映画「スティング」にマフィアのボス役で出演したロバート・ショウを久し振りに観て、彼が16世紀のイギリス国王ヘンリー8世役を演じたイギリス映画「わが命つきるまで」(1966年制作 原題:A man for all seasons)を続けて一挙に観てしまった。ヘンリー8世にまつわる史実をテーマとして描く歴史映画で、特に目新しい話の展開はないが、重厚な歴史物語を楽しんだ。この国王は、イギリスでは歴史上もっとも有名な人物の一人だ。
1528年、イングランド国王ヘンリー8世は宮廷の女官アン・ブーリンに恋をし、一向に世継ぎを生まない王妃キャサリンとの離婚を望み、ブーリンと結婚することを切望していた。王妃キャサリンはスペイン初代女王イザベラ1世とアラゴン国王フェルナンド2世の娘で、ヘンリー8世の実兄で次の国王を約束されたアーサー王太子と政略結婚した。だが結婚の翌年、兄は病で急逝する。弟の世継ぎとなったヘンリーは義姉であった未亡人と結婚する(ヘンリー18歳、キャサリン24歳)。ヘンリーはチューダー王朝の存続を切望するが、結婚後9年経っても世継ぎの息子を産まない王妃に業を煮やした。当時はカトリックが国教であり、離婚は許されずローマ法王の許しが必要であった。
映画の主人公はヘンリー8世ではなく、反逆罪でヘンリー8世から斬首の刑に処せられたトーマス・モア(Thomas More)。政治・社会を風刺した「ユートピア」の著述で今日にまで知られる、イングランドの法律家・思想家・人文学者。彼の深い教養と厚い信仰心によってイギリスはもとよりヨーロッパの人々から尊敬と信頼をかち得ていた。王の再婚を法王に弁護できるのは寵臣の中でただ一人、信仰心篤く人望のあるトーマス・モアだけだった。何とか法王に離婚の承諾をもらえるようにモアに頼み込むが、モアは、国王が離婚する理由が見出せないとしてそれを拒否。モアの度重なる法王説得依頼拒絶は、国王の取り巻き達の怒りを買ってしまう。高潔・孤高なモアは意に介さなかったが、彼の家族や友人は彼の一徹さ故に彼の政治的な立場を危惧した。宗教界の実力者ウルジー枢機卿・大法官(オーソン・ウエルズ演じる)は秘書官クロムウエルを介してモアの説得に当たるが徒労に帰す。
いかにも中世イギリスの歴史物語とあって、舞台・衣装・セリフは重厚荘重で映画というより古典舞台劇を観るかのようであった。主役モア役を演じたポール・スコフィールドは1966 年度のアカデミー主演男優賞を、映画は作品賞を、演出のフレッド・ジンネマンが監督賞をそれぞれ受賞した。それぞれが賞に相応しい出来栄えであった。出演者は他にもヘンリー8世の腹心ウルジー枢機卿を演じたオーソ
ウルジー枢機卿が病で死去した後、モアは官僚の最高位である大法官(Lord Chancellor)に任命される。そんな中、ヘンリー8世自らがモアの屋敷を訪れ、直接ローマ法王に離婚を許可するよう働きかけることを依頼する。最後通牒にも等しい国王の直談判であった。モアはこれも拒絶したため、国王は激怒して帰ってしまう。離婚を認めないローマ法王に業を煮やしたヘンリー8世は、ついに新たにイングランド国教会を設立して自ら首長に就任し、強引にキャサリンとの離婚及びアン・ブーリンとの結婚を執り行う。
原題「A Man for All seasons」、トーマス・
(小田)この映画、観たことがあります。やはり、アン·ブーリンが登場する「ブーリン家の姉妹」
ヘンリー8世の1番目の王妃キャサリン オブ アラゴンはヘンリー8世の兄(アーサー)