糖尿病の話です    (会社時代友人 齋藤博)

犬や猫も、糖尿病になることをご存知ですか?2019年ですが、新聞にこんな記事が載りました。

”大阪市の天王寺動物園は28日、飼育していた国内最高齢のピューマ「ピコ」(雌、17歳)が死んだと発表した。死因は調査中。2018年夏ごろから慢性的な腎不全の治療を受け、12月には糖尿病と診断されていた。”

私が小さい頃、飼っていた犬や猫に、いわゆる「猫まんま」を毎日のように上げていました。猫は割と若くして死んでしまいました。
犬は、ジャーマンシェパードという大型犬で、飼いきれなくなって、親戚の工場の番犬として第2の人生を送っていましたが、泥棒に仕掛けられた毒エサを食べてあえなく死んでしまいました。食いしん坊だったのが仇になりました。どれも昭和30年代の話です。

ふと犬猫のことを思い出して、色々調べてみると、猫の場合は、慢性膵炎を基礎疾患とした、あるいは、薬剤誘発性の『2型糖尿病』になる場合が多いそうです。もしかしたら、自分の猫の死は「猫まんま」が何らかの原因になっていたのかもしれません。

犬の場合は、7,8歳くらいで発症する『1型糖尿病』が多いそうです。何らかのウィルス疾患などに罹患して発熱などの症状が出た時、体内の免疫細胞の活動が亢進するわけですが、このとき、免疫細胞が自身の膵臓のβ細胞を攻撃し、β細胞を破壊してしまった結果、1型糖尿病を発症するとされているようです。

鯉も糖尿病になると聞きましたが、詳しい資料は見つかりませんでした。
色んな動物が人間に飼われるようになり、人間と同じ環境で生活し、同じような食事をすると、人間がかかるのと同じような病気になるのでしょうか。

実は、昨年まで勤めていた仕事の関係で、田園調布動物病院の田向健一先生という方に出会い、著書を読む機会がありました。一頃、テレビで、フェラーリに乗る獣医として話題になった先生だと思います。エキゾチック・アニマルという言葉を初めて使った先生としても有名です。『珍獣ドクターのドタバタ診察日記: 動物の命に「まった」なし! 』 動物の病気がよく分かっていなかった頃から、動物の病気を探ってゆく姿がなんとも素晴らしく、感動した本でした。

ところで、皆さんは、1型糖尿病は生まれつきの病気だと思っている方はいませんか?昔はそのように言われていましたが、1型糖尿病は年令に関係なく発症しているようです。詳しい原因は分かっていないとのことですが、先程の、犬の糖尿病に書いたのと同じようにウイルス感染も重要な要因のようです。

今では、①劇症1型糖尿病、②急性発症1型糖尿病、③緩徐進行(かんじょしんこう)1型糖尿病と言う3種類の1型糖尿病に分類されています。

私の兄は平成7年に、ひどい風邪を引いた後に体調がおかしいと言って近くの都立病院に行って診察を受けたました。「立派な糖尿病だ。インスリン打たなきゃいけないな」と医師に大笑いして言われ、1週間後に急死しました。46歳でした。劇症1型糖尿病の存在が明らかにされたのは、それから5年後。大阪医大でこの病気が発見され、世界に報告されました。兄の血液検査などのデータを見ると、明らかにこの劇症1型だと思われるデータでした。

人の体を取り巻く環境についての科学は常に進歩しています。沢山の研究者により、いろいろな病気の実態がわかり、新しい治療法が確立されているのは、素晴らしいことです。上手いタイミングで助かった人は、ラッキーですね。兄は残念でしたが、実は、別の病気ですが、私はラッキー側の一人です。