エーガ愛好会 (158)  アウトロー    (34 小泉幾多郎)

クリント・イーストウッド監督主演の西部劇。
冒頭父親であるジョージ―・ウエルス(イーストウッド)と息子が楽しそうに農作業に励み、自宅から母親の呼ぶ声が聞こえると銃声がとどろき家は焼かれ、母と息子は殺され、父親も大怪我を負う。南北戦争末期から、北軍の名を借りたならず者集団が略奪を繰り返していたらしい。この父親、もともと銃の腕はあったのか訓練したのか、復讐の鬼となって南軍ゲリラ部隊に所属し活躍する。戦争が終わり、南軍は北軍に投降するが、ジョージ―だけは従わない。こんなことがあったのは信じられないが、北軍は約束を無視し、投降した南軍を皆殺しにしてしまう。その場に駆け付けたジョージ―が負傷した若者(サム・ボトムズ)を助け、復讐の旅が始まる。

南北戦争終結のミズーリからテキサスへ。北軍から逃げながらも、西部の景観を堪能しながらの動きは、晴れ晴れとした気分を 満喫させてくれる。最初にチェロキー族の元首長(チーフ・ダン・ジョージ)と親しくなるが、老人の息子として生まれ直していくような感情を覚える。この原作がネイティブアメリカンのフォレスト・カーターということも、イーストウッドの先見の明が窺われる。この元首長、インディアン女、廃れた街の人々、老人の女性とその娘(サンドラ・ブロック)等様々な人々との絆が深まっていく。最大の絆は、白人に騙され続けられた先住民コマンチ族との対立もあるが、酋長テン・ベアーズ(ウイル・サンプソン)は、ジョージ―の心からの言葉を信じ、平和に共生を誓うことになるところは、「ダンス・ウイズ・ウルブス1990」以前に、インディアンとの平和的接触による解決が示されているようだ。

アウトロー、ジョージー・ウエルズであるが、どうやらアウトローは一人ではない。旅で出会った人全てが、アウトロー。法の下で保護を受けない人達を指しているようだ。差別、偏見を持たない男として描かれている。何故かいくら撃たれてっも彼には弾が当たらない。仲間の素人の撃つ弾は悪人連中にはよく当たる。ということで復讐は成功する。最後ジョージ―・ウエルズは死んだことにされ、賞金リストから外される。家族を失った復讐鬼が新たな家族を得、平和と共存と融和の中に生活していくハッピーエンド