コロナの現状と我々の行動    (34 船曳孝彦)

第3波はますます勢いが増してきてしまいました。この1週間、毎日その曜日の発生件数が新記録を出し続けています。 会食後の感染者が増え、旅行者の感染も増え、Go-To政策が響いたことは明らかですが、事態は深刻になってきました。

昨日、日本医師会、東京都医師会、日本病院協会、日本看護協会などから、医療崩壊に突入しつつあり、早急な対策を求める声明が出されました。前回は旭川の危機を訴える記事を発信しましたが、今は東京、大阪などで、コロナ用ベッドが満床に近づき、非コロナ救急患者の診療も含めて、いよいよ医療崩壊に陥り始めていると、悲痛な声明なのですが、政府の耳には届いていそうもない。政府も都も何の回答も出していない。危機意識はあるのだろうか。

本当に危ない。本気にならなければいけない。私の読者の皆さん。本気で考え、新感染者を出さないよう協力してください。そうでないと日本の医療は崩壊し、一旦始まれば取り返しが効かなくなります。私はコロナよりもガン、心疾患、膠原病などの重篤成人病や、外傷などの救急医療、糖尿病、高血圧などの慢性成人病などへの影響が大きいと憂えています。

会食はもうしばらく我慢しましょう。旅行も控え、デパートスーパーなどの買い出しも最小限にしましょう。 ヒト=ヒト感染ですから当然ながら、人出の人数と新感染者数は明らかに相関します。首長が熱心な都市では新感染者は減り、大阪ではやや下向き傾向が出ていますが、東京などでは感染者のカーブは上を向いています。一般にトップが本気で取り組まないと社会は動きませんよね。

看護師の離職も増えています。感染関連病院では21の病院で、全体でも15の病院で、離職者が出ています。国や都は潜在看護師(働いていない看護師)を動員せよなどといっていますが、この危険な、しかもボーナスさえ満足に出ない可能性のある時期に、それは無理でしょう。 医師や看護師には、暮れ正月返上で働けと言っていながら、この国家存亡(冗談でなく)の危機に、国会は1月18日までお休みと。どう思います?

イギリスをはじめ、ヨーロッパ各地でVirusの変異が見つかり出しました。前から言っていた第2波(第3波)がいよいよ始まったのです。現在の変異は感染力だけは強そうですが、悪性度の増す様な変異ではなさそうということですし、ワクチンが無効になるような変異でもなさそうということで、助かりますが、感染力は数倍~十数倍というので大変です。日本の今はやっているVirusは、欧米型ですが、変異はVirus特有の性質で、2週間位でどんどん変異してゆきますので日本でも油断はできません。海外のVirus(変異した)を日本に持ち込ませないよう水際作戦が重要です。

足立ポイントー先輩の思い出    (41 久米行子)

10数年前になりますが、確かKWV三田会の夏合宿の前だったと思います。

港北ニュータウンには素晴らしい遊歩道が巡らされていて、今年もモミジが今を最後と美しい紅葉を見せております。

その遊歩道にトレーニングには丁度よい、登りがちょっときついコースがあって、一番上にトイレがあります。その日も夫婦二人で朝早くこのきつ目のコースを歩いてその脇を通り過ぎようとするとそこから出てきた男性が「オイッ!」と言うのです。こんな所でホームレスのおじさんに云いがかりをつけられてもいやだと二人して急ぎ足で通り過ぎようとすると、もっと大声で「オーイッ」と確かに我々に向かって怒鳴っていると思われるので知らんぷりをして歩き続けますと、今度は「くめっー」とはっきりと名前を呼ぶではありませんか。仕方なく後ろを振り向いて見ますとなんと34年卒の足立さんでした。よくよくお尋ねすると「今度の合宿に備えてトレーニングをしているんだよ」とのこと、我々も「誰に声をかけられているのか全く気づきませんでした。誠にすみませんでした。と平謝り。まさかホームレスと間違えましたなどとはお首にも出しませんでした。

しかし、別れた後、思わず、二人で顔を合わせて大笑いしたことを覚えております。それ以来そのトイレ付近を「足立ポイント」と名付けております。

足立さんとは住いが近いということもあって、我が家にお招きしたり、お宅にお邪魔して奥様のフラダンスを拝見したりして親しくお付き合いをさせて頂いておりましたし、時には駅前の居酒屋で待ち合わせてお酒を飲んだりしたものです。大変お酒がお好きで(特に日本酒)「酒場放浪記」の居酒屋を全国、訪ねて歩きたいなどと仰っていました。

(編集子)34年卒 足立政彦さん 2019年12月ご逝去

ミス冒愛好会 (6) アガサ・クリスティーのこと 承前 (HPOB 菅井康二)

菅原先輩のご質問に関して投稿します。私それほど熱心はミステリー小説のファンではありませんが、中学生時代に偶然手にとって読んだクリスティーの「ABC殺人事件」で謎解きの面白さとともに(アメリカは毎週TVで放映されたホームドラマでなんとなく分かった気になっていましたが)当時殆ど馴染みのない英国の風俗描写に魅了されたことを記憶しています。以降塾高に進学以降もクリスティーの小説を片っ端から読んでいました。

それでは、何故、クリステイーは、英国人ではなく、英国から見た外国、それも、フランス、ドイツ、イタリアなどの大国ではなく、小国のベルギー人を探偵にしたのでしょうか。アーサー・ヘイスティングスの知り合いだったと言うことになっていますが、その知り合いの中から、何故、ベルギー人でなければならなかったんでしょうか。逆に、どうしてクリスティーは、英国人を探偵にしなかったんでしょうか(全く関係ありませんが、英国には極めて魅力的な探偵、じゃない刑事フォイルがいたじゃないですか)。このことについて、クリスティーは、作品の中とか、或いは、自身で説明するとかしてるんでしょうか。クリスティーの失踪事件以上に、最大の謎ではないかと思っています。しかし、小生、クリスティーの全てを知っている専門家ではありません。従って、クリスティーが、男性の探偵を英国人ではなくベルギー人にした理由をご存知の方があったら、是非、ご教示ください。

残念ながら今手元にはないので貧弱な記憶が頼りなのですが、確かクリスティーが亡くなってから1年後に出版された『自伝』にコナン・ドイルのシャーロック・ホームズと被るキャラクターは避けたかった、第一世界大戦中に英国に亡命してきたベルギー人に接して同情していたというような事が書かれていたと思います。この自伝を読んでみて感じたことはクリスティー本人はミス・マープルなどよりも遥かに活動的な女性だったということです。

人づてに聞いた話ですが、ベルギーは「大陸のアイルランド」と呼ばれることがあるそうです。これはU.K.(イングランド?に対するアイルランドの関係をフランスに対するベルギーの関係に模しているのだとか。個人的にその場面に接したことはないのですが、フランスは中華思想のようなところがあり周辺国の特にフランス語を使っている国(民族)を所謂「上から目線で見下す」ところがある(あった?)そうです。

(菅原)態々の電子郵便、誠に有り難うございます。良く分かりました。クリスティーの成功の一端は、ベルギー人を探偵にしたことのようですね。勿論、クリスティーの筆力がなまじっかなものでないのは言うまでもありません。実は、小生、海外勤務で、フランスはパリに2年ほど住んでおりました(1990/91年)。その際、オランダをpays basと呼んでおりました。日本語にすると、「低い国」、要するに海面より沈んでいる国です。菅井さんが仰る、正に上から目線の典型的な例だと思います。勿論、例外はありますが、フランス人は、大変、身勝手な国民でした。

(菅井)早速ご返信を頂戴し恐縮です。私の場合性格ゆえか読書に関してはかなり偏りがありジャンルというよりは気に入った作家を読むという傾向があります。クリスティーでイギリス風俗の下地が形成されたためか展開の緩い退屈との評判のジェイン・オースティンの小説も難なく読むことが出来ました。

バブルより遥かに前ですが友人の姉がパリのエルメスに買い物に行った際は場所柄もわきまえず日本人が来たというかなり失礼な扱いを受けたそうですが、
その後知り合いのパリ駐在日本大使館の一等書記官に同行してもらった時はVIP待遇だったという話を聞いたことがあります。
私にもフランス滞在経験がある知人が何人かおりますが、アメリカと違ってニュートラルな方は少ないようで好き嫌いがはっきり分かれるようですね。
U.K.もそんな感じがします。旧世界と新世界の違いでしょうか?

エーガ愛好会 (35) 2020年時点ベストテン ランキング

本年掉尾を飾る企画! などと銘打ってよく行われる企画だが、愛好会メンバーの投票によって、”自分が好きな” という定義で、今まで見たすべてのエーガの中から、best10 の選出を行った。だから2020年度、というのは誤解を招きやすい。要は 2020年12月現在で自分の映画遍歴のなかから選んだ私のベストテン、というべきだろう。とりあえず、まず結果は下記の通り。

1.ローマの休日

2.カサブランカ

3.第三の男

4.シェーン

5.風と共に去りぬ

6.アラビアのロレンス

7.ニューシネマパラダイス

8.駅馬車

9.我が谷は緑なりき

10.荒野の決闘

以下、11位ショーシャンクの空に、12位グレンミラー物語、13位リオ・ブラボー、14位スティング、15位戦艦ポチョムキン と続く。投票の仕方にばらつきがあり、10票入れた人、1票しか入れない人、などあって、数字上の正当性には問題はあるのだが、ま、余興と思ってそのままとする。

投票総数は148票、これが合計102のタイトルに分散したので、8票を獲得したのは2本、以下7票、5票、4票が1本、2票は3本、あとはすべて投票者ご本人だけという見事な分散というか散乱ぶりであり、わが愛好会の趣味嗜好が見事に表れているようである。票数が少なく、有意性のある結果が出にくいので、投票数で差が出ないときには、1位を10点、10位を1点、11位以下という前提の投票は0.5点という係数で加重計算した数値を使った。同時に行った男優、女優の人気投票は下記の通りだが、作品に比べて投票数の絶対数が少なく、加重点の影響が作品に比べて大きく出ているようだ。

   1.ポール・ニューマン      1.オードリー・ヘプバーン

 2.ゲイリー・クーパー      2.キャサリン・ヘプバーン

 3.グレゴリー・ペック      3.ジェニファ・ジョーンズ

 4.ジョン・ウエイン       4.イングリッド・バーグマン

 5.三船敏郎           5.ヴィヴィアン・リー

 6.スティーブ・マクイーン    6.シャーリイ・マクレーン

 7.ジェイムズ・スチュアート   7.フランソア・アルヌール

 8.ジェラール・フィリップ    8.ジューン・アリスン

 9.ヘンリー・フォンダ      9.ダイアン・キートン

10.ケヴィン・コスナー     10.高峰秀子

この結果を見てやや不思議なのは、愛好会メンバーすべてが高校時代にあらわれた、かのジェイムズ・ディーンが俳優のカテゴリにもないし、出演作品が一つも選ばれていないことだ。メンバーの傾向として非常に面白い。

 

米国大統領選に関して思うこと  (44 安田耕太郎)

ウィンストン・チャーチルの有名な言い尽くされた発言がある。「民主主義は最悪の政治形態である。ただし、これまで試されてきたいかなる政治制度を除けば」。51%の得票で選挙に勝つと言うことは極論すると、49%は反対する、或いは意見を異にする人達がいると言うこと。大変複雑で難しい政治形態です、民主主義と言うのは。

民主主義体制国家は、現在国民が直接首長を選ぶアメリカ・フランス・韓国のような国と、日本・イギリス・ドイツのような間接選挙に依る国がある。いずれの形態も完璧はあり得ず、どちらもそれぞれに異なる問題と困難に直面している。

日本でも国民の政治・選挙への関心の低さを理由に解決案としてアメリカ方式の直接選挙の採用を推す声が絶えない。今の日本の状態では第2の「横山ノック」や「青島幸男」を誕生させる危険大であると僕は思う。或いは、一歩間違えば全体主義的な独裁者タイプの首長を選ぶリスクさえある。能ある鷹が爪を隠しているのを看破するだけの客観的で知的な成熟した判断力を国民全体が持ち得ているとはとても思えないからである。更に、首長候補者をふるいにかけて絞り込んでいくアメリカ大統領選挙のような充分な時間をかける方式が日本で可能であろうか? 国民が問題意識を広い範囲で、深く理解いするレベルに達するまで直接選挙は危険が大き過ぎて無理であろう。しかし、今の選挙形態ではいつまで経っても投票率は低く、政治への関心と真の理解は悲劇的に低いままだろう。これでは直接選挙を採用するに足る環境は永久に訪れないだろう。最大のジレンマがここにある。鶏と卵、どちらが先か?、である。充分すぎる議論と検討が必要であろう。

よく言われる「農業に立脚した共同社会形態」のDNAが染み付いた日本人には全体として、個々の主義主張を戦わせることに慣れていない、或いはそれを厭う・避ける傾向が強い。「口角泡を飛ばして」論争や対話を厭わない土壌にはなっていない。「親方日の丸」や「長い物には巻かれろ」「以心伝心」「忖度する」的思考方法が全体を見れば優勢に思える。これでは直接選挙で首長を選ぶ資格がある成熟した民主社会とはとても言えないだろう。国民のレベルに見合ったリーダーしか結局は持ち得ないのであろう

独裁だから悪い、民主主義だから良いと単純に割り切れないという認識が芽生えて来ているようにも見える。民主主義の「制度」があるだけではダメ。それは「可能性」を秘めているけれど、その「可能性」をしっかり活かすように私たち国民が成長して、民主主義の優れた運用者として育ってゆく必要がある。そうでないと世の中はよくならない。だからこそ私たちには、私たちのために住みよく、生き生きとした環境を自ら選択・判断・行動してつくりあげてゆく責務があるのである。そうあってこそ「民主主義」という「制度」が生きる。

最後にちょっと本題から外れるが、今夏亡くなった劇作家の山﨑正和の遺言とも取れる発言を紹介させて頂く。

コロナ危機は、近代人の秘められた傲慢に冷や水を浴びせ、人類の過去の文明、都市文明発祥以来の歴史への復帰を促す。 感染症が桁外れに深刻な恐怖と不安を人に与えるのは、病原体も 感染経路も闇に隠れていて恐怖がいつまで続くのか先行きが見え ず、それに対して「する」ことが何も無いから。自然との交渉の中で文明が勝つとの進歩主義イデオロギーはあきらめて、今回の経験が伝統的な日本の世界観、現実を無常と見る 感受性の復活に繋がってほしい。

ミス冒愛好会 (7) こんな本をみつけました (普通部OB 岡野嘉久)

地元図書館で借りた似鳥鶏(にたどり・けい)作の「難事件カフェ」という軽いミステリーを読んでいましたら、”謎屋珈琲店”なるお店が注で紹介されていました。ネットで調べたら金沢創業の珈琲屋だそうです。

https://nazoyacafe.jp/about/もうすでにご存じでお訪ねになった方がいるかもしれませんが、ご紹介まで。

(菅原)当初、家具屋のニをトリが、探偵小説を書いたのかと思った。

小生、只今、辻真先の「たかが殺人じゃないか」と言う探偵小説を図書館に予約しています。しかし、順番が55番目ですので、借りられるのは、間違いなく年を越すことになるでしょう。何故、辻真先かと言うと、彼の生年が1932年だからです。つまり、90歳近い人の探偵小説とはどんなものかいなとの好奇心です。

ベートーヴェン生誕250年  (普通部OB 船津於兔彦)

ベートーヴェンの街 ボン

もう15年も前になりますが、2000年に独逸を車で縦断しょうと言う旅の友人から持ちかけられ、都合が付かず参加しませんでしたが、その後親類がハンブルクに友人の奥様がケルンにお住まいに成って居たのを機会に、2005年にハンブルグからフランクフルトまでユーロパスを買い定期券のように列車を乗り降りして旅をし、ボンを訪ねたことを思いだしました。伯林の前の首都という事でもう少し色々な観光の物があるのかと思いきゃベートベンの生家以外これと言った目玉も無かったような気が致します。

2020年は、ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(Lutwig van Beethoven:1770年12月16日~1827年3月26日)の生誕250年にあたる記念すべき年です。
音楽教室には必ず飾ってあるミサ・ソレムニスの原稿を手にした肖像画余りにも有名ですね。ベートーヴェンの母語であるドイツ語ではルートゥヴィヒ・ファン・ベートホーフェンと発音するようですが、日本ではベートーヴェンと言われていますね

上の写真ボンにあるベートーヴェン像の後ろに見える黄色い建物 は1845 年に除幕式が行われた旧フェルステンベ ルク伯爵邸で、現在は中央郵便局として使わ れている。右の像は3D風の像でモダンな物が広場に置いてありました。生家はごく普通の家でした。

ベートーヴェン以前の音楽家は、宮廷や有力貴族に仕え、作品は公式・私的行事における機会音楽として作曲されたものがほとんどであった。ベートーヴェンはそうしたパトロンとの主従関係(およびそのための音楽)を拒否し、大衆に向けた作品を発表する音楽家の嚆矢となった。音楽家=芸術家であると公言した彼の態度表明、また一作一作が芸術作品として意味を持つ創作であったことは、音楽の歴史において重要な分岐点であり革命的とも言える出来事であった。とプログにあります。ベートーヴェンは早くから聴力を失っていますが学者の研究によるとベートーヴェンの毛髪から通常の100倍近い鉛が検出されて注目を集めた。鉛は聴覚や精神状態に悪影響を与える重金属である。しかし、ベートーヴェンがどのような経緯で鉛に汚染されたかについても諸説あり分からない。
可成り神経質でコーヒーは必ず自ら豆を60粒数えて淹れたというとい逸話がある。

今年は日本では恒例の第九の大合唱もコロナの影響で行われずに、TV放送で聴けるかと思います。音楽史上極めて重要な作曲家の一人であり、その作品は古典派音楽の集大成かつロマン派音楽の先駆けとされ、後世の音楽家たちに多大な影響を与えた。日本では「楽聖」とも呼ばれる偉大な音楽家ですね。

この時いばら姫のお城とかも訪ねましたが、カーナビが今ほど進んでいないときでしたからもし、自分で2000㌔運転していたら行けなかったかも知れません。ユーレパスを買い、定期券の様に、先ず次に泊まるホテルのあるところまで行き、空身で観光地に戻り歩いた思いでもあります。そしてハーメルンでは地元のタクシーをチャーターしていばら姫のお城などを訪ねました。思い出深い旅でした。

ミス冒愛好会(5) なぜポワロはベルギー人なのか ?

(44 安田)ネットを徘徊して以下に遭遇しました。

アガサはまず、主人公は、「シャーロック・ホームズのようであってはいけない」(自伝・下・P446)と考え、ホームズとは正反対の印象を与える小男を設定しました。まず、登場した時に滑稽な、あるいはうさんくさい印象を人々(イギリス人)に与え、その軽視された小男が事件を見事に解決して見せる、そのギャップが劇的な効果を生むことに目をつけたのです。

それだけなら、ヨーロッパの小国であればどこでもよかったでしょう。事実、アガサが自らを戯画化して描いた女性ミステリー作家(アリアドニ・オリヴァ夫人)は彼女の主人公をフィンランド人に設定しています。

彼女がベルギー人を選んだのは、当時(第一次世界大戦中)身近にベルギー難民を多く見て、親近感と同情を抱いたからです。 アガサ曰く、「そこでわたしはベルギーからの亡命者を思い出した。ベルギー人の相当な亡命者集団が教区に住んでいた。……わたしの探偵をベルギー人にしてはなぜいけない?わたしは考えた。いろんなタイプの亡命者がいる。亡命警察官はどうだろう?引退した警察官だ。あまり若くない。この点わたしはとんでもないミスをやってしまった。結果的にわたしの作りだした探偵は今やとっくに百歳を越したことになってしまった」(自伝・下・P448~9)、と。 そうして生まれたのがポアロ第一作『スタイルズ荘の怪事件』(1916)のようです。

(菅原)わざわざ、有り難うございます。生半可な知識で偉そうなことを口走ると、たちまち報復される良い例です。いささか反省。
良く分かりました。クリスティーの狙い、ピタリと嵌りましたね。そのポワロ役のデイヴィド・スーシェ。Wikipediaで調べたら、もとはデイヴィド・サシェットだったそうで、ポワロ役を機にフランス読みのスーシェに変更したそうです。そして、名前の前にSirがついておりました。

(中司)本題とあまり関係ないけど、”オリエント急行殺人事件” の映画化、先日も書いたけど、オールスタアキャストの1974年版のポアロはアルバート・フィニーがユーモアもあって素晴らしかった。2010年版ではこのスーシェがポワロだったけど、テレビシリーズのイメージがありすぎて、さえなかったね。

コロナ禍でパラダイム・シフトは起きるか ? (HPOB 菅井康二)


NewsPicksという有料のニュースのポータル・サイトがあり紙の新聞の購読を止めてからサブスクリプションしました。毎週1回落合陽一(筑波大准教授)のWeekly Ochiaiというその時の旬な話題を取り上げたディスカッション番組がネットでライブ配信されています。

ご紹介するのは5/13の緊急事態宣言中に配信された『パラダイムシフトの世界史(コロナはパラダイムシフトを引き起こすか?)』という番組です。今回のパンデミックはTVを中心にメディアでは散々取り上げられていますが、寡聞にしてこのような多角的な視点での議論はお目にかかったことがありませんでした。

新型コロナを契機にパラダイムシフトは起こるかどうか、という問題を人類史を振り返りながら、今回のパンデミックにおける社会への影響を考える議論において、河合塾の世界史講師である青木裕司氏は、過去のパンデミックを例にあげて新型コロナをこう位置付けます。

 

青木 たとえば14世紀のペストや南北アメリカに起きたパンデミックは、社会や民族の構造を根本的に変えました。しかし、一方でスペイン風邪は社会を共同体含めて何も変えなかった。その理由は、死亡率です。ペストとスペイン風邪を比べれば、圧倒的に違うことがわかります。南北アメリカのパンデミックも、ヨーロッパから人が来るまで4000万人いた人口が、1200万人と75%減っている。ペイン風邪も死者は5000万人と多いですが、死亡率で考えると社会を変えるほど大きなものではない。今回の新型コロナも、そういう点では同様に社会を大きく変えるほどのものではないと考えています。


道具で社会も人の行動も変わっていく

落合陽一は独自のアプローチで対話の場に一石を投じる。彼が注目したのは「道具」でした。

落合 たとえば戦争が生んだ発明品は数多くありますが、コンピューターを生んだのが第二次世界大戦と考えるのであれば、なんらかの世の中の大きな変化は新しい道具を生み出し、新しい道具が中長期的に変えていくのは間違いないと思います。道具の発展史と社会的ムーブメントは近く、働き方が変わり、道具が代わり、社会システムの中の対話のための道具が変化すると、人の行動変異は当然起こります。今回でいえば、人と人が会えないことによって成立する新しい道具の発展が大きくあるだろうと思っていて、それが5年10年経ったときになかなか大きな変化になりそうだ、と考えています。

痛みの大きさで変化の度合いは変わる

 

国際政治学者で慶應義塾大学法学部教授の細谷雄一氏は、落合氏の発言に同意しながらも「まだ評価は早い気がする」と言います。

細谷 まず、人類というのは痛い目にあわないとわからないものです。たとえば太平洋戦争で原爆を落とされた日本は、そこでやっと国を丸ごと変えた。痛みとは、主観と客観のふたつに分けられます。

身内の死などの主観的な痛みと、社会や経済に対するインパクトなどの客観的な痛み、これらがどれだけ大きいものかで、変化の大きさも変わって来るでしょう。そう考えると、新型コロナがどれほどの痛みを人類にもたらすか、それはまだ過渡的な状態だと思います。

根拠なき精神論に基づく働き方からの脱却

立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏は社会を変えるのは客観的な痛みである「経済」とし、日本で起こりうる変化について述べました。

出口 いま、リーマンショックも超えて戦後最大の経済ショックだと言われています。経済の痛みが最終的にどれほど大きなものになるかはまだわかりませんが、いずれにしても社会を変えていく原動力になると思います。

日本は1970年代からG7ではずっと最下位の労働生産性でしたしかし今回のパンデミックによりリモートワークや大学でのオンライン授業など、急激にITリテラシーが上がっている。それにともなって、日本の癌であった、付き合い残業や上司に誘われたら断れない飲み会のような、根拠なき精神論に基づく日本的な働き方はやや中期的に見たら次第に消えていくでしょうし、それは生産性を高めることにつながると思います。

新型コロナは宗教観を変えるか?

歴史学者で東京大学教授の本郷和人氏は、新型コロナにより起こる大きな変化のひとつとして「宗教観」をあげました。

本郷 僕は以前、東大全体で所属にかかわらず学生に授業を開放したことがあるのですが、そのときに日本の宗教観について話したんです。

そしたら理系の学生から「科学は宗教になりえますか」と質問がきた。そこで考えたのですが、科学はある種すでに宗教になっているんですよね。科学が発展すれば発展するほど僕たちはいい未来を迎えることができる」という考え方、これはある意味信仰なんですね。果たして宗教がどう変わるかは今の時点ではわかりませんが、神はなんだという大きな問題はありますよね。

“共生”と“根絶”のジレンマ

国立環境研究所の五箇公一氏は生物学者ならでは視点で、環境保全の立場から、今回のパンデミックをこう語っています。

五箇 生物学の観点からいえば、こういった新興感染症の起源はすべて野生生物の中にあります。特に1970年代以降、生態系の破壊により、今まで人類史上なかったようなウイルスがどんどんジャングルの奥地から湧いてきている。


今回のパンデミックはさらにグローバル化という経済の加速によってさらに拡大している状況です。最終的には、このウイルスは根絶させないといけないものです。常に人間の経済的な欲求や利己的な欲求に乗っかって生き続けるウイルスですから、世界統一的に0にしない限りはいつまでもくすぶり続ける。

さらに進化して強くなっていく可能性もある。一部で「ウイルスと共生」という話も出ていますが、それをやったら永遠にこのウイルスの無間地獄から抜け出せませんこれを機に利他的なヒューマニズムや自然共生社会について考えるべきだと思っています。

(追記)

番組のurlなのですが、NewsPicksの有料会員でないと再生はできないようです。
https://newspicks.com/live-movie/705/

映像がなくても内容を理解するには全く支障はありません。約1.5時間と長いですが、出演者たちの話は非常に面白かったです。
https://drive.google.com/file/d/1IDIZLWVH-0zPD5FiOuSnpRupoOSP8EAp/view?usp=sharing