対ヒトラー戦のエピソードであるが、その成功のカギはなんといってもストーリーの意外性であり、同時に英国の敵国であったドイツ軍にもヒューマンな行動を貫いた軍人がいた、というテーマが成功のカギだった。これに対して本書はストーリーは単純であり、意外性もなく、ただひたすら、上部の無謀な要求に応えようとする乗組員の絶望的な行動を描いたものである。翻訳者村上博基はあとがきで、吉村昭の ”戦艦武蔵“ が同じようなシチュエーションを描いた傑作ではあるが、読後に記憶に残るものが7万トンの鉄塊であるのに対し、本書のそれは “英国軍艦ユリシーズとその男たち” という響きを持つ、と書いている。そして、

“すさまじい,荷酷、凄絶, 呆然, 轟然 ……. 訳者の語彙貧困は苦笑を買うだろうが…くりかえし使われる形容語句がなんの煩瑣も感じられず…マクリーンの筆はたかだかとうねる大波のように、ページを塗りつぶす“

と書いている。僕も同じように、ただただ、圧倒された、という印象を持つ。本書のエピローグでは, 生き残った語り手二コルスが松葉杖をひきながら海軍本部へ報告に訪れる。報告を終わって帰ろうとする二コルスに、上司はこれからどこへ行くか、という尋ね、彼が女性(実は死んだ親友の婚約者)を訪ねると知って、”美人だろうね“とありきたりの社交辞令をつけくわえる。これに対しての二コルスの返事がこの作品をしめくくる。 

……”知りません“ 彼はものしずかにこたえた。 ”知らないのです。会ったことがないのです“

彼は大理石のゆかをこつこつと鳴らし、いかめしいドアを抜けると、不自由な足で陽光の中へ歩み出た。

1週間の冬の北極圏での死闘で、この”陽光“を待ち続けて、それがこういう形でしか戻ってこなかった、戦争という無意味さのなかでの現実が僕の心に突き刺さった作品だった。

”海洋冒険小説” というジャンルを毛嫌いしておられる方も多いようだが、せめてこの一冊、試していただいてもいいのではないか。早川書房にはなんの義理もないが、定価940円、気楽に投資されることをお勧めしたい。

 

 

新政権に期待するコロナ対策    (34 船曳孝彦)

第5波は理由が説明つかぬまま、収束に向かっています。このまま終息して欲しいところですが、まだまだ安心はできません。やがて第6波がやってきます。私は日本で大流行したデルタ株自体の波はほぼ終わったと見ていますが、デルタ株からの変異株がすでに数種類見つかっております。デルタ株以外からの変異株も発見されています。日本では急速に収まって来ていても、世界ではまだまだ拡大していますから、これらからの新たなパンデミックが起きる可能性は大いにあるといってよいでしょう。

最も重要な第6波対策は、海外からの新変異株の流入を何とか阻止することです。業界は観光客激減を回復すべく躍起になっていますが、観光客、日本人帰国者全員のPCR検査をし、検疫の徹底と分析、そしてその追跡が必要です。

対策の第2は新しい株に有効なワクチンを早く作成することです。RNAワクチンですから可能と思います。実績のない研究に冷たい日本の科学研究費体制を変えて、研究費を注ぎ込んで欲しいと思います。さらに文科省が出した「ワクチン接種を強制しない」という通達はネガティブキャンペーンです。接種率を100%に近づけるようにするのが国の努力義務だと思います。

対策として、病床確保があります。選挙公約に使いやすいので、いろいろと言われておりますが、要はベッド数ではありません。中身と運営上の改善です。ここまでコロナ患者が減ってくると、病院側としても空床としておく訳にもゆかず、そうかといって入院できずに自宅で亡くなる人を出すことは二度と許されません。患者の流れを調整することがキーとなります。

これだけの世界的大災害ともいうべき新型コロナウィルスのパンデミックですから、何の対策も心配していなかった2年前の社会にそっくり戻ることはないでしょう。ワクチンも必要でしょうし、マスク頻用や大声での会話、三密回避など感染防御も必要でしょうが、インフルエンザ並みとなって、誰しもこの束縛から脱したいと思っていることでしょう。やがて新しく発足する政権が、科学者の意見を尊重する政治をしていただくことに望みをかけています。

遠隔医療への挑戦     

医療の高度化を放送技術によって支えよう、という試みがなされてきているが、KWV40年卒、林勝彦君の企画で行われるプログラムについて、42年河瀬君から情報を頂戴したのでプログラムの概要を紹介する。林君は今回の企画について、今回の講演の狙いは、8Kを使い『遠隔医療応用』で社会貢献を目指すもので、基礎研究から、臨床応用映像への現状と未来を語って頂く、と述べ、企画を主宰する新山賢治 企画舎GRIT(株) 代表取締役・プロデューサー 元NHK理事新山賢治氏について次の通り紹介している。

新山賢治理事は、Nスペ『驚異の小宇宙 人体』制作時に、80万倍電子顕微鏡を使い新映像を開発したパイオニアです。宇宙映像の名作『Powers of Ten』 の様に、ミクロの世界に『ドンドンズーム』する映像開発を依頼しました。失敗に次ぐ失敗でしたが、悪戦苦闘の末、6ヶ月後 世界で初めて80万倍の『シームレス映像』の開発に成功しています。この映像は、本格的なCG映像と共に、『人体プロジェクト』に多いに貢献してくれました。上映費用では負担をお掛けしましたが、話題作品となり、第60回科学技術映像祭『内閣総理大臣賞』を受賞しています。

なお、本プログラムでは河瀬君本人(現職塾医学部名誉教授、SVS副会長)もメインスピーカとして参加する。 

サイエンス映像学会 オンライン月例研究会  のお知らせ 

8K遠隔共存医療への挑戦 〜放送技術の結実で生命を救う~」

日時 2021年10月30日(土) 19:00〜20:30(予定)

場所 サイエンス映像学会 ZOOM会議室

お申し込み先

https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZIkcumhrjotE9RjBHxiBGGacMO2DFaQXbQR

 

参加費用は無料ですが、Youtube「サイエンス映像学会・林勝彦ジャーナリスト映像塾」のチャンネル登録をお願いいたします。

 

YouTube「サイエンス映像学会・林勝彦ジャーナリスト映像塾」のチャンネル登録ボタンを押してください。

https://www.youtube.com/channel/UC241cbzOSUq-HVyafI-jEyA/videos

 

チャンネル登録のボタンを押していただきますと、配信時や新規動画のお知らせが届きます。

(河瀬君注)ピョコさんは元NHKエンタープライズのdirectorをしており、定年後ボランテイアとしてサイエンス映像学会(SVS)という名の学会を立ち上げ,サイエンス映像と医学、工学的な題材を扱い、11年になります。私はKWV後輩と医学部という関係で会長のピョコさんに創立依頼協力しており,最近はコロナを主題に1−2ヶ月に一回リモート講演会を行っています。

MCIについて―認知症についての正しい理解 (2)  (普通部OB 篠原幸人)

前稿で、一寸堅苦しかったけれど、「認知機能」とか「認知症」とは何かを解説しました。面倒がらず、読んでくれました?

しかし例えば「鼻かぜ」と「入院が必要な肺炎」の間に、「仕事を休むほどの風邪」とか「気管支炎」があるように、「正常な老化による物忘れ」と「治療が難しい認知症」の間にも、認知症とは言いきれないが、可なり物忘れが進行している状態がありえます。

これがMCI (Mild Cognitive Impairment) (軽度認知障害)といわれる状況です。この境目はかなり曖昧であり、専門家(脳神経内科医ないし精神神経科医)でないとなかなか診断がむずかしい、いわゆる境界領域の病気です。MCIの定義はいろいろありますが、一般的には、

① 本人や家族から「物忘れ」の訴えがある。

② 心理機能検査などで、加齢の影響だけでは説明できない記憶障害が客観的にみられる。

③ しかし、日常的な生活能力は自立している(普通に問題なく生活ができる)。

④ 認知症の定義(前稿の「徒然」を参考にしてください)にはまだ当てはまらない。

⑤ 認知機能検査の結果に影響するような身体疾患(難聴、言語障害、パーキンソン病、書字不能など)はない。

の①から⑤の全てを満たすものと言われています。しかし詳しくは専門医に、MRI・脳血流検査・神経心理検査などの結果も加味してしっかり診断してもらう必要があります。

MCIといわれてもガッカリすることはありません。MCIのうち15%ぐらいの方が2年以内に本当の認知症に進行する(逆に言えば85%はあまり進行しないということ)というデータがあります。しかし私が拝見しているMCIの方でも、もう数年たったのに、むしろ良くなって元気に過ごしている方もおられます。念のためにお薬を服用している方のなかにも元気でお過ごしの方は沢山おられます。発見が手遅れの場合は問題外ですが。

 大事なことは、一人でウジウジ心配せず、一度家族と一緒に(これが大切です。一人で行くと良いことだけ覚えていたり、逆に心配だけしたりするからです)専門医に相談に行くことです。検査には痛いものや、危険なものは何もありません。気の利いた病院なら1日か最大2日で全て調べてくれる筈です。認知機能の障害は誰にでも年齢と共に起こるのです。恥ずかしいことではありません、頭が一寸痛いことと同じと考えてください。

 ここからが重要です。大切なのは、MCIにならないあるいはMCIを進行させないことなので、それを説明します。

① まず、高血圧や糖尿病がある人はしっかり治療してください。これらの生活習慣病は、認知機能の増悪因子です。また血圧の乱高下も危険因子。だから以前の「徒然」で毎日、血圧を測る習慣をつけろと言ったでしょう。

② 心臓病(特に心房細動)、肝臓病、腎臓病、甲状腺機能低下などは認知機能に影響します。これらの持病を持つ人は、今、以上に悪くならないように主治医と二人三脚で。

③ お酒の飲みすぎ、タバコの吸い過ぎは当たり前だけれど増悪因子。目安は、酒は肝機能が悪くならない程度、タバコを吸いたいなら無人島にでもどーぞ。ヘビースモーカーは無症状のコロナ患者と同じで、本人の自覚はないが他人には大変迷惑。耳が痛い人、いるかなぁー。

④ 睡眠薬や精神安定剤の連用は無理に頭の機能を押さえつけ、服用しすぎは脳機能に障害を与えます。最近は私たちの身体の中のある睡眠誘発物質が睡眠薬として市販されはじめました。睡眠薬がないと眠れないと思っている人、主治医にすぐ相談してください。

⑤ 夜更かしも勧められません。もっとも、私も毎晩12時過ぎまで起きているけど。できれば10-11時には寝床に入って、読書でもすれば? 寝床で横になっているだけでもいいよ。夜中に何回かトイレで起きても、すぐまた寝られるなら睡眠としては問題なし。

⑥ 転ぶな! 年をとってからの、特に頭の外傷は認知機能低下に直結。

予防法としては、

① 今からでも、自分独自の「生きがい」を探すこと。散歩でも、老いらくの恋でも、嫁さんや会社の新人いびりでも、カラオケでも、なんでもOK。今からでは一寸遅いかな?

② 配偶者やいわゆるパートナーがいる人は、独身者より長生きで認知症にもなりにくいとのデータがあります。熟年離婚を考えている方、ここは我慢のしどころですね。今、独身なら頑張れ。何を?

③ 運動;強く勧めますね。特におすすめは、テニス・ゴルフ・卓球・野球など相手やパートナーを必要とするスポーツ。英国からそれらのスポーツを好む人はしない人に比べて長生きとの報告があります。もっともこれも今からでは遅いかな?

ここまでの話は、医師会や市民講座で私がする話の一部です。

大切なのは、認知症に限らず、気になることがあったら、手遅れにならないうちに、専門家に相談すること。 60歳過ぎたら、自分は大丈夫と自信があっても、一度は頭のMRIを撮るのも良いかもね。健康保険でカバー出来るよ。今回は少し長文になってごめんなさい。