ウクライナ問題とは何か?   (44 安田耕太郎)

人類が地球上に社会を造るようになって以来、野生動物社会生存の鉄則「弱肉強食」が支配してきたのが人間の歴史でもあったとの感を強くする。まさに勝てば官軍、である。そこには「正義」などという形而上の綺麗ごとが通用する現実はない。パワーが支配する世界。北方4島、クリミア半島などが好例である。歴史は戦争に勝つ力を持つ国を 「大国」と定義していたし、勝って領土を収奪(確保)した国の行為ととその結果を是認してきたと言ってよい。

それでは戦争の原因は何だったのか? 大きく言って二つある。ひとつは、自らの力に自信を持ち勝算ありと計算して領土的野心や自己の利益を追求する場合。もう一つは、他からの圧力への恐怖にかられて戦争を起こす場合。両者が混在するのが現実であろううが、中国の台湾併合(尖閣・南沙諸島も含む)の場合は前者、ロシアのウクライナ侵攻は前者の要素も少しあるがNATO・アメリカ側との国境線が事実上隣国ウクライナのなるという後者の怖さの要素がより大きい。イランの核を恐れるイスラエルが先制攻撃をかけるとすれば後者の場合であろう。

ウクライナに絡む領土問題も当事者の米ロ・NATO軍は核保有国なので、ウインウインのない全面戦争に突入するほどいずれの陣営も愚かではないだろう。自国を強大国と見せたいプーチンは、フルシチョフとケネディのキューバ危機と同じように、フルシチョフが核ミサイルをキューバから撤収したと同じように、振りかぶった拳をおろしウクライナ侵攻を実行しないのであろうか? 北朝鮮の軍事強大化に頼る戦狼外交(Wolf warrior diplomacy)と似通った意思決定傾向がロシアにも見られるのは憂慮される点だ。一方、バイデンとNATOはロシアがウクライナ東部へ侵攻した場合、一体何をしてそれを防ぐ積りなのか、或いは一体何が出来るのであろうか?苦戦が伝えられるバイデン民主党政権は、起死回生の一打として内政の苦境を外交で一挙に逆転打を狙う誘惑に駆られ行動を起こすのであろうか?外交は時として内政失敗を挽回する切り札ともなり得た来た歴史がある。両者虚々実々のつばぜり合いは予断を許さない。

近世以降の覇権の推移と覇権に挑戦した国々の歴史を振り返ると、アングロ・サクソン勢(昔イギリス、現在の主力はアメリカ)に対する他国の挑戦であったと観ることが出来る。16世紀後半の中南米植民地から富を得た無敵艦隊のスペイン、続いてオランダ、18世紀末から19世紀初頭のフランス・ナポレオンの挑戦、第一次・二次世界大戦におけるドイツの挑戦、冷戦におけるソ連(ロシア)との拮抗。全てアングロサクソン勢の勝利に帰している。そして現在では中国がアメリカの覇権に挑戦しているかのように映る。アングロサクソン勢はAUKUS (Australia, United Kingdom United States,)の豪・英・米の三国間の軍事同盟などに彼らの遠慮深謀な世界戦略を観ることができる。

戦争は依然存続し続けるであろうが、ハードパワーが衝突する戦争の時代から、軍事力・経済力・先端技術力・文明理念や文化発信力が混合してパワーを産み出すことになる、多極的地域における切磋琢磨と競合の時代になると思う。ハードパワーとソフトパワーの高く洗練されたレベルでの融合こそが将来のパワーの源ではなかろうか。その意味では人権と自由を抑圧する中国の独裁専制的国家運営は世界の標準たり得る資格を持ちえるとは言い難い。ロシアの野心的領土拡大戦略も多とはとてもし難い19世紀帝国主義時代の遺物だと思う。ただし、経済学で云う「悪貨は良貨を駆逐する」や、「暴力は怖い、それには抗うな」や、「長い物には巻かれろ」的な一般大衆のポピュリズム的傾向が強まれば、一瞬先は闇の世界にもなるかも知れない。200以上ある世界の国連加盟国政府の半分以上は中国の一党独裁専制的国家運営に賛成している事実は、一筋縄では行かない人間の欲望、打算、損得勘定を如実に物語っている。ウクライナ問題に限らず、民主主義陣営の強力にして健全な世界覇権の維持力を期待してやまない。

(菅原)本日(8日)の日経夕刊の一面に、プーチン大統領は同月(注:12月)に、東欧諸国を加盟させないというNATOの約束が破られ、「ひどくだまされた」と語った。プーチンは日本人が言いそうなことを言ってるな。

プーチンはKGBにいたんでしょ。そこでは、ダマシダマサレルのは日常茶飯の出来事。東で、日本を「とんでもなく騙したら」、西でNATOに騙されるのは当たり前の話し。それとも得意の二枚舌か。と言っても、「北方四島」は、鈴木宗男が言っているように、「取り戻す」ことは出来ないのか。残念無念。

”シルバラード” ってどこだ? ”エルドラド” は?

”エーガ愛好会” の仲間と西部劇 ”シルバラード” について書いた時、この仮想の町はどこにあるのか? となんとなく書いたところ、さすがその道の識者から早速ご連絡があった。本稿ではだいぶ前に、”赤い河” を話題にしたとき、Red River Valley  とはどこか? と書いたことがあったが、結構面白い話題ではあるな。

(安田)ウィキによれば、シルバラードはゴルフ場の名前になっているナパヴァレーの一角のようです。映画でも最後は加州に行くことになっているので、ここがその場所なのでしょうか?確かに緑の多さはネヴァダやアリゾナ、はたまたニューメキシコでもありません。ウイキにいわく:

ナパバレーでも特に名高いシルバラードトレイル。オークが立ち並ぶのどかなトレイル沿いには世界クラスのワイナリーが連なり、1週間かけても回り切れないほど。ナパカリストガを結ぶ最初の常設道路であるシルバラードトレイルはおよそ48キロメートルにおよび、ほぼ平行に走るハイウェイ29号線の代わりに使われるのどかな小道です。

(小田)(映画の中で)黒人男性が、シカゴから来たと言っていることから、舞台は安田様の仰るように、ルート66上のように思います。ルート66の最終地点、サンタモニカからヨセミテに行く途中、ローン パインに寄りました。前にも書きましたが、ここには、Western Film History 博物館があり、この周辺がロケ地のような気もします(編集子注:黒人男性、とは可哀そうに。ダニー・グローヴァです)。

エルドラドについてですが、サクラメントの知り合いの日本人女性を訪ねた事があります。その時ついでにエルドラド郡を周りました。ひとつは、戊辰戦争で破れた元会津藩の40人+ドイツ人(シュネル)とその日本人妻と娘2人で作った、Wakamatsu Tea and Silk Colony。日本人初の入植者達です。しかし2年後、シュネル家族は資金調達にドイツに行ったまま帰って来ず、日本人達は又々大変な目に会いました。その中に娘2人の子守りとして来た、”おけい”がいました。19歳で亡くなりましたがお墓が作られ、今も皆に守られています。この時は記念碑だけでお墓は見られず、その後、会津に行った際、東山の景色の良い所に立つレプリカを見てきました。この記念碑のあるGold Trail小学校と東山小学校は姉妹校になっています。
(安田) 1960年代、GMのキャデラック最高級車に「エルドラド」(El Dorado ― 黄金郷)、1990年代、GMのシボレー・ピックアップトラックに「シルバラード」(Silverado)がありました。片や金、一方は銀。ゴールラッシュ時代の19世紀から由来しているのでしょうか?南米コロンビアの首都ボコタの空港名は「El Dorado」です。16世紀征服したスペイン人が伝え聞いたとされる南米に存在すると言われた伝説の黄金郷が由来。

(船津)日本にエルドラドは無いのかなぁ。

日本の農家は大分以前と変わり一家に4台の車が在るとかね!豊かには成りましたね。でもほんの一部だと思います。

(編集子)なるほど、クルマにありましたね、確かに。当時たまたまカリフォルニアにいた僕にとってはやはり マスタング が憧れでしたけど。

初代マスタング(ムスタングとは言わないことを現地で知った)。リー・アイアコッカをフォード社長にのし上げた名車。

エーガ愛好会 (109) オクラホマ・キッド  (34 小泉幾多郎)

12月3日BSP放映の「追われる男1955」に次ぐジェームス・キャグニー主演の西部劇。12月24日放映の「シマロン1960」での、オクラホマ州での土地獲得競争が、冒頭から号砲一発で一斉スタートするのだが、まず驚いたことは、こんな昔の映画なのに、インディアン居留地として保証していた土地を二束三文で、入植者に開放するということに、当時のクリーブランド大統領が議会演説で「今回の土地の買い入れはインディアンからの搾取であり、議会に押し切られて致し方なく調印する」という趣旨の演説から始まる。

主役のキャグニー扮するジム・キンケイド通称オクラホマ・キッドも土地はインディアンから安く叩いて取り上げたものと反体制的な言葉を使い、土地獲得には無関心を装い、酒場で酒を飲んでいる。監督はロイド・ベーコン、どちらかというと低予算の職人監督として活躍したが、ミュージカルの傑作「四十二番街1933」や野球映画「春の珍事1949」等印象深い。

キャグニーを取り巻き、父ジョン・キンケイド(ヒュー・サザーン)兄ネッド・キンケイド(ハーヴェイ・スティーブンス)や恋人ジェーン・ハードウイック(ローズマリー・レイン)とその父ハードウイック判事(ドナルド・クリップス)の面々に、敵役は当時悪役でならしたハンフリー・ボガートが黒ずくめの服装で、悪役ホイップ・マコードに扮し、ダンディズム、ニヒリズムの魅力を醸し出していた。

簡単に筋を辿れば、チェロキー族への補償金を強奪したマコード一派から、その補償金を横取りしたのがキッドで、インチキで土地を獲得し酒場と賭博場を仕切るマコードと敵対することになる。キッドの父は町の有力者で人望厚く、町長に立候補するも、マコードに嵌められ、吊るされてしまう。マコードの悪行と仕掛けたマコードの部下たちへの復讐の念に燃えたキッドは次々と部下たちと対決、3人を殺し、1人はマコードの悪行の証言させる。ジョン・フォードの西部劇の常連ワード・ボンドが子分の一人に扮するが、あまり活躍の場がないまま直ぐに殺されてしまう。同じフォードの「わが谷は緑なりき1941」のドナルド・クリップスは判事に扮し貫録の演技を示す。最後キッドとマコードとの対立は格闘となったが、保安官となった兄ネッドが逮捕に現われ射ち合いとなり、射たれるも、瀕死のままマコードを射殺したが、キッドに抱かれながら息絶える。結局キッドの父と兄は法の力で解決しようとするが、キッドの法以外の力でしか解決できなかった西部劇の典型が描かれている。

肉親を失ったキッドだが、恋人ジェーンの父判事のお墨付きもいただきジェーンと新生活に入る。他愛ないと言えばそれまでだが、キャグニーとボガートという名優以下善悪入り乱れての戦いが西部劇の典型で先ずは面白かった。

(編集子)”西部劇の典型” をぜひ見たかったのだが所用があり見損なった。妙な意地だが、どうも録画、というのが嫌いなので。

コロナ第六波到来 !  (普通部OB 篠原幸人)

2022年も新型コロナで幕開けですね。ついに第六波が始まりました。アメリカでは毎日100万人、フランスでも20万人、スエーデンでは国王夫妻も感染したとか。東京でも直ぐに毎日1000人から下手をすると1万人以上の新患が出るかもしれません。沖縄・山口も多いですね。やはり米軍の駐留地から広がった可能性でしょうか。

オミクロンが感染力は強いが、病原性はさほど強くないかもしれないと12月4日に書きました。どうやらその予測は当たっていたようです。しかし、実はもうオミクロン株にはA型とB型が出来ているようです。すなわちオミクロン自体の進化が早くも始まっているのです。皆さんがクリスマスだ、正月だなどと騒いでいる間に、このウイルスは生き残りを賭けて夜も寝ないで必死に働いていたのです。従って近い将来、オミクロン株が次の変異を遂げて、さらに強力な病原性をもつより危険なウイルスになる可能性すら出てきました。

私も再来週17日に3回目の接種、すなわちブースター接種を受ける予定ですが、たとえ受けても感染を完全に防げるとは思っていません。効果がゼロではないでしょうが、多分皆さんの順番が来る頃には3回目接種の効果の有無がある程度わかってくると思います。3回目接種の感想はまた書きます。それよりも接種率の低いアフリカ諸国のことが心配です。アフリカの奥地にこのウイルスが生き残り、何年か先に形を変えて出てくる可能性もありますが、今は当面の我々の問題の解決が先でしたね。

現在の保存に制限のあるワクチンに変わって、保存のきく経口投与のできるワクチンでも開発されれば、世界の隅々までワクチンが行き渡り、朗報となるのでしょうが、将来のことはさておいて何とかこの第六波を日本がどう乗り切るかが当面の問題です。

2022年の年明けー 新しい ”国富論” へ    (大学時代クラスメート 児井正義)

昨年はコロナ禍を始め数々の国難に見舞われ、対応、自粛に明け暮れる不自由な生活を余儀なくさせられた一年でした。ただこの余暇を利して、多くの事に気付き、学ぶことが出来ました。日頃出来なかったことに取り組み、亦人生をゆっくり考える機会にもなり、決して悪いことばかりではありませんでした。

その中で、最大の収穫の一つが、テレビの番組を介して、マルクスの「資本論」と近年公開された彼の膨大な「研究ノート」を学習したことです。経済学部に学んだにも拘わらず、疎遠であった「資本論」の真髄に触れた瞬間にマルクスの卓越した解析力、慧眼と行動力に改めて敬意を表すると共に目から鱗が落ちた思いでした。「資本主義」のメカニズムを徹底的に解析しその矛盾や限界を明らかにした正に名著と云えましょう。

+今世界は「新市場主義]と云う名の市場原理主義が世界を席巻、世界全体の在り方を大きく変えて来ました。しかしこの資本主義の暴走の結果、私たちの生活も地球環境もめちゃくちゃになっています。社会の繁栄を脅かす数多くの危機、金融危機、経済の長期停滞、貧困やブラック企業、新型コロナウイルスのパンデミックと気候変動の影響による異常気象等々。中でも深刻な問題の一つが格差の拡大です。気候変動に代表される世界的な環境破壊も深刻です。マルクスはこうした資本主義の矛盾と限界について約150年前から予見していたのです。今こそ「資本論」は単なる学術論文ではなく、社会変革に向けた「実践の書」と解し、よりよい将来社会を構想するための実践的な道標になるのではと思います。

今年こそは新政権の下,直面する難局に凛然と立を向かうとともに、様々な異質のものを和やかに調和させ、共存を図りながら、穏やかで平和な日常の一刻も早い到来を祈りつつ、そのための実践的構築が求められているものと考えます。

かって梶山静六代議士が「政治の要諦は如何に国民の食い扶持を確保するかにある。」と語った由。この提言こそは我が国の豊かで平和な社会に向けて発展しで行くための努力を示唆するもので、前述の世界的な危機、課題に実践的に立ち向かい解決を図ることにあると思います。そのためにも「資本論」の示す道標が大いに役立つことでしょう。 具体的には、我が国は今でも勤勉で、天然資源の不足を補う知的資源を有するある意味豊で、伝統的な文化を持ち、美しい国土に恵まれた底力を有する世界に誇れる平和な国だと自負しております。

しかしながら前述した世界的な危機、深刻な課題は我が国にとっても全く例外ではありません。世界は今こうした課題解決に向けて「CDGS」18項目を標榜しております。この目標達成のために第4次産業革命が喧伝される中、続々と新しい産業が生まれて来るものと予想されます。そこに我が国の出番が生じます。持てる知的資源を結集してその底力を存分に発揮することで、新しい富を享受することになります。

一方この過程の中で国際的協力、共存が図られ新たな富・資産が生じます。日本版「国富論」と云うべきこうして蓄積された豊かな資産が国民の食生活の確保と「危機管理」を構築し、働き方改革に寄与し、格差是正を図り、自然環境の改善に貢献する等世界に範たる豊かな文化・文明大国として発展し、他国と協調して世界平和に貢献して行くことを確信し祈って止みません。

 

花と虫 その2    (大学時代クラスメート 廣明幹雄)

2021年10月にのせて頂いた花と虫のその2です。
同年の10月~11月半ばぐらいまでの花に立ち寄った虫を選びました。

1.セイタカアワダチソウとイチモンジセセリ

セイタカアワダチソウは10月頃から11月に猛威を発揮する外来種の野草です。
テレビのマラソンや駅伝などでも、道路を進む毎に背景に写し出されます。
が、花はよく見ると意外に美しく、蜜も多いらしいと思われます。
イチモンジセセリはこの頃から晩秋まで色々の花を渡り歩きます。

 

2.マリーゴールドにショウリョウバッタ
マリーゴールドの花にショウリョウバッタが張り付いていました。
かなりの長時間張り付いていたようです。花びらを食べていたのか、単に休息していたのか、動けなかったのか判りません。
翌朝見に行ったら姿が見当たりませんでした。

 

3.小菊にマツグロヒョウモン

この菊はかなり大きな株で花が密集して咲いていたのでいろいろな昆虫が4~5日間にわたって集まっていました。
マツグロヒョウモンは羽根が破れ、ヨタヨタと飛んでいました。

 

4.小菊にシマハナアブ

同じ小菊で撮影しました。

 

 

 

5.小菊にヒラタアブの仲間

同じ小菊で撮影しました。

 

 

 

 

6.山茶花にセグロアシナガバチ

山茶花に止まったセグロアシナガバチです。
この山茶花に、この前の年(2019年)にスズメバチが止まっているのを見た時は写真を撮ってから大急ぎで退散したことがありました。
この写真を撮ったときも一瞬見て驚いたのですがアシナガバチの仲間だったのでゆっくり撮影しました。

 

(編集子)廣明幹雄はクラスを代表する硬骨漢であった。それが花を愛する好々爺になれる、なんと我が国は平和であるようだ。

ロシア―ウクライナ問題とは何だ? (普通部OB 田村耕一郎)

(編集子)田村君から表記の問題について、彼が入手した専門家筋の情報を送ってくれた。原文がかなりの長文なので、勝手ながら大幅に切り詰めてご紹介する。不備があればすべて当方の責任である。ウクライナ、などと日本は関係あるまい、と思っている人がほとんどだと思うが、我が国にとって最重要同盟国アメリカの昨今の混乱に重大な影響があるようなので、ご紹介しておきたい。

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米情報機関が作成した報告書は、ロシア軍がウクライナとの国境地帯の4カ所に集結していることを伝え、最大17万5000人を動員した多正面作戦をロシアが想定している可能性を指摘した。米情報機関の当局者によれば、早ければ年明け早々にもロシアは軍事攻撃を計画しているという。これは日本の主要メディアでも大きく取り上げられ、もし協議がまとまればよいが、決裂した場合、ロシア軍のウクライナ侵攻も覚悟しなければなくなるとして、危機感が高まっている。ウクライナ南部のクリミア半島に展開していた約1万人のロシア軍が撤退したが、状況には変化はない。依然として緊張は高まったままだ。

このような状況で、ロシアと、欧米が支援するウクライナとの間で緊張が高まっている。2008年7月にロシア軍はジョージャーに軍事侵攻して「ジョージャー紛争」が始まったが、これと同じ状況が今度はウクライナで始まるのではないかと懸念されている。しかし、そもそもなぜロシア軍はウクライナ国境に展開してるのだろうか?日本では、かつての大国、ソビエトの版図の回復を狙うロシアの拡張主義の戦略の現れだとする解説が多い。本当にそうなのだろうか?

今回のロシア軍結集の動機は2つある。ひとつは、東部ウクライナのドンバス地方で自治の拡大を要求している親ロ派を支援することである。そして次は、1990年から1991年に、アメリカとNATO加盟国が当時のソビエトのゴルバチョフ書記長に約束した、NATOは東方に拡大しないとの確約の順守と実行である。

2008年4月にNATO参加国の首脳が集まった「ブカレスト合意」では、ジョージャとウクライナのNAT参加を歓迎するとしていた。しかし、NATOは集団的な安全保障機構なので、内戦を戦っている国は加入できない規定になっている。加盟国が巻き込まれる可能性が出てくるからだ。だが、ドローンの実戦配備によって東部ウクライナの親ロ派が駆逐されて内戦が完全に終結すると、ウクライナがNATOに加盟する条件は整う。これはロシアにとって絶対に容認できないことだ。ウクライナが加盟すると、NATOはロシアの国境まで拡大することになってしまうからだ。ロシアにとっては、大きな安全保障上の脅威となる。これはなんとしてでも阻止しなければならない。

だが反対に、ウクライナの内戦が終結せず、長期化すると、ウクライナのNATO加盟はないことになる。これはロシアにとっては願ってもない状況だ。このような現状の維持を目的に、ロシアはウクライナとの国境に大規模な部隊を展開して、クライナ政府にゲームチェンジャーとなり得るドローンの使用を断念させろと同時に、東部親ロ派を支援する構えを見せている。もしウクライナ政府軍がドローンを使うと、ロシア軍は攻撃するという脅しである。だが、プーチンがロシア軍をウクライナ国境に展開している目的はこれだけではない。ロシアの安全保障にとって根本的な問題を取り除くという、より大きな目的もある。

ちなみにNATOはソビエトの崩壊後、加盟国を増やし、東方のロシアとの国境に迫る勢いで拡大した。1999年にはまずポーランド、ハンガリー、チェコスロバキアが加盟した。それ以降も旧ソビエトの共和国を中心にメンバー国は拡大し、いまでは31カ国が加盟している。上に書いたように、2008年4月の「ブカレスト・サミット」では、ついにロシアと国境を接するジョージャとウクライナに、NATO加盟を歓迎するとの声明を出した。もちろんこれは、ロシアにとっては安全保障上の脅威である。また、ロシアによると、アメリカ及びドイツやイギリスは、ソビエトが崩壊する前の1990年から91年にかけて、NATOは東方に拡大しないと当時のゴルバチョフ書記長に確約していたというのだ。これは条約で明文化されてはいなかったものの、確約は明らかに存在したとロシアは主張している。プーチン大統領は、アメリカ及びNATOがこの確約を破って東方に拡大したことが、ロシアと欧米との関係を悪化させた真の原因であると信じている。

そこで今回、ロシアはウクライナ国境にロシア軍を展開してNATOを脅し、91年の確約を順守するように迫っているのだ。ロシア外務省は、「ロシア連邦」とアメリカ合衆国の間の安全保障条約」と「ロシアと北大西洋条約機構の加盟国の安全を確保するための措置に関する合意」という2つの条約草案を発表した。これにはロシアの要求が明確に記されている。その要求をまとめると次のようになる。

・ロシアの国境に向けたNATOの拡大はしない。・2008年のNATOによるウクライナとグルジアへの加盟要請の撤回。・ロシアに隣接する国に、モスクワを標的とした攻撃システムを配備しない法的拘束力のある保証。・ロシアとの国境付近でのNATOやそれに準ずる国(英国、米国、その他)の「演習」を行わないこと。・NATOの船舶や航空機は、ロシアの国境から一定の距離を保つこと。・定期的な軍事的協議の実施。・ヨーロッパに中距離核を配備しない。

以上である。これらの要求を一言で言えば、アメリカとNATOはゴルバチョフ書記長との確約を順守して、NATOが拡大を始めた1999年以前の時点まで、その範囲を縮小せよということだ。これは非常に大胆な要求である。アメリカもNATOもロシアのこの要求を受け入れることはないと見られている。それというのも、アメリカとNATOは、プーチン大統領が主張するようなNATOの東方不拡大の確約のようなものは、存在しないと主張しているからだ。

NATOは、東方不拡大の確約の存在を一蹴し、それをロシアが勝手に信じている神話だとしている。そのような立場からすると、NATOの東方拡大には正当性があり、ロシアが文句を言う筋合いのものではないということになる。プーチン大統領のNATO縮小要求は当然受け入れられない。

しかし、後になって確約の存在を示す膨大な外交記録が公開された。NATOのサイトに掲載された先の文書が書かれたのは2014年である。だが、2017年になると首都ワシントンにある「ジョージ・ワシントン大学」がアメリカの「情報自由法」に基づき外交記録の開示請求をしたところ、米政府は1990年から91年までの交渉記録を公開した。これらの文書は、同大学の「安全保障アーカイブ」に収められ、ネットで見ることができる。

これを見ると分かるが、NATOの東方不拡大は明白に確約されている。このような確約は、公開された膨大な文書に無数にちりばめられている。プーチン大統領の、NATOは確約を破ったとの非難は当たっている。やはり、アメリカとNATOはロシアにウソをついたと言われたとしても仕方がない。このように見ると、ロシアの言い分には明らかに正当性がある。その意味では、確約違反を犯しているアメリカとNATOが東方拡大を停止し、拡大以前の1999年の時点まで活動エリアを縮小せよとの要求にも十分な合理性があると言える。だが、この要求はあまりに敷居が高い。すでにNATOは東方に拡大しているので、アメリカもNATOもロシアの要求を簡単に飲むことはできない。

むろん、ロシア軍がウクライナに侵攻するようなことにでもなれば、ウクライナを支援しているNATO諸国は巻き込まれる。だが、アメリカやNATO諸国は新型コロナウイルスのパンデミックの対応で手一杯で、ウクライナ紛争には巻き込まれたくないのが本音だ。その意味では、ウクライナ国境に展開しているロシア軍の存在は、紛争の巻き添えを回避したいアメリカとNATOを、ロシアとの交渉のテーブルにつかせるには十分な圧力となる。

しかし、そうだとしても、プーチンはなぜこれほどハードルの高い要求をアメリカとNATOにしているのであろうか?おそらくそれは、アメリカやNATO諸国が、これから国内の混乱で手が回らなくなることを予想し、ロシア軍を展開したのだと思われる。いまトランプとその支持者は、2022年の中間選挙に向けて活動を再開している。

前回の記事でも紹介したように、いまアメリカの成人人口の12%もの国民が暴力革命を容認している。こうした意見の背後にあるのは、大統領選挙を盗まれたとのトランプ派の大変な憎しみの感情だ。2022年11月に行われる中間選挙に向けてこの怒りは表出し、米国内ではさまざまな衝突が発生する可能性がある。すると、国内問題の対応で手一杯のバイデン政権は妥協し、ロシアの要求をある程度受け入れる可能性が出てくる。

寅年の終わりは一つ、陽気にどうです?  (普通部OB 船津於菟彦)

堅いこと抜きにして年末愉しく「とらとら」ってどんなお座敷遊び?」かご存じ、やったこと無いので????

とらとらの歌詞

千里走るよな藪(やぶ)※1の中を

皆さん覗いてごろうじませ※2

金の鉢巻きタスキ

和藤内※3がえんやらや※4と

捕らえし獣(けだもの)は

とらとーら とーらとら

とらとーら とーらとら

とらとーら とーらとら

 

歌詞の注釈

※1:千里とは約4,000㎞を指します。つまり、千里ほどの広さがある広大な藪を意味します。

※2:「ごろうじませ」とは、「だまされたと思って」を意味します。ついては、「覗いてごろうじませ」は、「だまされたと思って、覗いてみてください」と解釈できます。

※3:中国・明時代の政治家である鄭成功をモデルとした近松門左衛門の浄瑠璃「国性爺合戦」の主人公の名前です。 「和藤内」という名前の由来は、主人公は中国人を父に、日本人を母に持つため、「和(日本)でも唐(中国)でも内(ない)」という洒落から来ていると言われています。

※4:重い物を押したり引いたりするときのかけごえで、昔から使われてきました。現代ふうに言い換えると、「よいしょ」や「うりゃー」、「おりゃー」といった表現になります。

近松門左衛門の浄瑠璃「国性爺合戦(こくせんやかっせん)」から誕生した拳遊び、つまりジェスチャー表現を使用したジャンケンです。因みに中国・厦門のコロンス島の海際に巨大な鄭成功の像がありますね!観に行きました。

ジェスチャーの決まりは、和藤内なら槍で突くポーズ、虎なら四つん這いのポーズ、おばあさん(老母)なら杖をつくポーズです。ジャンケンで言うなら、和藤内がグー、虎がチョキ、おばあさんがパーです。つまり、和藤内は虎に勝ち、虎はおばあさんに勝ち、おばあさんは和藤内に勝つというルールです。 受けそうですね。ホイホイとらとら🎶
下のYouTubeで——。

https://www.youtube.com/watch?v=WtDg7apfmsI

まぁ笑いながら良い年越しを。

(エーガ愛好会はこれでなくちゃね)