“玉手箱”騒動について

”はやぶさ2” が持ち帰った ”玉手箱” が話題になっているが、親しいふたりの友人から、

”必要以上に騒ぎすぎやしないか?宇宙の果てがどうこういうより、することがあるんじゃなかろうか。ほかの国ではもっと現実に即した、役に立つことに資源を集中しているのにこれでいいのか?ひょっとしてオリンピックを強行したいがためのめくらましなんてこたあねえだろうな?

というメールをもらった。共感する部分もあるのだが、自分の意見を返信した。紙上討論会にでもなれば面白いかと思い立ち、小生の返信を転載する。

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メール拝見、小生には異論あり。
1.このプロジェクト自体が昨今の非常時に計画されたものなら別ですが、何年も以前に計画され、たまたまその成果がこの時期に現れた、といういわば偶然の一致であることを第一に考慮すべきです。
2.米国やそのほかの国々はもっと役に立つことをやっているのに日本は、という論議には大いに異論があります。彼らがやっていること、特に軍備についてはもちろん反対であります。しかし舞台が宇宙にまで広がっている、ということははるか以前から、彼らが宇宙を対象とした多くの実験やプロジェクトを繰り返し、その成果をもとにたとえばミサイルであり、”スターウオーズ” とよばれている現在の軍拡競争に至ってしまっていることを忘れるべきではないと思います。欧米はいいが日本はダメだ、という議論はもうやめませんか。日本のやっていることが役に立たない、ということは確かにたくさんあるでしょう。しかし今回のプロジェクトは議論だけで成功したのではなく、日本の中小企業の持つ底力があって初めてできたのだと理解しています。0.001ミリの精度を要求された機械部品の製造などは日本以外ではまだできないはずです。たまたま今度のプロジェクトで日の目を見た日本の力が今後、全世界の役に立つ日がやがてくるのではありませんか。
3.今回の研究成果が人類の役に立つのか?という疑問には別の観点からの異論があります。たしかに地球の誕生やらなんだらがわかったから何だ、と言われればその通りです。しかしそれならば、たとえば1200年前にどんな和歌が詠まれていたのか、シェイクスピアがどうしたのか、古代の生物の化石がみつかったがどうか、などなど、もし現実に役に立たないものは意味がない、とすれば、今の人類が類人猿からどうやってここまで来たのか、その秘密が人類だけがもつ好奇心とか事物の改良とか発見発明だとか、その原動力になった文化というものの持つ意味をすべて否定することになりませんか。万葉集の研究と宇宙科学を比較してどっちが人類のためになるか、だれにもこたえのない不毛の議論だと思います。学術会議のメンバーに誰を選ぶか、がこんなに問題になるのは、やはり人々が学術とか文化というものを大切にしたい、そのための研究の自由が脅かされてはならない、と思っているからではないでしょうか。
4.民主党政権の時、スーパーコンピュータ開発予算の議論で世界一の技術を満たしたい、という研究者の意見になぜナンバーワンでなきゃいけないんですか、ツーではだめですか、というバカな議論をした女優もどきがいましたね。
今、富岳 はそのナンバーワンを実現して、リアルタイムのシミュレーションなどで力を発揮し、コロナの問題解決に貴重な資料を提供しています。之もあの時の議論でナンバーワンが実現していなければできなかった話です。そのときの ツーではだめですか議論はまさにそんなものは研究者の自己満足だから、というものだったと思います。
5.オリンピック云々の話については小生も賛成します。どういう背景があるのかわかりませんが、この時期に世界から人間が集まるということの持つことから言っても、延期すべきだと思っているので。ただそのために今回の成果でめくらましをしているというのは飛躍していませんか。
6.僕の考えはもっと素直に、世界水準以上の成果が出たことを単純に慶賀すればいいのではないか、と思うのですが。マスコミのフィーバーぶりには確かに苦笑しますが、コロナコロナに明け暮れている日本人の間に何か明るいニュースがあれば、という風に受け取れませんかね。