癌健診について (普通部OB 篠原幸人)

血液だけでわかる新しい「がん検診」を知っていますか?

日本では肺がん・胃がん・大腸がん・乳がん・子宮がんなどの検診は、一定以上の年齢になると義務付けられています。但し、お役所仕事ですから多くに場合、肺がんは痰の検査、大腸がんは便に血が混じっているかを簡単にスクリーニングするだけで、本人が積極的に希望しなければ、詳しい肺のCTとか大腸の内視鏡検査まではやってもらえませんよね。

例えば、胃がんや食道がんの検査。私は影絵を見ているだけの胃レントゲン健診はあまり信用していないので、今から35年以上前から、胃の検査は内視鏡と決めています。年に1回か2回、内視鏡の専門医である友人にやってもらっていますが、今から20年ほど前、胃の表面に1㎜程度の怪しい病変が発見され、お腹を開けることなく、内視鏡的に表面を切除。顕微鏡検査では完全な癌でしたが、それ以降20年以上、全く胃の症状はなくても、毎年胃カメラだけは行っています。

肺がんに関してはCT検査がベストで、通常のレントゲン検査や痰の検査だけでは見逃されることも多いのです。大腸がんの検査にも内視鏡検査がやはり有用ですが、前の晩から2リットルもの水攻めには恐怖感を持たれる方もおられるでしょうね。私も大腸内視鏡は2年に一回、いやいやながらおこなっています。 肝臓や腎臓がんは人間ドックでやる超音波検査が、前立腺がんは採血によるPSA検査が有用なことは御存じの通りで、乳がんや子宮がんも検査で早期に見つかることが多いのですが、女性は検査を嫌がられる方もおられますね。

一方で、見つけにくいすい臓がんやその他の部位のがんは例えがん検診を毎年キチンと受けている方でも、見つかった時は手遅れという事も少なくないようです。中高年期の死亡原因は、がん・心疾患・脳卒中・肺炎などです。脳卒中や心疾患は糖尿病・高血圧・脂質異常症などの一次性生活習慣病(これがどんなものかは以前に説明しました。覚えてますか?)や遺伝が原因ですが、これはある程度、知性のある人なら(知性、あるよね?)予防も可能だし、事前に原因を見つけておけば、ある程度は避けることもできます。しかし、急に発症する心筋梗塞や脳梗塞はしょうがないとしても、今や、がんは早期発見すれば完全に治癒する病気であることは知っておいてください。筆者も昔、白血病・胃がん・前立腺がんなどを患いましたが、すべて回復しました。従って、がんはなっても早く発見すれば回復する疾患であることを忘れないでください。但し、頑固な持病や発見が遅れた場合は致命的になることもお忘れなく。

最近、血液や尿から、症状が出る前に「がん」を発見する新しい方法が見つかりました。小生も先日、ある施設でその方法でチェックを受けました。小生が受けたのは、血液からがん細胞が分泌する特異的な抗原を見つけ出す方法で、マイクロRNA検出法とよばれます。この感度は非常に高く、まだレントゲンなどにはっきり映らないうちの発見も可能とされています。しかし、まだこの全く新しい検査法は、できる施設が日本でも数か所だけです。この血液による検査はどこの臓器にガンがあるらしいことまで判別できる優れものです。

別に、比較的安価な患者さんの尿と線虫という虫を使った検査もありますが、この方法ではまだがんがご自身の身体のどこかにあることは推定できても、その部位までは区別できません。問題は現段階では、この血液検査は20万円ぐらいと高価な点です。保険はききません。また施設によっては人の弱みに付け込んで、更に怪しげな未だ効果もはっきりしない治療法まで押し付けてくるところもあるようです。しかし、がん家系の方で、お金に糸目をかけない、特にがんでは絶対に死にたくにない人はやってみるのも一つの方法です。 採血の時のチクッとした痛み以外は怖い検査ではありません。