エーガ愛好会(172) 西部劇のリメイクについて (34 小泉幾多郎)

「シマロン1960」は2021年12月17日放映済につき感想は提出済。1931年に制作された「シマロン」は監督ウエズリー・ラグルス、主演リチャード・ディックスとアイリーン・ダンで、西部劇最初のアカデミー作品賞を受賞した映画だった。これを名匠アンソニー・マンが監督し、主演グレン・フォード、マリア・シェルでリメイクに成功したということから、西部劇の主なるリメイク映画を回顧してみた。

先ずは、ジョン・フォード監督の「駅馬車1939」は、ゴードン・ダグラス監督により、モニュメントバレーからワイオミングに背景を移して、主役級アレックス・コード、アン・マーグレット、ステファニー・パワーズやビング・クロスビー、ヴァン・へフリンといった名優揃いにも拘らず、ジョン・ウエイン役のアレックス・コードと背景の緑のワイオミングがミスキャストだった。ゲーリー・クーパーの「ヴァージニアン1929」はジョエル・マクリーの「落日の決闘1945」へ、ジョン・ウエインの「勇気ある追跡1969」はジェフ・ブリッジスの「トウルー・グリット2010」へ、何んと言っても白眉は、黒沢監督作品のリメイク。「七 人の侍1954」がユル・ブリンナーの「荒野の七人1960」、デンゼル・ワシントンの「マグニフィセント・セブン2016」、「羅生門1950」がポール・ニューマンの「暴行1964」、「用心棒1961」がマカロニウエスタンになり、クリント・イーストウッドの「荒野の用心棒1964」へ、何れも成功している。

またリメイクとは言えないが、OK牧場を決闘の場に設定したワイアット・アープを主役とした映画は、数限りない。製作順に、ワイアット・アープとドク・ホ
リディの役を連記。1.「国境の守備隊1934」ジョージ・オブライエン、― 2.「フロンティア・マーシャル1939」ランドルフ・スコット、シーザー・ロメロ 3.「荒野の決闘1947」ヘンリー・フォンダ、ヴィクター・マチュア 4.「法律なき町1955」ジョエル・マクリー、 5.「OK牧場の決闘1957」バート・ランカスター、カーク・ダグラス 6.「墓石と決闘1967」ジェームス・ガーナー、ジェイソン・ロバーツ 7.「ドク・ホリディ1972」ハリス・ユーリン、ステイシー・キーチ 8.「トウム・ストーン1994」カート・ラッセル、ヴァル・キルマー 9.「ワイアット・アープ1994」ケヴィン・コスナー、デニス・クエイド。

ほかに、無法者集団ビリーザキッド、ダルトン兄弟等取り上げればキリがないが、ジェシー・ジェームスをほぼ主役にした映画、日本に公開されただけで18本もあるというから驚き。題名、制作年、俳優名を羅列すると下記の通り。

1「ジェス・ジェームス1927」フレッド・トムスン、2「地獄への道1939」タイロン・パワー、3「復讐の六連銃1941」アラン・バクスター、4「地獄への挑戦1949」リード・ハードレー、5「平原の勇者1949」ディル・ロバートソン、6「命知らずの男1950」オーディ・マーフイ、7「無法一代1951」マクドナルド・ケリー、8「荒野の三悪人1951」ローレンス・ティアニー、9「私刑される女1953」ベン・クーパー、10「拳銃が掟だ1953」リー・バン・クリーフ、11「無法の王者ジェシイ・ジェイムス1957」ロバート・ワーグナー、12「地獄の分れ道1957」ヘンリー・ブランドン、13「腰抜け列車強盗1959」ウエンデル・コリー、14「ミネソタ大強盗団1972」ロバート・デュバル、15「ロング・ライダーズ1980」ジェームズ・キーチ、16「ワイルド・ガンズ1994」ロブ・ロウ、17「アメリカン・アウトロー2001」コリン・ファレル、18「ジェシー・ジェームスの暗殺2007」ブラッド・ピット。

(編集子)ジョン・ウエインの後半生には主題歌でもヒットした ”リオ・ブラボー” をはじめ、”エルドラド” ”エルダー兄弟” など大型の、肩の凝らない作品が多いが、実在した人物を題材にした ”チザム” にはビリー・ザ・キッドが話のつなぎ役的な脇役で登場し、最初は友人だったが最後にはキッドを射殺した保安官パット・ギャレットも出てくる。ビリー・ザ・キッド、実名ウイリアム・ボニーもいくつかの作品でおなじみの人物だ。

ドク小泉は触れておられないが、”シェーン”と”ペイルライダー” もそのひとつではありませんか?