3月15日‾17日9時からBSPで、フレッド・アステアの映画「足ながおじさん1955」「バンドワゴン1953」「イースターパレード1948」が連続放映された。
「踊る大紐育1948」「巴里のアメリカ人1951」 「雨に唄えば1952」等MGMが同じ製作者アーサー・フリード、主演ジーン・ケリーで、歌と踊りの豪華版が製作された頃。1930年代ジンジャー・ロジャースと共に、ミュージカル黄金期を築いたフレッド・アステアは、「ブルー・スカイ1946」を名残に引退表明していたが、カムバックを果たし、その後ジーン・ケリーに劣らぬ活躍を果たす糸口となったと言える三作だった。
「イースターパレード Easter Parade 1948」
ジーン・ケリー主演で撮影スタートしたが、ケリーが足首を骨折したことで、引退宣言をしていたフレッド・アステアに交代となり、監督もヴィンセント・ミネリが、当時の妻ジュディ・ガーランドとの個人的問題でチャールズ・ウオルターズに代わったといわくつきの作品。
物語は、アステアの以前からのパートナーであるアン・ミラーが、フォリーズに移籍してしまい、相手役に、新人ジュディ・ガーランドを発掘、訓練しながらのイースターの前日から翌年のイースターまでのショービジネスの物語。この間、アーヴィング・バーリンの17曲が歌と踊りで画面を彩る。どれも素晴らしいが、矢張り舞台上での歌やダンスが印象に残る。まずは、前相手役のアン・ミラーはタップダンスの名手と言われるだけあって、黒と黄色の衣装でShakingTheBluesAwayに乗って踊りまくる目の覚めるようなタップダンス。アステアの踊りでは、バックグラウンド・コーラスが普通の速さで踊る中で、スローモーションで、ステッキを持って見せる躍動感溢れる踊りSteppingOutWithMyBaby。
アステアとジュディが、みすぼらしい浮浪者に扮して気取って踊るA Couple of Swellsが圧巻で最後を締める。新カップルによる成功を祝うパーティでの旧カップルによるItOnlyHappensWhenIDanceWithYouの踊りもあり、アステアとジュディが、EasterParadeを唄いながらパレードするところで終演。
ジョニー・グリーンがアカデミーミュージカル音楽賞受賞。
「バンドワゴン The Band Wagon 1953」
競売場で過去には有名だった音楽映画スターのトニー・ハンター(フレッド・アステア扮する)が過去愛用のトップハットとステッキが5ドルから売り出すもダダでも買い手がつかない。その後ニューヨーク行きの列車でも二人の乗客にくさらされ、到着の駅では新聞記者が大勢で、大歓迎かと思いきや、エヴァ・ガードナー(特別出演)への出迎えだった。駅での黒人の靴磨きを相手に踊るシーン
AShineOnYourShoesから始まる。アステアの相手役は純バレエ畑のシド・チャリシーが選ばれ、当初肌が合わないとか背丈が合わないとか、いざこざがあったものの、セントラルパークでのDancing in theDarkでハーモニーを生み出す。アステアは、二人のブロードウエイ作家ナネット・ファブレイとオスカー・レヴァントのミュージカルコメディで再起を図るが、ジャック・ブキャナン演出のファウスト芸術的現代版が大失敗。
若い座員たちとレヴァントのピアノ伴奏で、I Love Louisa等を唄い、内容を
変えて、ブロードウエイでの成功を勝ち取るべく地方巡業へ。ピアニスト レヴァントのピアノはこの伴奏のみ。何か弾いてもらいたかった。フィラデルフィア、ボストン、ワシントン、ボルティモアと巡業。巡業先毎に、ショウの舞台が紹介される。作曲はアーサー・シュワルツ。
フィラデルフィアではチャリシーが唄い踊るNewSun in theSky。ボストンではアステアとブキャナンが正装で踊るI Guess I’ll Have to ChangeMyPlan。ワシントンではファブレイがコーラスをバックに唄うLouisianaHayRide。そしてボルティモアではアステア、ファブレイ、ブキャナンがベビー服で膝をついて踊るTripletsでブロードウエイ凱旋となる。TheGirlHunt はアステアとチャリシーによる最大の呼び物、ミッキー・スピレーンの探偵小説のパロディ化した場面が進行、マイケル・キッドの振り付けはメカニックでシャープ。新しいショウは成功し再出発となった。
「足ながおじさん Daddy Long Legs 1955」
ジーン・ウエブスター原作の映画化は、1919年と1931年と二度あったが、これはジーン・ネグレスコ監督によるミュージカル。ミュージカル音楽賞にアルフレッド・ニューマン、歌曲賞にジョニー・マーサー、美術監督賞にライル・ウイラー他3名がアカデミー賞の候補に上ったが受賞はならず。
フレッド・アステアとレスリー・キャロン主演。レスリーが、想像して踊るパリ、香港、リオを背景としたモダン・バレーの振付けはロラン・プティ。金持ちの実業家が毎月手紙を書くことを条件に、孤児の少女の後見人となり、大学進学のために奨学金を授ける物語。アステア扮する富豪ジャーヴィス・ペンドルトン三世は、ジャズ狂の伊達男、冒頭から自宅でドラムを叩く、History of the Beat。主題歌はDreamを含め10曲。主たるナンバーは、大学のダンスパーティでのSluefootでアステアの華麗な足さばき。レスリーをニューヨーク見物に招待し、テラスで踊るSomethings GottaGive。Dreamは二人が高層ビルから下界を眺めるシーンとラストのダンスシーン。
撮影時、アステアは当時46歳の愛妻フィリスを病気で亡くしたが、周囲に励まされ、降板せず、役者として当たり前とはいえ、画面では、そんなことは何ら感じさせない。
関連