エーガ愛好会 (300) 地上より永遠に

月いち高尾、何回目だったか忘れたが、故後藤三郎の友人で参加していた川名君と映画の話になり、それがきっかけで始めてみたこのシリーズも実に300回になった。各位のご協力に感謝である。記念すべき300号ははからずもかつて名作といわれた作品をめぐって、いわば時代観の相違というべきか、この企画はじまって以来の論戦となった。このあたり、企画のレーゾンデートルだろうと信じて満足している。

(42 保屋野)誰かが云っていましたね。「名作とはツマラナイものと心得よ」掲題エーガはその典型でした。

真珠湾前夜のハワイの陸軍中隊を舞台に、兵士へのイジメ等過酷な世界を描いたベストセラーの映画化らしいですが、脚本がイマイチなのか、面白くも無く、感動も無く(テーマが)良く分からないエーガでありました。

ただ、俳優陣は豪華で、ランカスター、モンティー、の男優陣、カー、リードの女優陣は目の保養になりました。しかし、二組の恋愛劇は超陳腐でランカスターとモンティーの魅力を半減させていましたが・・・これがアカデミー作品賞?・・・私の感受性が(老化により)劣化してるせいなのでしょうか・・・70年前に観たら「傑作」と思ったかも?

(44 安田)外連味の無い160kmストレート、外角低めのストライクの感じです。僕も保屋野さんほど辛口ではないですが、似たり寄ったりです。

小津安二郎の「東京物語」を最初観た時、”なんでこの映画が世界的に賞賛されるのか?” と訝しがったものです。絶賛するドイツの監督ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders) をあまり理解来ませんでした。「地上より永遠に」も同じようなもので、僕のような素人凡人にはその素晴らしさが理解できない極上の代物なのかと思ったものです。ランカスターとカーの波打ち際のラヴシーンは、’50年代当時としては、発想といい、舞台のユニークさといい、2大スターの絡み合いといい、語り草になっていますね。「慕情」のウイリアム・ホールデンとジェニファー・ジョーンズの海岸べりのラブシーンは、もしかすると「地上より永遠に」にヒントを得たのかも?

(HPOB 金藤)「地上より永遠に 」 観ました。   お二人と全く同じ感想です。 出演者にモンゴメリー・クリフトの名前があったのでわざわざ観たのですが・・・プンプン

(編集子)このことについては、まさに年齢のギャップを感じます。僕らの年代でこの映画は確かに高い評価を受けているし、小生も感銘とまでは行きませんが、いいフィルムだったと思っています。考えてみると一つひとつのカットなんかの問題でなく(この間も書きましたけど、シナトラを失ったモンティが一人でトランペットを吹くシーンは気に入っていました)、この映画の意味は、そのメッセージ性だと思います。やっこたちとほぼ一まわり年長の僕らには、小学校時代に身をもって感じた戦後の窮乏、アメリカ人に対する混乱した思い、そんなものが”戦争”の無意味さ、組織というものの非情さ、そういうものを理屈ではなく肌で感じた記憶があります。戦後、イタリア映画に同じようなテーマを持った作品が多くでましたね。この作品もそういう感覚で受け取られるべきものなのだと思います。ドナ・リードは本国へ帰る船の上で、事情はまったく違うデボラ・カーに自分とモンティの間柄を嘘で固めて打ち明けて、せめて自分なりの決着をつけようとします。裏を知っているカ―の複雑な思いの表情が胸に響きました。あれは単に恋愛ものの都合のいい決着ではなく、そういうものを引き起こした戦争という愚挙への怒り、その思いが永遠に消えないものなんだ、ということ、それを骨身に感じた人間にずんとひびいたんですが。

’(保屋野)これまでも、賛否分れた「名作」が多くありましたね。記憶にあるのが、「道」」「パペットの晩餐会」「市民ケーン」「我が谷は緑なりき」「レベッカ」・・・各自の感受性や好み及びこれらを観た年齢等も影響してるのでしょう。評価が分かれるのは当然で、これも「エーガ愛好会」の良さなのでしょうね。満場一致、というのは、「ローマの休日」「大いなる西部」「サウンド・オブ・ミュージック」・・・大傑作と評価の高い「第三の男」や「荒野の決闘」でもイマイチという変人(私?)がいましたね

(普通部OB 船津)中司さん、同感!何か皆様がボロ映画と酷評して居るのに違和感を感じていました。貴兄の解説に賛同致します!

グーグルでもなんでもこの映画を探すと必ずこのシーンが第一にでてくる。これが今回議論を呼んだ原因かもしれない。

(33 小川) あらためてプライム・ビデオで観ました。ノスタルジーに溢れていて懐かしかった、戦後7年、中学生時代の作品ですね。皆さんとの感想の違いはジャイさんと同様、育った時代背景の違いでしょうね