エーガ愛好会 (127) 南部の反逆者    (34 小泉幾多郎)

クラーク・ゲーブル主演で南北戦争と言えば、誰しもあの名作「風と共にさりぬ1939」を思い起こす。監督はラオール・ウオルシュ、タフなアクションやサスペンス等でハリウッド黄金期を象徴する巨匠の一人だ。西部劇も多く、40年代の「高原児1947」「追跡1947」「死の谷1949」といった作品は当時西部劇に新風を吹き込んだ異色作で、フィルムノワール的と言われている。特に西部劇には珍しく女優陣に目立った役回りを与えたことが印象に残る。順にジェーン・ワイマン、テレサ・ライト、ヴァージニア・メイヨ。この映画でも、ゲーブルよりも
女優のイヴォンヌ・デ・カーロに重点を置き女性一代記を演じさせている。残念ながら、ヴィヴィアン・リーに比較されると影が薄くなるのは致し方あるまい。

そもそも「風と共に去りぬ」を偲んでの作品を、ほぼ20年後に何故手掛けたのだろう。原作は「オール・ザ・キングスメン」でピューリッツア賞を受けたベストセラーの原作ロバート・ベン・ウオーレン。撮影は作品100本以上というルシアン・バラード。音楽は「風と共に去りぬ」のマックス・スタイナーとスタッフも超一流。確かに、イヴォンヌ・デ・カーロとヴィヴィアン・リーとを比較すれば敵わないが、ゲーブルは男盛りの「風」の39歳から老境の56歳でもまだまだ貫禄十分、奴隷市場での威圧する態度、決闘の相手がその自信ある形相に怖じ気づき逃げ出すやら、シドニー・ポアチェアが逮捕に表れた時、赤子から育て上げた経緯を喋る長いセリフ等々。

その今年1月没の若きポアチエは黒人の組頭を演じ、白人を殴りつけたことから北軍に身を投じ。赤子から世話になったゲーブルとの間で悩む姿を熱演したりの白人黒人の対立悩み等を浮き彫りにするところは、「風と共に去りぬ」がどちらかと言えば、甘いメロドラマが強調されていたとすれば、より刺激的で痛々しい感覚に溢れる社会派ドラマと言ってもよいかも知れない。

結局イヴォンヌは、表面的には白人だが、黒人を母に持つという悩める女性を演じ、奴隷市場で売りに出されるが、ゲーブルに高値で買ってもらえ、次第に愛するようになる。最初の恋人レックス・リーズンが北軍に志願、その後新しい恋人エフレム・ジンバリスト・ジュニアに愛されたり、南北戦争の激化に伴い紆余曲折するが、最後はゲーブルと共にボートに乗って帆船に乗るべく漕ぎだす。冒頭の合唱による旋律と同じ旋律が流れハッピーエンドで終わる。大いに楽しめたことからもっと脚光を浴びても良い作品と思ったのだった。終わってみれば、楽しい西部劇を観たような気分。

(飯田)この映画、何故か劇場公開時に映画館を渡り歩いて乱観した時期なのに、タイトルも印象が無く、今回多分初めて鑑賞しました。私は年齢と共に比較してランク付けするのを慎むことを心掛けていますので「風と共に去りぬ」等と
比べては観ませんでしたが、ストーリー展開、主演のクラーク・ゲーブル、オボンヌ・デ・カーロ、シドニー・ポアチエ、エフレム・ジンバリストなど、往年の俳優がそれぞれに味を出して西部劇というより、南北戦争時代の南部の奴隷制度下での主従の間の愛憎を、予想通り?のストーリー運びでEndingを迎える典型的なドラマとして大変楽しめました。

1950年代、60年代はこの種の映画や描き方が名作でもなくても主流であったことを改めて思い起こさせられた作品でした。