今春の帰国は友人家族親族との再会の他に A P A (エイパ Amateur Music Player’s Association JAPAN 日本アマチュア演奏家協会)のメンバーと、 A P Aと提携している筆者が所属するACMPのグローバル メンバーとのコラボ。ACMP (Associated Chamber Music Players) は米国の室内楽演奏家のネットワーキングの組織で、ACMPの前身は1940年代後半にNew York で設立されたACMP (Amateur Chamber Music Players) である。今年1月に入ってから、筆者が偶然にも3月帰国の予定であった為、急遽、同時期に開催されるA P A主催の第4回国際室内楽音楽祭に飛び入り参加が決まった。ヨーロッパ、アジア、北米から約30人のアマチュア演奏家が集まり、中央線武蔵小金井駅前宮地楽器小ホ-ルでコラボの成果が3月30日にコンサートという形で発表、演奏された。
似たようなテーマ、白人と黒人の友情を描いた1967年制作の映画「夜の捜査線」(In the heat of the Night) が印象 に 残っている。南部の白人警察署長ロッド・スタイガーが、東部から来たフィラデルフィア市警警部シドニー・ポアチエを間違って殺人犯として逮捕、黒人に対する偏見と差別意識で侮辱する。やがてポアテュエの身体を張って事件解決にぶつかる姿勢と人柄に敬意を抱く、格調高い映画であった。時代を特徴付けた社会的テーマを両スター俳優が見事に演じた。わずかな仕草でそれが繊細に示されていた。当時は人種偏見葛藤問題を抱えながら、白人と黒人の絆、協調、友情を描いた知的な大人の映画だった。作品賞とロッド・スタイガーはアカデミー賞主演男優賞を獲得。アメリカ映画界の理性を感じた映画であった。
前にも書いたがグラフトンは ”アルファベットシリーズ” と称して、タイトルがアルファベットで始まる(第一作は A is for alibi)26本の小説を書くと宣言していたのだが、残念至極なことに25本目の Y is for Yesterday が遺作になってしまった。ライフワーク完了目前のことで、さぞ本人も口惜しかっただろうとしみじみ同情を禁じ得ない。最終作になるはずだった Z のタイトルは Zero であったと言われているが、こればかりは今となっては確認のしようがない。生前,彼女は ”自分の作品がクリスティのように愛されるものであってほしい” と願っていたという。クリスティには自分の最期を予測し、代表作 アクロイド殺人事件 に初めて登場させたエルキュール・ポアロを退場させるために、最期の作 カーテン を書く余裕があったのだが病魔はスーにその時間を与えなかったことになる。
訃報に接して、それなら自分の読破計画に沿って全巻読破しようとアマゾンから何回かにわたって25冊、1年かかって取り揃えた。そのうち遺作になった ”Y is for Yesterday” は(なぜだか伺ったが忘れてしまった)1冊余分に持っているから、とKWV35年卒の徳生さんから頂戴した。現時点で T is for Trespas まで素読が終わって一息ついているところである。付け加えると徳生さんからはつい先日、また同じものを買っちゃったから、と今度はバルダッチの新作をもらった。先輩、この調子で行ってください!。
ここまでくると、自分もキンジーアンかミルホーニアンになるつもりでトリビア研究でも始めて見るかと思案していたら、なんのことはない、すでにその集大成みたいな本があることを偶然知った。それが G is for Grafton である。まだ目次をみただけだが、その内容は、キンジーがどんな性格であるかとか、男運が悪いとか、食べ物の趣味はなんだとか、住んでいる部屋はどんなものだとか、まあ面白そうなものだが、これは25冊読了してからの楽しみにしておく。
さて、このシリーズの舞台はサンタ・テレサという架空の街になっていて、熱心な読者の一致するところ、太平洋に面した美しい街サンタ・バーバラがモデルなのだということがほぼ結論づけられている。今まで読んだ中にも、たとえば ”ロスアンジェルスから何マイル” とか、”サンフランシスコは北に何マイル” だとか、頻繁に出てくるハイウエイがUS101(ベイショアフリーウエイ)という著名なものであったり、それを裏付ける記述はたくさんある。さらに面白いのはこの町の名前が HBの大立者ロス・マクドナルドの後期4作品にでてくることであり(代表作 ”動く標的” もそのひとつであることは早速確認した)、ミルホーンが生前、マクドナルドに心酔していたということなどがわかってきて、サンタ・テレサがどんな街か?という興味がわいてきた。25作読むことがまず当面の目的だが、その中から、街の描写とか、通りや施設の名前とか、そういうものをまとめると ”サンタ・テレサ市街図” ができやしないか? というのが今の僕の思惑で、1冊終わるごとに関連項目をエクセルにためこんでいる(全作でキンジー自身は情報管理にはインデックスカードを用いている)。G is for Grafton までたどり着けるかどうか、が当面の心配なのだけれど。