エーガ愛好会  (106) イミテーション・ゲーム (42 保屋野伸)

掲題、「エニグマ」という文字に惹かれて初めて観ました。

第二次世界大戦下、ナチの解読不能と思われた暗号「エニグマ」解読に成功した、アラン・チューリングの物語です。この「天才数学者」による解読過程は、難しすぎて分りませんが、世の中には信じられないほど頭の良い人物が存在するのですね。ご承知かと思いますが、この解読に使った「チューリングマシーン」がコンピューターの原型と云われています。我々が、多大な恩恵を被っているコンピューターはチューリングやフォン・ノイマンのような桁外れの天才達によって生み出されたわけです。

ちなみに、現代の暗号技術は、最先端の数学を利用し、100%解読不能ということですが、凡人にはさっぱり分りません。なお、チューリングは戦後、当時許されなかった「同性愛」で逮捕され、数年後40代の若さで自殺しました。天才の宿命なのかもしれません。しかし、彼の解読のお陰で、終戦が2年早まり、1400万人の命を救った、とも云われています。

最後に、先日話題になった英国女優「キーラ・ナイトレイ」も出演していました。・・・美人女優というより演技派女優という印象でした。

(安田)アラン・チューリングは当時法的に許されなかった同性愛で「風俗壊乱罪」宣告を受け(1952年)、刑務所に収監される代わりに同性愛を「治療」するための化学療法を処分として受け入れたが、1954年には青酸カリで自殺した。41歳であった。その時好きなリンゴに青酸カリを塗り食べたという。映画の場面で彼が仲間にリンゴを振舞うシーンがあるが、自殺の事実を知れば意味深なシーンだったと思う。アップル・コンピューターの創立者スティーヴ・ジョブはアラン・チューリングの天才と業績を尊敬していて、アランが死に臨んで最期に食べたとされる彼の好きなリンゴに因み、社名とロゴマークをリンゴ(アップル)にしたと伝えられている。イギリスで同性愛が罪でなくなるのは1960年代、スコットランドやアイルランドではもっと遅く1980年代であった。第二次世界大戦の陰のヒーロー「計算機科学の父」と言われたアラン・チューリングの恩赦は没後59年経った2013年12月24日(クリスマス・イヴの日)に確定した。英国の同性愛者数万人に死後恩赦「チューリング法」が施行されたのは2017年2月1日であった。つい最近であった歴史的事実には驚くばかりだ。戦後チューリングが勤務したマンチェスター大学のある市内には彼の銅像が建てられている。

難攻不落ともみえたエニグマの解読が、ドイツ軍の通信を傍受していて女性職員の会話に決まって特定の言葉が含まれていることに気づく。毎朝6時に発せられる最初の常套句であった「天気」「ハイル・ヒトラー」の単語を拾うように装置を調整すると即座に暗号の解読に成功したという。暗号解読に与えられた研究猶予期間1カ月の期限がせまる間一髪の解読であった。

映画の中で印象深かったのは、エニグマを遂に解読してドイツ軍のUボートが北海を航行中のイギリス船団を襲撃する計画を察知する。アランの研究仲間の一人の兄がその船団で航行中であることを知ると、彼はアランにUボートの襲撃計画を船団に知らせ難を逃れることを強く懇願する。アランはこれを苦渋の決断を下して拒絶する。「解読された通信に逐一反応してしまっては、ドイツ軍にエニグマが解読されたと悟られ暗号変換を実施されれば、その後の戦闘における成果を台無しにしかねない」からだと無念ながら思い留まり、仲間の兄は犠牲になったのだった。結果として、終戦が2年早まり1,400万人の命が救われたのだ。この事実は戦後長い間公開されていなくて、秘密扱いにされていたのである.

(菅原)真夜中の戯言。話しは知っていましたが、映画は見ておりません。でもこのチューリングって言う人が開発した暗号は誰にも解けないものなんでしょう、本人にとっても。

(小田)シャーロックを観てカンバーバッチが好きになり、この映画も以前観ておりましたが、今回、安田様の解説等でりんごを皆に配る場面の意味とスティーブン·ジョブスとの関連等良く分かりました。
わが家は切ったりんごをいつもガラスの密閉容器に入れておきますが、ちょっとさみしいので、iPodに付いていた白いアップルのシールを張ってあります。たしかに、りんごの端がかじってありますね。

又キーラ・ナイトレイが出ていたことも発見しました。彼女は私の好きな「ベッカムに恋して」や「プライドと偏見」にも出演しており、「ラブ·アクチュアリー」も楽しみです。確かにストーリーが「博士と彼女のセオリー」に似ていますね。エディ·レッドメインも好きで「ファンタスティック·ビースト」は映画館に見に行ってしまいました。皆様色々おっしゃっていましたが映画はやはり、単純に楽しめる物が良いですね。

(小泉)「イミテーション・ゲーム」何の気なしに見たら、引き込まれ最後まで観てしまいました。保屋野、安田、小田さんから的を得た感想が送られ、一層内容がよく分かりました。アカデミー賞の脚色賞にグレアム・ムーアが受賞のほか、作品・監督・主演男優・助演女優・編集・作曲・美術各賞がノミネートされたとのこと。アカデミー賞のほか、ゴールデングラブ賞やら数々の賞にノミネートや受賞したことからも力作に違いなかったようです。表向きは、英国の数学者が、ナチスの暗号エニグマを解読しようと奮闘するミステリーが、伝記、サスペンス、社会派、人間ドラマという風に、光が乱反射するように、変わっていく様が、脚本賞受賞の所以でしょうか。先日観た「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のベネディクト・カンバーバッチが、巨大なる謎に挑む究明者にして、自分自身も謎に包まれた人と違うところに悩み続けてきた同性愛の人物を果敢に映し出していた。現代の美女キーラ・ナイトレイが、その他人と協調することを嫌う人物を周囲と摩擦を起こさぬよう通訳を買って出る役柄で、暗号解読の一役を担った場面は救いだった。それにしても、この偉業が50年以上も隠されていたとは信じられない事実ですね。

(編集子)”エニグマ” の解読という事実を扱った小説はいくつか読んだ記憶があるし、映画でもこの作品のほかにサイドストーリー的に出てきたものもあった。安田君が書いている襲撃計画のほかに、同様の理由でチャーチルが事前に知っていたのに空襲を許したという史実があるようだ。ウイキペディアによると:

この空襲について、イギリス政府は事前にドイツ軍エニグマ暗号を解読し察知しながら、その後の迎撃戦を有利に運ぶため、コヴェントリー爆撃がわかっていたにもかかわらず故意に放置したとする陰謀論があり、「小の虫を殺し大の虫を生かす」類の説話としてしばしば語られる。しかしBBCによれば、真相はイギリスはエニグマ暗号自体の解読には成功したが電文中で標的は「Korn」とコードネームで書かれていたために、それがすなわちコヴェントリーであるということまではわからなかったとされる

破壊された大聖堂
工業都市であったため、第二次世界大戦中の1940年11月14日にはナチス・ドイツによる爆撃「Coventry Blitz」の標的となり、コヴェントリー大聖堂英語版を含む市の中心の大部分が破壊された。

 

このあたりはアングロサクソン人種の持つ冷酷なまでの論理性に心冷える感じがする。その意味では主演のカンパ―バッチというのはまさに当を得た配役だったのではないか。先週来、パワーオブザドッグが話題になっているが、はっきり言って小生の好きなタイプではないけれど。