円楽師匠の急逝と脳卒中について  (普通部OB 篠原幸人)

三遊亭円楽師匠が亡くなられ、テレビでもその追悼番組が行われています。しかし、何かその原因がはっきりしません。師匠が肺がんで急にテレビから姿を消されたのは皆さんよくお存じですね。その後、治療を経て高座に復帰されようとした矢先に今度は脳梗塞で倒れられました。その後、リハビリに精力的に取り組んでおられたようですが、お亡くなりになったのは脳卒中の再発なのか、肺がんの転移や悪化なのか、報道でははっきりしません。テレビの『笑点』の大ファンだった私はあの毒舌がもう聞けないかと、残念でしょうがありません。

脳梗塞は脳出血やクモ膜下出血とまとめて“脳卒中”と総称されます。“卒”は突然倒れることを”卒倒“というように”突然“の意味、”中“は毒に当たることを”中毒“というように”当たる”という意味。だから脳卒中は“脳の病気で突然なにかに当たったように倒れる病気”ということになります。この”卒中“という言葉は、本来は中国から来たのかもしれませんが、西暦760年、そうです、万葉集の時代ですが、その頃のわが国の書物にもう使われています。今から1200年前の日本人もすでにこの病気で倒れる人が多かったと思われます。日本人の国民病の一つですね。

この脳卒中のなかで、脳出血は大体高血圧をほっておいた方が罹りやすい病気です。クモ膜下出血は脳の動脈にできたコブのような動脈瘤が破裂しておこります。動脈瘤は事前にMRAという検査をすれば発見できます。だから脳出血とクモ膜下出血は現代では予防可能な病気に分類できると言っていいでしょう。

脳梗塞は脳の血管が詰まったり細くなったりして、その先に血液がいかなくなり、脳の一部が酸欠状態になっておこります。原因は多様で、高血圧・糖尿病・心房細動・脂質異常症・高尿酸血症などの他に、「がん」などがあって血液が固まりやすくなってもまた腫瘍細胞が脳に飛んで行って詰まっても起こります。円楽師匠もこんな状態だったんでしょうか?

脳梗塞は、更に、心臓にできた血塊が脳に飛んで詰まる心原性脳塞栓症、脳内の比較的太い血管が動脈硬化などで詰まるアテローム血栓性脳梗塞と、非常に細い脳血管が詰まるラクナ梗塞の三つに分かれます。このような分類がされるのは、それぞれで救急処置も再発予防法も大きく異なるからなのです。これが重要な点です。詳しい治療法の違いは、説明しませんが、どのタイプの脳卒中かは素人には区別付きませんし、医師でも専門家でないと、またMRI・MRAなどの装置がない病院でないと、診断は難しいことが多いのです。また血栓を薬で溶かすか、手術的に取り除くかの決定は、専門病院や大きな病院でないと困難なのが現状です。

片方の手や足が急に動かなくなった、顔が急に歪(ゆが)んだ、急に呂律が回らなくなり喋りにくくなった、急に体がふらつきまっすぐ歩けなくなった、突然今までに経験したこともない金槌で殴られたようなひどい頭痛が起こった、などは脳卒中のサインです。素人さんはすぐ「少し様子をみよう」とか、一瞬そのような症状が起こったが1-2分で軽快したので「まあ大丈夫だろう」と考えがちですが、脳は血流低下や僅かな出血にもとても弱い臓器なのです。

若し貴方が指を少し切って出血しても、暫く抑えているか、輪ゴムでも巻いて止血すれば、30分もたてば出血のとまり、一件落着でしょう。しかし脳の一部に出血が起こったらしいと首にロープをまいて締め上げれば5分と持たずにその方の脳機能は元に戻らず、亡くなってしまいますよね。この例でも分かるように脳はとても繊細で酸欠に弱い臓器です。だから心臓や肝臓と違って、頭がい骨という硬い骨で完全に覆われて守られているのです。おかしいと思ったら一分でも早くすぐ専門病院へ、そして適切かつ早期に治療できれば現代医学は脳卒中での死亡を激減出来ますし、また再発もかなり予防できることを知っていただけたらと思います。これだけは忘れないでください。

コロナワクチンの4回目以降の接種についての質問が来ています。しかし特に最新型コロナに対する最新のワクチンの功罪はまだデータ不足です。少し時間をください。またインフルエンザワクチンも打つかどうかの質問に関しては、私は今年も打つ予定であるという事が私の回答です。