百田尚樹と聞けば、似通った考え方の石原慎太郎、ケント・ギルバート、渡部昇一、田原総一郎、江藤淳、花田紀凱(元月刊Will編集長)、安倍晋三などの名前が頭に浮かぶ。最近亡くなった石原慎太郎と何年か前に対談した百田は石原に「今日の対談のタイトルは “新旧暴言サムライ!” で決まりだ」と言われたと述懐。先輩である「暴言サムライ!を失って寂しい・・・」と百田は石原との思い出を振り返り、「新版・日本国紀」を読んでもらいたかった! それが心残りだ、と石原の死を惜しんだ。
菅原さん仰るように、江藤淳ととても似た、或いは非常に近い考え方の持ち主だと思う。江藤淳の著作は1970年代に「海舟余波」次に「海は蘇る」を最初に読んだ。「海は蘇る」は、司馬遼太郎の「坂の上の雲」に続いて読んだ、19世紀の開国から日露戦争の日本海海戦まで、帝国海軍の父と呼ばれる山本権兵衛の半生を中心に、近代国家としての日本の黎明期を壮大なスケールで描いた本。それ以来、彼の専門分野の文芸評論以外では、月刊雑誌「諸君」「SAPIO」「文芸春秋」などに載った彼の持論などにも親しむようになった。彼は「忘れたことと忘れさせられたこと」、「閉ざされた言語空間―占領軍の検閲と戦後日本」、「一九四六年憲法―その拘束―その他」を著わし、GHQによる戦後日本のマスコミへの検閲、GHQの呪縛から脱皮できない戦後民主主義を鋭く批判している。日本人の在り方についても積極的に発言し、アメリカを代表する占領軍当局によって、日本は実質的に独立国家ではなくなっていると主張。また、アメリカ政府が極秘で日本弱体化計画(ウォー・ギルト・インフォーメーション・プログラム 「War Guilt Information Program」)を進めていたと主張し続けた。まさに、百田尚樹の主張と同じだ。未だ読んでないので何とも断定的なことは言えないが、ある意味、「新版 日本国起」は我々国民に「自虐史観からの解放」を結果としてもたらす効果がありそうな気がする。或いは、もたらしたい欲求に突き動かされて著したのかも知れない。マスコミ代表のひとつ「朝日新聞」の評価と存在意義などにももっと真剣な論議をしてもらいたいとも思う。
江藤は愛妻を癌で亡くしてからは気力を失い、最後は自らを「形骸」とし鎌倉の自宅で自殺した。月刊・文芸春秋に江藤が癌と闘う妻に寄り添う自らの看病生活と心情を縷々語る特集記事を投稿した。その記事を読んで深く感慨に浸っている頃、江藤の自死が報じられ仰天したことを鮮明に覚えている。
寡聞にして充分な知見を持ち合わせてない、日本の天皇制、明治維新とは、第二次世界大戦における日本のアジア植民地解放の真実、GHQの本性・役割・影響、真珠湾攻撃に至るアメリカの遠慮深謀戦略(ハルノート、アメリカ世論を参戦賛成に誘導する必要性)、極東裁判、WGIPの本質、日本憲法、日本の真の独立、日本の民主主義などについて、もっと詳しく正しく知り、あるべき姿とは何かについても思慮したいと思う。「新版 日本国紀」がその端緒を開く助けの一つになれば幸いだ。