ジョン・フォード監督の騎兵隊三部作の最終作。この連作は、太平
南北戦争中、北軍だったウエインが、妻モーリン・オハラの南部の
全般的にアクションを主体に、息子の教育問題で対立しながらも、
音楽がヴィクター・ヤングだけに、優雅な旋律に纏われ、情緒豊か
(安田)ジョン・フォードは抒情性豊かな作風から「映像の詩人」と評された。ひと昔(ずっと若い時)、この映画を観た時はそれほど感じなかったフォードのの詩情豊かな場面と映像を、今回は印象深く感じた。歳を重ねるとは“そういうことなのか”と悪い気はしなかった。ネイティヴ・インディアンを悪玉にして徹底的にやっつけるのは、現在の視点で観ればちょっと悲しいが、それを除けば、詩情ゆたかなアクションもあるさわやかな西部劇だった。
- 初老の指揮官役ジョン・ウェインは、豪放さと繊細さを併せ持ち、不器用ながら自然体で演じているのが良かった。
- 15年振りで会う妻(モーリン・オハラ)とは、別居の原因にお互いわだかまりを感じつつも、夫婦の微妙な愛情を随所に見せる“恥じらい”にも似た表現・演技は見応えがあった。「静かなる男」での共演でもこんな雰囲気であった。騎兵隊キャンプに到着してテントの中で二人きりのシーンは本映画のハイライトの一つ。
- 妻を歓迎して軍楽隊が歌うシーン、幌馬車隊が砦を出発する時、最後の表彰式での軍楽隊演奏など、要所でヴィクター・ヤングの音楽が感動的ですらある。
- ベン・ジョンソンとハリー・ケリーJrの二人が、裸馬2頭に立ったまま乗りグランド一周を疾駆する場面は、西部劇映画では他には見たことがない、名場面だ。ベン・ジョンソンはスタントなしで本人が演じたという。さすが、カウボーイの父親に育てられ、本人もロデオのチャンピオンになったことがあり、ハワード・ヒューズに馬の調教師として雇われたことが映画界に入るきっかけとなった事だけはある凄技だった。
- 幌馬車隊がインディアンに追われ逃げる場面や、ベン・ジョンソンが馬で疾駆する場面の迫力は、「駅馬車」や「荒野の決闘」などと同様、ジョン・フォード、ツボを心得ているな、と唸った。
- エンディング近く騎兵隊の突撃シーンはクライマックスを盛り上げる効果抜群。
- フォード一家のイギリス俳優の古株ヴィクター・マクラグレンは名前からしてフォードと同じIrish系であろう。フォードが初めてアカデミー監督賞を獲得した1935年制作の「男の敵」では、彼は主演男優賞を獲得した。それ以来のフォードとの付き合いであろう。世話係の伍長役を人情味とユーモアに溢れ、独特の風貌と演技で見事にこなして、印象深い。南部出身の妻(モーリン・オハラ)からは、北軍の兵士だった彼はからかわれるような、虐められるような絡み合いシーンがあり、大変面白かった。
- 息子ジェフ役のクロード・ジャーマン・ジュニアはどこかで覚えのある顔だな、と思ったら、グレゴリー・ペックの「小鹿物語」に続いて2作目だった。ナイーブでありながら騎兵隊生活になじんで逞しくなっていく様を見事に演じていた。
- 南部気質が顔を出すモーリン・オハラの頑固さや直情の感情表現はオハラの芯の強い逞しい南部女性を見事に演じていた。「風と共に去りぬ」のヴィヴィアン・リー演じるIrish系の南部女性スカーレット・オハラにも通ずるところがあった。
- 好きな場面は、エンディング近く表彰式に臨席した、ヨーク中佐(J.ウェイン)の横に並んだモーリン・オハラが白い品の良い日傘を頭上でくるくる回しながら、にこにこと笑いながら眺めているところ。この映画の温かさと優しさが象徴されていると感じた。フォードの詩情性豊かな感性の面目躍如たる場面。
- 男たちは勇敢で、純真で、女たちは可憐だが逞しく。家族愛、仲間愛に溢れ、古き良き時代のアメリカが見事に描かれた映画だと思う。ジョン・フォードの騎兵隊三部作の中では一番好きだ。最終作でもあったので有終の美を飾った感。
(編集子)この作品に登場するサンズオブパイオニアーズ。まだカントリという呼称が流行らず、ひっくるめてウエスタン音楽、と言っていたころ、上品なコーラスが印象深かった。いろいろ買った中から捨てきれずにとってあった ”レコード” がこれ。まだ残っている何枚かを聞きたくて、アンプも何台かつくったが、そのたびに今入手できるプレーヤが高価かつ超高性能でバランスが取れず、手軽にできるCDをソースにしたものばかりだ。そろそろ半田鏝とおさらばするのがいつか、というところまで来てしまったので、”最終作”にとりかかって、目をつぶって高いプレイヤーを買って,この ”レコード” を聞かねばなるまい。