甲州街道アーメンコーナー

上り車線信号の先がアーメンコーナー

甲州街道を新宿から走ってきて調布市に入りかけたところに旧甲州街道への分岐路がある。このY字路の少し手前左側が調布警察署だが、ここの一角のことである。警察署敷地の真ん前に甲州街道を挟んでBMWの販売店があり、その隣にビル一つを隔ててホンダがあり、その向かい側にマツダの国領店が、その筋向いがトヨタ、すぐ隣がスズキ、3軒先にフィアット、その先はミニクーパーのショウルームがある。つまり交差点を中心に半径200メートル以内に6つの自動車販売店が密集していることになる。おまけにÝ字を左に京王線国領駅へ入る、旧甲州へのアプローチには、お定まりの国籍不明カタカナ名前の億ションの麓(文字通りそういう感じなのだ)にもうひとつ、メルセデスベンツ のショウルームが控えている。ここにないのは日産くらいだろう。

マーケティング理論はまずマーケットセグメンテーションという章から始まることが多い。もちろんここでいうセグメンテーションという意味は全く違うのだが、この一角にこれだけ同業者の出店がまとまっているとなんだか調布市のカストマ―をセグメントしているような気持ちになってくるから面白い。同業者が密集して存在するというのはもちろん理由があり企業の戦略があるわけで、たとえば秋葉原の通称電気街なんかはその典型だろうし、セブンイレブンがあればすぐ近くににローソンがあるとか、マックのならびにフレッシュネスがあるとかい うのはよく見る風景だ。このように同業が隣接していることで価格に大きな差は存在しえないから、顧客はたとえば店のたたずまいとか、店員の態度とか、経済理論だけでは説明できない理由から店を選ぶことになるだろう。そういう意味では限られたスペースに同業店があるというのは顧客にとっても望ましいことになる。

そのあたりのことはわかるのだが、自動車というような価格が高く選択に時間を要するような商品の場合、顧客が次から次へと店を見て歩くというような行動パターンは当てはまらないように思える。またこのあたりは調布の中心地からははずれているし、駐車スペースも限られている。どうもこの地域というよりも地点にこれだけの同業者が密集する理由がよくわからない。そういう意味で、興味を引く地点だと思ってきたのだが、僕にとって別の意味を持つ地点でもある。

八王子方面から来ると新宿つまり小生が住んでいるつつじが丘方面へ行くには左斜めにカーブする必要があるのだが、この屈曲点からすぐのところに、横断歩道したがって信号機が並んでいて、その間隔は30メートルくらい           しかない。警察署の敷地の両端なのだが、正面玄関にはいるのに都合がいいという位置でもないし、なぜ二つも信号を作らなければならないのか、はっきりした理由がわからない。

数年前のこと、中央高速を降りて家へ帰るとき、この信号の一つ目が黄色に変わりかけたとき、その直近にさしかかった。たしかに道交法によれば黄色信号になった時に該当交差点に進入することは禁止されているが、その変わり方というかタイミングから、数メートルくらいだと、多少引け目はあっても人や車がいなければ進行してしまう、という行動は誰でも経験したことがあるだろう。この場合もそうだったし、その先30メートルでいずれとまらなければならないのは知っていたので、あまり罪悪感もなしに、すんなりと進んで次の信号で停止した。ところがそれが青に変わって発進した途端、背後にパトカーがぴったりくっついてきたのに気がついた。それまでどこにも見えなかったのだから、小生の通過と同時に警察署から飛び出してきたのは明らかである。左へ寄って停止。お定まりのお小言があって罰金、この場で長きにわたって保持してきたゴールド免許証はなくなった。

もちろん法的にはぐうの音も出ない。しかしまさに待ち構えていたとしか思えず、気分がよくない。後で考えてみたのだが、この時乗っていたホンダは山梨ナンバーだったことに気がついた。県外車取り締まり、というのはたぶん検挙率競争では有利なのだろうし、それでも腹が立つ。こっちが悪いだけに余計だ。関係ないんだが、そんな警察を取り囲むようにクルマやがならんであたかも警察にすり寄ってるような気がして、しかもその中にいつでも調子のいいことを言っているホンダ営業所の真ん前で捉まえられたことで余計腹が立った。

それ以来、小生はこの交差点をアーメンコーナー、と呼ぶことにした。散歩コースで我が家からちょうど30分の位置にあるこのY字分岐に来ると全く合理性もへちまもないのだが心の平安が波立つからである。

ホンモノのアーメンコーナー。心が穏やかでなくなるところ。ウイキペディア抜粋:

「アーメンコーナー」とは、ゴルフの4大メジャーの1つ、マスターズの舞台となるアメリカ・ジョージア州のオーガスタナショナル・ゴルフクラブの11番、12番、13番ホールの3つの難ホールのこと。池やクリークが絡み、風を読むのが難しいこの3ホールでトーナメントの行方が大きく左右することでも知られ、「アーメン」と神に祈らずにはいられないほど難しいといった意味で使われます。