エーガ愛好会(36)久しぶりの西部劇  (34 小泉幾多郎)

12月25日BSP放映「七人の無頼漢SevenMenFromNow 1956」のことよ!

ジョン・ウエイン設立バトジャックプロ製作で、製作者に、弟ロバート・E・モリソンとアンドリュー・V・マクラグレン、監督はバッド・ベティカー脚本バート・ケネディといった顔触れ、しかも共演があの離婚騒ぎまで起こしたゲイル・ラッセルではすべてがジョン・ウエイン好みのスタッフ、キャストだったのだが、残念なことにジョン・フォードの「捜索者」とかち合ってしまい、ランドルフ・スコットに。彼とゲイル・ラッセル共演という魅力的な取り合わせなのに、映画館で観ていないのだ(未だに実際に公開されたのか信じられない)

ゲイル・ラッセルの映画は「密輸空路1945」「拳銃無宿1947」「怒涛の果て1948」「熱風の町1949」等々観たが、その後アルコール依存症から5年ばかり出演作がなく、久方ぶりの登場だったが、この映画の5年後37歳の若さで亡くなっている。ブルネットにブルーアイズで明眸皓歯の美女で、その大きな瞳に見つめられると当時の若者は彼女の虜になってしまうと言われたぐらい心ときめいた女優だった。

妻を殺された元保安官ランドルフ・スコットが犯人の七人の無頼漢を追うスト
リー。冒頭、雨の夜、岩場に休みコーヒーを飲む二人の男のところにずぶ濡れで現われるプロローグ、語り合う間もなく銃声、次には男が2頭の馬を手綱をとっているシーンから始まる。七人のうちの二人ということが分かる。次に幌馬車で歩を進める夫妻(妻がゲイル・ラッセル)と一緒に旅することになり、その後保安官時代に二度ほど逮捕したことのあるならず者2名(うち1名が若きリー・マービン)とも一緒になる。結果的には、夫妻が運んでいたのが、盗まれた金塊で、夫の方は裏切られた無頼漢に殺されてしまう。スコットとマービンとで残りの五人の無頼漢を殺し、最後は金塊を狙うマービンとスコットが決闘になり、めでたしとなる。

あらすじを書いても何ら面白味はないが、大自然を背景に旅する幌馬車に、先住民との戦いもあり、単なる無頼漢七人との戦いに終わらず、実直な夫ウオルター・リードや曲者リー・マービンが加わったことで、ストーリーが複雑化し、ラッセルとスコットの淡いロマンスも良い。やはり本来の西部劇は単純とは言え気分よく楽しんだ。

(編集子)たしか小泉さんが一番気に入っている、女優がこのゲイル・ラッセルだったはずだ。”あの大きな瞳に見つめられて” 震えていたのは高校時代?

リー・マービンの若さにはびっくりする。いろんな場面での悪役ぶりを見てきたが、一番凄味があったのは リバティ・バランスを射った男 だった。それにしてもこの映画の決闘シーン、スコットの抜き打ちは早かった。シェーン のアラン・ラッド vs  ジャック・パランス対決より早かったんじゃないかなあ。

ミス冒愛好会 (8)俺のベストミステリ  (普通部OB 菅原勲)

「らせん階段」(1933年)を読んだ。これを書いたのは、A.ヒッチコックが監督した「バルカン超特急」の原作者、女流作家、エセル・リナ・ホワイトだ。久し振りの「ハヤカワ・ポケッット・ミステリー」(1749番)だったが、その惹句に、このミステリーは「ゴシック・サスペンス」とあった。しかし、話しは、極めて淡々と進み、最後も淡々と終わり(不幸にして、小生、途中で誰が犯人か分かった)、何が「ゴシック・サスペンス」なのかさっぱり分からずに終わってしまった。一言で言えば、ツマラナカッタ。従って、「バルカン超特急」も、図書館から借りる予定だったが止めた。

そこで、ジャイが、ドーダ、スゲーダロウってのを以下に記す。年末年始、紅白も見ず(でも、坂本冬美は、見て聴きたいなー)、箱根駅伝も見ず(小生、駅伝は大っ嫌い)、読み耽っても全部は読めそうもない。ジャイはハードボイルドにアウフヘーベン(ヘーゲルのこの言葉、一度、使いたかったなー。でも間違ってるかな)しちゃったけれで、小生は、本格探偵小説に留年し続けている。

1.「秘中の秘」(1903年):W.ル・キュー

2.「悪魔博士フー・マンチュー」(1916年):S.ローマー

3.「古本屋サロウビイの事件簿」(短編集:1899年―1923年):J.B.ハリス・バーランド

4.「血文字の警告」(1945年):S.ロジャース

5.「冷血の死」(1956年):L.ブルース

以上は市販されておらず、全て私家版だ。つまり、こんな本を、私家版であるにせよ、出版するのは、小生の到底及ばぬ探偵小説バカがいると言うことだ。それも超が付くバカだ(頭が悪いと言う意味ではない)。

なーんて格好良いことを言ったが、紅白を最初から最後まで、箱根駅伝は2/3日と見ちゃうんじゃないかな。ま、そんなことは絶対ありません。

(編集子)目下認知症予防にとほそぼそとドイツ語を勉強してる立場から言えば、Aufheben の使い方は正しいと思う。ただオレのことのために使ってもらっちゃ申し訳ない。ところで、確かに凄いリストだ。脱帽。きいたことがあるのは フーマンチューくらいなもんだな。

ミス冒愛好会 (7)なぜ エルキュール・ポワロはベルギー人か (44 Yumi Ono-Dubois)

何故Hercule Poirot (エルキュール・ポアロ)がBelge(ベルギー人)なのでしょう?

英国人が嫌うFrench(フランス人)では無理。 Flamands (フラマン人、国の北部に住みオランダ語に近いフラマン語を話す)とWallons (ワロン人、南部に住みフランス語を話す) を抱えるベルギーなら中立であるし、フランス料理もたしなみ、Hastings以来の英国紳士(11世紀、フランスのノルマンディ公 -  後のウイリアム1世 – が英国南東部のHastingsヘイスティングスで英国軍を破りグレートブリテン島全体を支配。俗にNorman Conquestという。現在に続く英国の始まりとされる。)とは対照的に愉快な人柄でもあり、アールデコ(Art Deco)時代のデコ(装飾)も車や、そして英国のブルジョア、貴族社会のモナーク(Monarch君主)を中心とした伝統的な確執システムの中の外人探偵(ベルギー人)であれば英国人とは対照的に、3D(three dimensions3次元)の色彩豊かな人物像が描けることでしょう。

(同期 安田耕太郎鋳)

S44卒の同期に Yumi Ono-Dubois (旧姓:小野夕美)さんがいます。日本航空パリ支店勤務を経てフランス人と結婚、フランス在住40年以上、現在もパリに近いヴェルサイユ近郊にお住まいです。その彼女に「ポアロはなぜベルギー人か」を問いかけたところ、フランスの香りのする返答が以下の通りありました。カッコ内は安田が補記しました。12月18日付の掲題の弊投稿記事を併せお読みください。なお、マダム・ドゥボア女史からは今後折を見てフランスから投稿したい旨の嬉しい発言がありました。

コロナの現状と我々の行動    (34 船曳孝彦)

第3波はますます勢いが増してきてしまいました。この1週間、毎日その曜日の発生件数が新記録を出し続けています。 会食後の感染者が増え、旅行者の感染も増え、Go-To政策が響いたことは明らかですが、事態は深刻になってきました。

昨日、日本医師会、東京都医師会、日本病院協会、日本看護協会などから、医療崩壊に突入しつつあり、早急な対策を求める声明が出されました。前回は旭川の危機を訴える記事を発信しましたが、今は東京、大阪などで、コロナ用ベッドが満床に近づき、非コロナ救急患者の診療も含めて、いよいよ医療崩壊に陥り始めていると、悲痛な声明なのですが、政府の耳には届いていそうもない。政府も都も何の回答も出していない。危機意識はあるのだろうか。

本当に危ない。本気にならなければいけない。私の読者の皆さん。本気で考え、新感染者を出さないよう協力してください。そうでないと日本の医療は崩壊し、一旦始まれば取り返しが効かなくなります。私はコロナよりもガン、心疾患、膠原病などの重篤成人病や、外傷などの救急医療、糖尿病、高血圧などの慢性成人病などへの影響が大きいと憂えています。

会食はもうしばらく我慢しましょう。旅行も控え、デパートスーパーなどの買い出しも最小限にしましょう。 ヒト=ヒト感染ですから当然ながら、人出の人数と新感染者数は明らかに相関します。首長が熱心な都市では新感染者は減り、大阪ではやや下向き傾向が出ていますが、東京などでは感染者のカーブは上を向いています。一般にトップが本気で取り組まないと社会は動きませんよね。

看護師の離職も増えています。感染関連病院では21の病院で、全体でも15の病院で、離職者が出ています。国や都は潜在看護師(働いていない看護師)を動員せよなどといっていますが、この危険な、しかもボーナスさえ満足に出ない可能性のある時期に、それは無理でしょう。 医師や看護師には、暮れ正月返上で働けと言っていながら、この国家存亡(冗談でなく)の危機に、国会は1月18日までお休みと。どう思います?

イギリスをはじめ、ヨーロッパ各地でVirusの変異が見つかり出しました。前から言っていた第2波(第3波)がいよいよ始まったのです。現在の変異は感染力だけは強そうですが、悪性度の増す様な変異ではなさそうということですし、ワクチンが無効になるような変異でもなさそうということで、助かりますが、感染力は数倍~十数倍というので大変です。日本の今はやっているVirusは、欧米型ですが、変異はVirus特有の性質で、2週間位でどんどん変異してゆきますので日本でも油断はできません。海外のVirus(変異した)を日本に持ち込ませないよう水際作戦が重要です。

足立ポイントー先輩の思い出    (41 久米行子)

10数年前になりますが、確かKWV三田会の夏合宿の前だったと思います。

港北ニュータウンには素晴らしい遊歩道が巡らされていて、今年もモミジが今を最後と美しい紅葉を見せております。

その遊歩道にトレーニングには丁度よい、登りがちょっときついコースがあって、一番上にトイレがあります。その日も夫婦二人で朝早くこのきつ目のコースを歩いてその脇を通り過ぎようとするとそこから出てきた男性が「オイッ!」と言うのです。こんな所でホームレスのおじさんに云いがかりをつけられてもいやだと二人して急ぎ足で通り過ぎようとすると、もっと大声で「オーイッ」と確かに我々に向かって怒鳴っていると思われるので知らんぷりをして歩き続けますと、今度は「くめっー」とはっきりと名前を呼ぶではありませんか。仕方なく後ろを振り向いて見ますとなんと34年卒の足立さんでした。よくよくお尋ねすると「今度の合宿に備えてトレーニングをしているんだよ」とのこと、我々も「誰に声をかけられているのか全く気づきませんでした。誠にすみませんでした。と平謝り。まさかホームレスと間違えましたなどとはお首にも出しませんでした。

しかし、別れた後、思わず、二人で顔を合わせて大笑いしたことを覚えております。それ以来そのトイレ付近を「足立ポイント」と名付けております。

足立さんとは住いが近いということもあって、我が家にお招きしたり、お宅にお邪魔して奥様のフラダンスを拝見したりして親しくお付き合いをさせて頂いておりましたし、時には駅前の居酒屋で待ち合わせてお酒を飲んだりしたものです。大変お酒がお好きで(特に日本酒)「酒場放浪記」の居酒屋を全国、訪ねて歩きたいなどと仰っていました。

(編集子)34年卒 足立政彦さん 2019年12月ご逝去

ミス冒愛好会 (6) アガサ・クリスティーのこと 承前 (HPOB 菅井康二)

菅原先輩のご質問に関して投稿します。私それほど熱心はミステリー小説のファンではありませんが、中学生時代に偶然手にとって読んだクリスティーの「ABC殺人事件」で謎解きの面白さとともに(アメリカは毎週TVで放映されたホームドラマでなんとなく分かった気になっていましたが)当時殆ど馴染みのない英国の風俗描写に魅了されたことを記憶しています。以降塾高に進学以降もクリスティーの小説を片っ端から読んでいました。

それでは、何故、クリステイーは、英国人ではなく、英国から見た外国、それも、フランス、ドイツ、イタリアなどの大国ではなく、小国のベルギー人を探偵にしたのでしょうか。アーサー・ヘイスティングスの知り合いだったと言うことになっていますが、その知り合いの中から、何故、ベルギー人でなければならなかったんでしょうか。逆に、どうしてクリスティーは、英国人を探偵にしなかったんでしょうか(全く関係ありませんが、英国には極めて魅力的な探偵、じゃない刑事フォイルがいたじゃないですか)。このことについて、クリスティーは、作品の中とか、或いは、自身で説明するとかしてるんでしょうか。クリスティーの失踪事件以上に、最大の謎ではないかと思っています。しかし、小生、クリスティーの全てを知っている専門家ではありません。従って、クリスティーが、男性の探偵を英国人ではなくベルギー人にした理由をご存知の方があったら、是非、ご教示ください。

残念ながら今手元にはないので貧弱な記憶が頼りなのですが、確かクリスティーが亡くなってから1年後に出版された『自伝』にコナン・ドイルのシャーロック・ホームズと被るキャラクターは避けたかった、第一世界大戦中に英国に亡命してきたベルギー人に接して同情していたというような事が書かれていたと思います。この自伝を読んでみて感じたことはクリスティー本人はミス・マープルなどよりも遥かに活動的な女性だったということです。

人づてに聞いた話ですが、ベルギーは「大陸のアイルランド」と呼ばれることがあるそうです。これはU.K.(イングランド?に対するアイルランドの関係をフランスに対するベルギーの関係に模しているのだとか。個人的にその場面に接したことはないのですが、フランスは中華思想のようなところがあり周辺国の特にフランス語を使っている国(民族)を所謂「上から目線で見下す」ところがある(あった?)そうです。

(菅原)態々の電子郵便、誠に有り難うございます。良く分かりました。クリスティーの成功の一端は、ベルギー人を探偵にしたことのようですね。勿論、クリスティーの筆力がなまじっかなものでないのは言うまでもありません。実は、小生、海外勤務で、フランスはパリに2年ほど住んでおりました(1990/91年)。その際、オランダをpays basと呼んでおりました。日本語にすると、「低い国」、要するに海面より沈んでいる国です。菅井さんが仰る、正に上から目線の典型的な例だと思います。勿論、例外はありますが、フランス人は、大変、身勝手な国民でした。

(菅井)早速ご返信を頂戴し恐縮です。私の場合性格ゆえか読書に関してはかなり偏りがありジャンルというよりは気に入った作家を読むという傾向があります。クリスティーでイギリス風俗の下地が形成されたためか展開の緩い退屈との評判のジェイン・オースティンの小説も難なく読むことが出来ました。

バブルより遥かに前ですが友人の姉がパリのエルメスに買い物に行った際は場所柄もわきまえず日本人が来たというかなり失礼な扱いを受けたそうですが、
その後知り合いのパリ駐在日本大使館の一等書記官に同行してもらった時はVIP待遇だったという話を聞いたことがあります。
私にもフランス滞在経験がある知人が何人かおりますが、アメリカと違ってニュートラルな方は少ないようで好き嫌いがはっきり分かれるようですね。
U.K.もそんな感じがします。旧世界と新世界の違いでしょうか?

エーガ愛好会 (35) 2020年時点ベストテン ランキング

本年掉尾を飾る企画! などと銘打ってよく行われる企画だが、愛好会メンバーの投票によって、”自分が好きな” という定義で、今まで見たすべてのエーガの中から、best10 の選出を行った。だから2020年度、というのは誤解を招きやすい。要は 2020年12月現在で自分の映画遍歴のなかから選んだ私のベストテン、というべきだろう。とりあえず、まず結果は下記の通り。

1.ローマの休日

2.カサブランカ

3.第三の男

4.シェーン

5.風と共に去りぬ

6.アラビアのロレンス

7.ニューシネマパラダイス

8.駅馬車

9.我が谷は緑なりき

10.荒野の決闘

以下、11位ショーシャンクの空に、12位グレンミラー物語、13位リオ・ブラボー、14位スティング、15位戦艦ポチョムキン と続く。投票の仕方にばらつきがあり、10票入れた人、1票しか入れない人、などあって、数字上の正当性には問題はあるのだが、ま、余興と思ってそのままとする。

投票総数は148票、これが合計102のタイトルに分散したので、8票を獲得したのは2本、以下7票、5票、4票が1本、2票は3本、あとはすべて投票者ご本人だけという見事な分散というか散乱ぶりであり、わが愛好会の趣味嗜好が見事に表れているようである。票数が少なく、有意性のある結果が出にくいので、投票数で差が出ないときには、1位を10点、10位を1点、11位以下という前提の投票は0.5点という係数で加重計算した数値を使った。同時に行った男優、女優の人気投票は下記の通りだが、作品に比べて投票数の絶対数が少なく、加重点の影響が作品に比べて大きく出ているようだ。

   1.ポール・ニューマン      1.オードリー・ヘプバーン

 2.ゲイリー・クーパー      2.キャサリン・ヘプバーン

 3.グレゴリー・ペック      3.ジェニファ・ジョーンズ

 4.ジョン・ウエイン       4.イングリッド・バーグマン

 5.三船敏郎           5.ヴィヴィアン・リー

 6.スティーブ・マクイーン    6.シャーリイ・マクレーン

 7.ジェイムズ・スチュアート   7.フランソア・アルヌール

 8.ジェラール・フィリップ    8.ジューン・アリスン

 9.ヘンリー・フォンダ      9.ダイアン・キートン

10.ケヴィン・コスナー     10.高峰秀子

この結果を見てやや不思議なのは、愛好会メンバーすべてが高校時代にあらわれた、かのジェイムズ・ディーンが俳優のカテゴリにもないし、出演作品が一つも選ばれていないことだ。メンバーの傾向として非常に面白い。

 

米国大統領選に関して思うこと  (44 安田耕太郎)

ウィンストン・チャーチルの有名な言い尽くされた発言がある。「民主主義は最悪の政治形態である。ただし、これまで試されてきたいかなる政治制度を除けば」。51%の得票で選挙に勝つと言うことは極論すると、49%は反対する、或いは意見を異にする人達がいると言うこと。大変複雑で難しい政治形態です、民主主義と言うのは。

民主主義体制国家は、現在国民が直接首長を選ぶアメリカ・フランス・韓国のような国と、日本・イギリス・ドイツのような間接選挙に依る国がある。いずれの形態も完璧はあり得ず、どちらもそれぞれに異なる問題と困難に直面している。

日本でも国民の政治・選挙への関心の低さを理由に解決案としてアメリカ方式の直接選挙の採用を推す声が絶えない。今の日本の状態では第2の「横山ノック」や「青島幸男」を誕生させる危険大であると僕は思う。或いは、一歩間違えば全体主義的な独裁者タイプの首長を選ぶリスクさえある。能ある鷹が爪を隠しているのを看破するだけの客観的で知的な成熟した判断力を国民全体が持ち得ているとはとても思えないからである。更に、首長候補者をふるいにかけて絞り込んでいくアメリカ大統領選挙のような充分な時間をかける方式が日本で可能であろうか? 国民が問題意識を広い範囲で、深く理解いするレベルに達するまで直接選挙は危険が大き過ぎて無理であろう。しかし、今の選挙形態ではいつまで経っても投票率は低く、政治への関心と真の理解は悲劇的に低いままだろう。これでは直接選挙を採用するに足る環境は永久に訪れないだろう。最大のジレンマがここにある。鶏と卵、どちらが先か?、である。充分すぎる議論と検討が必要であろう。

よく言われる「農業に立脚した共同社会形態」のDNAが染み付いた日本人には全体として、個々の主義主張を戦わせることに慣れていない、或いはそれを厭う・避ける傾向が強い。「口角泡を飛ばして」論争や対話を厭わない土壌にはなっていない。「親方日の丸」や「長い物には巻かれろ」「以心伝心」「忖度する」的思考方法が全体を見れば優勢に思える。これでは直接選挙で首長を選ぶ資格がある成熟した民主社会とはとても言えないだろう。国民のレベルに見合ったリーダーしか結局は持ち得ないのであろう

独裁だから悪い、民主主義だから良いと単純に割り切れないという認識が芽生えて来ているようにも見える。民主主義の「制度」があるだけではダメ。それは「可能性」を秘めているけれど、その「可能性」をしっかり活かすように私たち国民が成長して、民主主義の優れた運用者として育ってゆく必要がある。そうでないと世の中はよくならない。だからこそ私たちには、私たちのために住みよく、生き生きとした環境を自ら選択・判断・行動してつくりあげてゆく責務があるのである。そうあってこそ「民主主義」という「制度」が生きる。

最後にちょっと本題から外れるが、今夏亡くなった劇作家の山﨑正和の遺言とも取れる発言を紹介させて頂く。

コロナ危機は、近代人の秘められた傲慢に冷や水を浴びせ、人類の過去の文明、都市文明発祥以来の歴史への復帰を促す。 感染症が桁外れに深刻な恐怖と不安を人に与えるのは、病原体も 感染経路も闇に隠れていて恐怖がいつまで続くのか先行きが見え ず、それに対して「する」ことが何も無いから。自然との交渉の中で文明が勝つとの進歩主義イデオロギーはあきらめて、今回の経験が伝統的な日本の世界観、現実を無常と見る 感受性の復活に繋がってほしい。

ミス冒愛好会 (7) こんな本をみつけました (普通部OB 岡野嘉久)

地元図書館で借りた似鳥鶏(にたどり・けい)作の「難事件カフェ」という軽いミステリーを読んでいましたら、”謎屋珈琲店”なるお店が注で紹介されていました。ネットで調べたら金沢創業の珈琲屋だそうです。

https://nazoyacafe.jp/about/もうすでにご存じでお訪ねになった方がいるかもしれませんが、ご紹介まで。

(菅原)当初、家具屋のニをトリが、探偵小説を書いたのかと思った。

小生、只今、辻真先の「たかが殺人じゃないか」と言う探偵小説を図書館に予約しています。しかし、順番が55番目ですので、借りられるのは、間違いなく年を越すことになるでしょう。何故、辻真先かと言うと、彼の生年が1932年だからです。つまり、90歳近い人の探偵小説とはどんなものかいなとの好奇心です。