コロナはこれからどうなっていくだろうか  (42 河瀬斌)

先が見えてこないコロナ問題について医療の現場からドクター河瀬の展望を書いて頂いた。船曳先輩からの貴重な情報と合わせて、われわれなりに正しい認識を持つようにしたいものだ。
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1)いつになったらコロナは終わる?
昨年の今頃、ある雑誌に全部で5年ほどかかるだろう、という文を投稿させていただきました。その理由の一つは、過去のペスト、コレラなどの世界の疫病の歴史で、感染が収束するまで5年ほど要していること、今回のウイルスは変異を繰り返すのでその位かかるだろう、という予測などから得たものです。Pandemicになってすでに3年経過しておりますが、あと2年ほど必要でしょう。
2)変異はどうして起こるのか?
ウイルスが無数の分裂増殖を繰り返す中で、多くの遺伝子の間違いが起こるのが変異です。感染が盛んにできる環境では変異も旺盛に起こっているのです。その大部分は消滅してしまう変異ですが、ウイルスの生育に都合の良い遺伝子変異が起こった場合、それらが生き延びて新しいウイルスが増殖する(現在のオミクロンBA2, XEなど)。
3)ワクチンが効かなくなる変異が起こらないか?
変異はコロナをまるで変幻自在の妖術者のように仕立てており、いつかワクチンも効かないウイルスが出現するかもしれませんね。
しかし専門家の意見(大阪大学免疫学、宮坂昌之先生)ではコロナウィルスにワクチンや抗体が効かなくなるような変異は起こらないだろう、ということですので、安心してください。
4)中国の厳しい「ゼロコロナ政策」でもなぜ感染が防げない?
それはウイルスが他に感染しやすい潜伏期間とPCRが陽性になる時期にずれ(遅れ)があるからです。すなわち1回のPCR検査では陽性かどうかわからないことも多いのです。PCRは繰り返せばウイルスの存在を99.9%知ると言われています。しかしそれでも100%ではないので、上海のような大きな人口の都市では検査の漏れが生じ、ロックダウンしてもオミクロンなどの感染力が強い場合は偽陰性となった人から食料配給や監視役などの業務を介して感染を広げてしまうのでしょう。
5)それでは今後世界はどうなる?
免疫学では「感染力の強いウイルスほど自滅するのも早い」と言われています。現在のオミクロン変異株は感染がどんどん早まっていますので、いずれウイルスの自滅も早まるでしょう。それまでワクチンを定期的に打ち、重症化を防いでいれば、いずれこの疫病は感染しても無症状か、罹っても軽くなり、インフルエンザ程度の疾患になってゆくでしょう。またワクチンを打たない若者でも繰り返し感染して自己免疫を獲得( I 型インターフェロンが作られる)してゆくでしょう(ただしその過程で後遺症を残すこともあります)。現に欧米ではそうなりつつあり、予防マスクもしないようですので、日本も今後は国境での規制が次第に緩和されると思います。
 ただし問題はワクチンのできない途上国で、そこから新しい変異株が輸入されることが問題です。結果として世界中ではCOVID-19ウイルスはなかなか完全には消滅しないため、急にワクチンをやめることにはならないことでしょう。ですからワクチンは一時的と考えず、今後は国産ワクチンの増産に力を入れるべきでしょう。個人カードの入力項目に基礎疾患やワクチン接種の項目を加えることも必要でしょう。またコロナ以前は健康保険制度の維持のために病院を潰すことばかり考えていた政府は、非常時の医療体制がいかに重要で早急には感染ベッドを増強できないことが身に染みたことでしょう。
6)コロナの長期流行が影響していること:
教育と文化:まず第一に影響を受けたのは学生の生活でしょう。友人ができにくかった、授業が十分でなかった、留学のチャンスを奪われたことなどは若者の将来にわたってその生き方に陰を落とすでしょう。また古き良き日本の伝統文化、祭、花火、舞踊、音楽などは今後保護しないと衰退の一歩を辿りますので、皆で支える必要があります。
働き方改革:いろいろな職種でリモートワークが進んでいます。最近の学会もハイブリッドといって現地参加だけでなく、学会発表を自宅のパソコンで見て質問もできる、という時代になりました。これによって自由な時間が増えたため、自宅の環境を見直すようになりました。帰宅途中で飲めないので自宅で飲む習慣がついたこと、アウトドアの指向など、コロナは今までの日本人の生活習慣を変えていますので、これらはコロナによる良い面の影響と言えるでしょう。