川本三郎「ロードショーが150円だった頃(副題:思い出のアメリカ映画)」の菅原さんの読後感に興味をそそられ、著者の川本三郎を調べたところ、菅原さんが述べられているように代々木の自家を昭和20年5月の空襲で全焼するなど、極めて我々の世代に近い経験をしている(その後の麻布中学・高校から1浪で東大法学部卒、朝日新聞・朝日ジャーナルは全く別)。
評論家・翻訳家であるのに、1950年代、60年代の洋画を沢山観てきて懐かしがっている点、私も共感を得る一人です。この種の映画評論に関するエッセイで面白く読めるのは和田誠の「お楽しみはこれからだ」や池波正太郎の「映画を観ると損をする」などで、川本氏の著書もその類の著書かとも思う次第です。
それにしても川本氏の著作の数は驚くほど多く、そんな中でロードショウ、2流館、3流館と、よくぞそんなに映画を観る時間があったな~と驚きます。多分、その点、私は数だけでは負けていないのでは?と密かに思っています。
菅原さん曰く ≪いずれにしても、こう言った1950/60年代の映画が連なって来ると、こう言う類いの本の一番イケナイところは、見たくなる映画がゴマンと出て来ることだ。当時を思い出して懐かしさが込み上げて来るのは、年寄りとしては、致し方ないだろう。特に中でも「ハリーの災難」「成功の甘き香り」「十二人の怒れる男」「渚にて」「アラバマ物語」など≫
このくだりで、私の感想ですが何れの映画も過去数年間に再見、再再見していますが、「ハリーの災難」以外は全てモノクロ撮影ですね。「ハリーの災難」以外は概ね明確なテーマ性、作者の主張がある映画だと思います。全て佳作・面白い(愉快と言う意味でなく観て面白い)映画です。
「ハリーの災難」ですが、制作当時に映画館で見た時が1番面白かったです。その後は観るたびに興趣が少しずつ下がって来たのは、映画の舞台がニューハンプシャー州、バーモント州の田園風景の紅葉の時期に起こる殺人事件と言うヒッチコック特有のシュチュエーションのために、この地方特有の黄色を基調にした紅葉の色の美しさが徐々に経年劣化で薄れてくるためと感じています。西部劇の名作「シェーン」なども同じ理由で、公開当時が一番楽しめ、昨今のテレビ放映では相当に色彩の劣化が進んでしまっています。「拳銃王」も割合近年(2020年)にBSシネマの放送がありました。再見してみます。