古き良き時代のエーガ  (4)  ファンタジア   (普通部OB 船津於菟彦)

なんと」

日本公開は1955年9月となっているので高校の時に有楽座に見に行ったはずだが、そのときの入場券が出てきた。公開されて直ぐ行っているようで、なんと170円!

当日のパンフレット

 

出てきた入場券

『ファンタジア』(原題: Fantasia)は、監督はベン・シャープスティーン。1940年11月13日封切。ディズニー長編アニメーション第3作であり、史上初のステレオ音声方式による映画作品である。何しろ有楽座の音響設備が凄かった。4本のサウンドトラックからスピーカーを沢山付けて劇場中から音が出たし、スクリーも凄い。タシンスキー・レンズと称するレンズでシネマスコープ・サイズ2.55対1から1.60対1まで自由に変化出来る特殊方式で上映され、有楽座の舞台一面がスクリーンに成りグアーット画面が広がったりするので、これには大変驚いた。1940年にpersonal computerも無く、録音もレコード時代に、フィルムの光学録音を駆使したものである。最新の映画・映像・音響の各技術に関心が深いウォルト・ディズニーは、ストコフスキーから米ベル研究所に於いて自らの指揮で1932年にステレオ録音を行ったという話を聞いた(この時の米ベル研究所の録音が、現存する世界最古のステレオ録音である)。そこでディズニーはただちに映画『ファンタジア』をステレオ音響で制作することに決めたそうだ。
描き上げられた原画100万枚、録音テープ(光学録音フィルム)の長さ42万フィート(そのうち映画の中で実際に使用されたのは1万8千フィート)、制作期間3年と前例のないスケールでの製作となった。コンピュータなど無い時代に人力だけで制作されたアニメーション作品として、史上最も手間をかけて作られた作品であると思われる。そのため制作に掛けた経費があまりにも大きかったために、リバイバル上映を繰り返して1970年代になるまでは製作に投じた資金を回収できなかったと言われている。

さて、物語だが、ストコフスキーとディズニーが色々工夫して原曲には忠実では無く、いろいろ変わっているが、映画と言うより音楽を聴いている感じが強い。
また、日本は何も無い時代に超豪華な見世物を見た感じで今でもありありと各々シーンを覚えて居る。特に途中で休憩が入り、天使が幕を閉めたりして、指揮者ストコフスキーが登場し、アニメのミッキー・マウスと握手するというシーンは何とも面白い。

1:「トッカータとフーガ ニ短調」(9:22) – J.S.バッハ
「抽象的な音楽もやってみよう」と提案したことによる。そのため抽象画で作られている。

 

 

2:組曲「くるみ割り人形」 – チャイコフスキー14:12)

 

 

 

3:「魔法使いの弟子」 – デュカス(9:17)

 

4:「春の祭典」- ストラヴィンスキー(22:28)
舞台を人類時代の原始時代から、地球創世期~恐竜の時代に変更している。

 

 

5:「田園交響曲」 – ベートーヴェン(22:00)
◦ 舞台をギリシャ神話の世界に求めている
6:「時の踊り」 – ポンキエッリ(12:13)
◦ 担当者は研究のために動物園やバレエ公演に頻繁に通ったり、バレリーナの映像を参考にした上で製作された。
7:「はげ山の一夜」 – ムソルグスキー(7:25)
8:「アヴェ・マリア」 – シューベルト(6:27)

 7と8はアニメーションがつなぎ合わされ(「禿山の一夜」の終わりの音と、「アヴェ・マリア」の最初の音が偶然一緒だった)、「光と闇」という壮大なラストを表現している。今考えると1940年。80年も前にこんな映画が作られたとは驚きの一言。カタログと入場券は今も大事に保管している。