エーガ愛好会 (177) ヤングガン  (34 小泉幾多郎)

1978年ニューメキシコ州リンカン郡で二つの勢力が対立している事態に、一方の勢力である英国人紳士ジョン・タンストール(テレンス・スタンプ)に雇われた6人の若きガンマン達が、その敬愛する牧場主を殺したもう一方の勢力マーフィー(ジャック・パランス)一味に対し復讐を果たすべく奮闘する姿を描く。

冒頭セピア色の画面で、その若者たちが一人ずつ紹介される。ウイリアム・ポニー別名ビリー・ザ・キッド(エミリオ・エステヴェス)、ドク(キーファー・サザーランド)、チャヴェス(ルー・ダイアモンド・フィリップス)、ブリュアー(チャーリー・シーン)、スティーヴ(ダーモット・マルロー)、チャーリー(ケーシー・シマスコ)の6人である。

ターンストールの友人弁護士マクスウイン(テリー・オクイン)の尽力で保安官代行になった彼らは犯人逮捕に向うが、ビリーの独断で、その一人を撃ち殺してしまい逆にヤングガンたちに賞金がかかり、追われる立場へ。無鉄砲で好戦的ないかれ具合のビリーの性格がこの辺から大いに目立つ。うち頭領格のブリュアーが殺し屋に銃殺され、ヤングガンは5人になってしまうが、保安官ギャレット(パトリック・ウエイン)から、弁護士マクスウイン夫妻の命が危ないという情報を手に入れ、彼らを救出に向かうが、それはヤングガンたちを陥れするための罠だった。マックスウイン家に到着するやヤングガンたちは、軍隊迄も引き連れたマーフィー一味に包囲され絶体絶命。マクスウインの妻を外へ出したり、ドクの恋人中国女性(アリス・カーター)が入ったりしてから、撃ちあいのクライマックスへ、ビリー、中国女性と共にドク、チャベスの4人だけが包囲網から脱出の成功。そしてビリーはマーフィーに向け復讐の銃を放つ。

ビリー・ザ・キッドの伝記ではあるが、その仲間たちとの青春群像という形で描かれる。街を牛耳る大人たちが若者を爪弾きし、その若者たちの居場所を作ろうとする良き大人が抹殺されるという物語でもあった。21歳での生涯に21人を殺しながらも義理堅く古い西部の気質に合った男だったのではないかということから一人の若者の殺気に満ちた短い生涯は多くの同情も誘うところにもなり、ビリーを描いた映画は多く、小生が見たものでも次の作品がある。作品名、制作年と主演者を挙げる。「最後の無法者1941ロバート・テイラー」「ならず者1943ジャック・ビューティル」「テキサスから来た男1949オーディ・マーフィ」「左利きの拳銃1958ポール・ニューマン」「ビリー・ザ・キッド21才の生涯1973クリス・クリストファーソン」。

(編集子)ドクター小泉の補足をさせていただくならば、ジョン・ウエイン老年期の娯楽作のひとつ チザム ではビリーをジェフリー・ドウエル、パット・ギャレットをグレン・コーベットが演じた。御贔屓のベン・ジョンスンがウエインと若いころからの親友を演じて懐かしい、よき西部劇のひとつだった。時代的な背景としては西部開拓史上有名なリンカーン・ウオーと呼ばれた事件である。これに類似した紛争はどこでも起きていたようで、シェーン でも エルドラド でも主人公が巻き込まれたのはその一つだ。ヤングガンの背景にある紛争は、1870年代後半のアメリカ西部の辺境で起きた事件のひとつでニューメキシコ準州(当時)のリンカーン郡で発生した、二つの派閥の間の一連の紛争事件を指す。ウイキペディアの解説を転載しておく。戦争(WAR)と呼ばれるほど大規模なものだったようだ。

リンカーン郡戦争は、1870年代後半のアメリカ西部の辺境で起きた事件のこと。当時のニューメキシコ準州のリンカーン郡で発生した、二つの派閥の間の一連の紛争事件を指す。この「戦争」は、裕福な牧場主が率いる派閥と、独占的な雑貨店の経営者が率いる派閥との間で起こった。