ミス冒愛好会 (6) アガサ・クリスティーのこと 承前 (HPOB 菅井康二)

菅原先輩のご質問に関して投稿します。私それほど熱心はミステリー小説のファンではありませんが、中学生時代に偶然手にとって読んだクリスティーの「ABC殺人事件」で謎解きの面白さとともに(アメリカは毎週TVで放映されたホームドラマでなんとなく分かった気になっていましたが)当時殆ど馴染みのない英国の風俗描写に魅了されたことを記憶しています。以降塾高に進学以降もクリスティーの小説を片っ端から読んでいました。

それでは、何故、クリステイーは、英国人ではなく、英国から見た外国、それも、フランス、ドイツ、イタリアなどの大国ではなく、小国のベルギー人を探偵にしたのでしょうか。アーサー・ヘイスティングスの知り合いだったと言うことになっていますが、その知り合いの中から、何故、ベルギー人でなければならなかったんでしょうか。逆に、どうしてクリスティーは、英国人を探偵にしなかったんでしょうか(全く関係ありませんが、英国には極めて魅力的な探偵、じゃない刑事フォイルがいたじゃないですか)。このことについて、クリスティーは、作品の中とか、或いは、自身で説明するとかしてるんでしょうか。クリスティーの失踪事件以上に、最大の謎ではないかと思っています。しかし、小生、クリスティーの全てを知っている専門家ではありません。従って、クリスティーが、男性の探偵を英国人ではなくベルギー人にした理由をご存知の方があったら、是非、ご教示ください。

残念ながら今手元にはないので貧弱な記憶が頼りなのですが、確かクリスティーが亡くなってから1年後に出版された『自伝』にコナン・ドイルのシャーロック・ホームズと被るキャラクターは避けたかった、第一世界大戦中に英国に亡命してきたベルギー人に接して同情していたというような事が書かれていたと思います。この自伝を読んでみて感じたことはクリスティー本人はミス・マープルなどよりも遥かに活動的な女性だったということです。

人づてに聞いた話ですが、ベルギーは「大陸のアイルランド」と呼ばれることがあるそうです。これはU.K.(イングランド?に対するアイルランドの関係をフランスに対するベルギーの関係に模しているのだとか。個人的にその場面に接したことはないのですが、フランスは中華思想のようなところがあり周辺国の特にフランス語を使っている国(民族)を所謂「上から目線で見下す」ところがある(あった?)そうです。

(菅原)態々の電子郵便、誠に有り難うございます。良く分かりました。クリスティーの成功の一端は、ベルギー人を探偵にしたことのようですね。勿論、クリスティーの筆力がなまじっかなものでないのは言うまでもありません。実は、小生、海外勤務で、フランスはパリに2年ほど住んでおりました(1990/91年)。その際、オランダをpays basと呼んでおりました。日本語にすると、「低い国」、要するに海面より沈んでいる国です。菅井さんが仰る、正に上から目線の典型的な例だと思います。勿論、例外はありますが、フランス人は、大変、身勝手な国民でした。

(菅井)早速ご返信を頂戴し恐縮です。私の場合性格ゆえか読書に関してはかなり偏りがありジャンルというよりは気に入った作家を読むという傾向があります。クリスティーでイギリス風俗の下地が形成されたためか展開の緩い退屈との評判のジェイン・オースティンの小説も難なく読むことが出来ました。

バブルより遥かに前ですが友人の姉がパリのエルメスに買い物に行った際は場所柄もわきまえず日本人が来たというかなり失礼な扱いを受けたそうですが、
その後知り合いのパリ駐在日本大使館の一等書記官に同行してもらった時はVIP待遇だったという話を聞いたことがあります。
私にもフランス滞在経験がある知人が何人かおりますが、アメリカと違ってニュートラルな方は少ないようで好き嫌いがはっきり分かれるようですね。
U.K.もそんな感じがします。旧世界と新世界の違いでしょうか?