ジントニックのことです  川島恭子 (多摩市在住友人)

ブログで拝見するとジントニックがお好きな方が多いようですので、ご自分でお作りになる方へのアドバイスと多少のトリヴィアをお届けします。

ジンはいろいろなものがありますが(中司さんがスコットランドのバーで、日本にはないだろうが、本場はこれよ、と言われたと書かれていました)、”通” が飲む、とされているのはヘンドリックスというブランドです。一般のお店では入手が難しいので、アマゾンか楽天での購入になると思います。トニックウオータには、シュエップスが良いと思います。ただ日本で販売されているのトニックウォーターには、イギリスとは異なりキニーネが入っていないために 多少 味が違います(注)。

作り方のコツ (バーテンダーとして名高い毛利さん直伝です):
グラスに氷を入れ ジンを入れたら混ぜてジンを冷やす( アンノーンではジンをマイナス15度の冷凍庫に入れ冷やして、氷が溶けないようにしています)。
ライムは軽く絞ります(キツく絞ると皮や内側の袋からの苦味がでます)。
トニックウォーターを注ぐ際は、氷を避けるように静かに入れ、マドラーで下から上へ氷を持ち上げるようにして ジンとトニックウォーターを馴染ませます。何度もクルクル混ぜると炭酸が抜けてしまいます。また氷に当てる事でも炭酸がとびますので注意してください。
 なお、アンノーンのジントニックは、甘過ぎないようにトニックウォーター8割 ソーダ2割で作っています。
ご家庭でも、美味しく作っていただきたいですが、バーでは氷が硬く溶けにくいように手をかけていますので、ご興味を持っていただいた方が、いつかバー(できればわたくしの!)で試して比べてみたりしていただければ嬉しいです。

(注)トニックウオータ本来の含有成分はキニーネといって南米原産の植物樹皮から取れるアルカロイドの一種ですが、抗マラリア薬として効果が認められる反面、多量に取ると副作用も多いと思われた時期があり、日本では輸入禁止になった時期があります。そのため国内ブランドでは香料で香りと苦味をつけたキニーネを含有しないトニックウォーター?が主流になりました。

(編集子)川島さんは多摩市在住、京王線聖蹟桜ケ丘駅から3分のところにあるオーセンティックバー ”アンノーン” のオーナーである。小生は昭和42年、当時まだ南多摩郡多摩町、と呼ばれた同地に住むようになったが ”ふるさと” というものを持たない自分にこの地がまさに自分の故郷、と思えるようになったころ、バー UNKNOWN がオープンした。以後今日までの付き合いである。長男は文字通り多摩生まれの多摩育ちだし、いまでも床屋(こういう名前もなくなるかもしれないが)は桜ケ丘のなじみまで足を延ばし、オーナーの親子三代との付き合いを楽しんでいて、多摩市、というか、桜ケ丘、は、ほかにも何かと縁が切れない、懐かしい場所である。

現在の京王線の駅名はもともと現地の地番どおり関戸と呼ばれたが、同社が住宅地を造成して現在の名前に変更されたものである。小生の現住所もまた、これに先立って同社が開発した住宅地の一角で、駅名もこの開発にともなって旧名金子から現在のつつじが丘、へ変更された。考えてみると偶然なのか京王電鉄に因縁があるのか、面白い。KWV32年卒の三枝先輩が同社社長として敏腕を振るわれていたころ、ビジネス上でのお付き合いもあった。京王さんは小生も極微細株主であるので事業報告を頂戴しているが、不動産事業部門も快調であり、そのうち、またどっかに住宅地を作るだろう。もしまたまた小生が引っ越すとすると、その駅名は今度は 落ち葉が丘、もしれない。

(蛇足)日本でハードボイルド小説隆盛のきっかけを作ったとされる作家群のひとり北方謙三に ”ブラディドールシリーズ” という作品がある。ブラディドール、という名前のバーに集まる、それぞれなにか翳を持った人物を主人公にしたストーリーが一人一作で描かれるが、そのひとりが偶然にブラディドールに立ち寄り、ジントニックを注文する場面がある。

”ジンはなににしますか”と聞かれて、”ビーフイータだけがジンさ”と気障に答え、”トニックウオータとソーダで割ってくれ” と注文を付ける。北方の作品には好きなものが多いが、著者が博識を見せびらかすシーンが結構あって、時として辟易することがあるけれども、このジントニック論議は結構気に入っている。ジャック・ヒギンズのシリーズに登場する殺し屋のショーン・ディロンはクルーグのノンビンテージしか飲まないとか、有名なところでは007の ”シェイクしたマティ二” とかいろいろあって、たぶんそのようなこだわりを持つ人間のほうがストイックに任務を果たす、ということの暗示なのかもしれない。小生にもそれなりにこだわりはあるが、およそストイックとはかけ離れているので、この説は成り立たないようにも思えるのだが。