エーガ愛好会 (161)  11人のカウボーイ   (34 小泉幾多郎)

主演のジョン・ウエイン1907年生だから、制作1971年ということは64歳。冒頭から、まだまだ溌溂としており、暴れ馬の調教中。其処へ雇人達5人が戻って来て、近くに金鉱が出たことから、辛い牛追いより金鉱探しの方へ出て行ってしまう。650キロ離れた町まで、1500頭の牛を運ぶ予定の牧場主ウエイン(ウイル・アンダーソン)は致し方なく、旧友のスリム・ピケンズ(アンス)の助言から、少年たち11人を雇い、特訓しながら、牛の大群を運ぶことになる。これぞ本当のカウボーイ?頑固一徹な老カウボーイとキャトルドライブに雇われた少年たちとの交流を描いた作品となった。

この過程で、牛の暴走、砂嵐、牛泥棒との戦闘等が、あのジョン・ウイリアムスの勇ましく軽快な音楽に乗って展開されて行く。途中、少年が演奏するヴィヴァルディのギター協奏曲もあるし、黒人コックのロスコ―・リー・ブラウン(ジェベダイア・ナイトリンガー)との交流等から、少年たちは試練を乗り越え立派に成長して行くというのだが、どうにも気に入らないのは、途中で、あの伝説ともなるべき、西部劇の不滅のヒーローであるジョン・ウエインを卑劣なる牛泥棒ブルース・ダン(ワッツ)に呆気なく殺させてしまうのだ。それも空身での格闘の後、銃を持たない丸腰のウエインを背後からの数発で、地面に這いつくばらせるという考えられない死に方で。指導者たるウエインを失った少年達は復讐を成し遂げ、盗まれた牛を取り返すことにより、立派な大人に成長したということで、めでたしということだろうが、何となくスッキリしない。復讐するための死を賜る俳優がウエインである必要があったのか。まだまだいたいけな少年たちが数人もの牛泥棒達を惨殺に近い形で殺す必要まであったのか。どうにもめでたしめでたしという感覚にはならない作品だった。

(菅原)小生も見ました。ただし、全部ではありません。ブルース・ダーンがジョン・ウェインに挑むちょっと前あたりからです。
小生の印象は、ウェインも老けたな。それに対し、ダーンは、いくら足掻いても、所詮は、ただのチンピラ。両者の間には、月とスッポンほどの違いあり。だから、ウェインが油断したんで、何でもありのダーンが、卑怯にも背後から射殺したんじゃないでしょうか(昨日の奈良を思い出します)。

従って、子供たちが、ダーンを頭とする牛泥棒を皆殺しにしたのも頷けます。ウェインがやられちゃったら、全面報復しか残されていないでしょう。