ミス冒愛好会 (4)  アガサ・クリスティーのこと (普通部OB 菅原勲)

クリスティーのかの有名な、いや、悪名高き「アクロイド殺し」ですが、小生なんの事前の予備知識もなく最後まで読みました。しかし、最後の最後までクリスティーにまんまと騙くらかされたこと、冗談じゃねーよ、こんなことってあるかよと無性に腹が立ったこと、この両者がない交ぜになって、暫くクリスティーから遠ざかりました。この時の探偵が、エルキュール・ポワロです。

コナン・ドイルのシャーロック・ホームズにしろ、エラリー・クイーンのドルーリー・レインにしろ、その中心となる探偵は、作家と同国人の場合が圧倒的に多いのはご存知の通りです。クリスティーの場合も、ポワロ以外では、ミス・ジェイン・マープル、トミーとタペンス夫妻、パーカー・パインなど、その全てが英国人です。ただし、以下の如き例外もあります。英国の作家、サックス・ローマーの中国人探偵、怪人フー・マンチュー博士、もう一人、忘れていましたが、米国の作家、エドガー・アラン・ポーの探偵はフランス人のオーギュスト・デュパンでした。

それでは、何故、クリステイーは、英国人ではなく、英国から見た外国、それも、フランス、ドイツ、イタリアなどの大国ではなく、小国のベルギー人を探偵にしたのでしょうか。アーサー・ヘイスティングスの知り合いだったと言うことになっていますが、その知り合いの中から、何故、ベルギー人でなければならなかったんでしょうか。逆に、どうしてクリスティーは、英国人を探偵にしなかったんでしょうか(全く関係ありませんが、英国には極めて魅力的な探偵、じゃない刑事フォイルがいたじゃないですか)。このことについて、クリスティーは、作品の中とか、或いは、自身で説明するとかしてるんでしょうか。クリスティーの失踪事件以上に、最大の謎ではないかと思っています。しかし、小生、クリスティーの全てを知っている専門家ではありません。従って、クリスティーが、男性の探偵を英国人ではなくベルギー人にした理由をご存知の方があったら、是非、ご教示ください。

蛇足ですが、小生、クリスティーは、極めて面白い探偵小説作家であると同時に、極めて優秀な風俗小説作家だとも思っています。ここの風俗は、風俗営業などのふしだらな意味ではなく、世相とか普通の風俗とかのことです。

(編集子)菅原君提起の最後のポイントについて。

クリスティの書いた,非推理小説はについてだが、ワイフがだいぶ前になるが、春にして君を離れ (Absent in the spring )を見つけていい本だ、と言っている。この本について、ふたりして一致したのは、翻訳タイトルの素晴らしさだった。なんでもかんでも XXの決闘 だとか YYYの最後 なんかにして涼しい顔をしているエーガ屋には見習ってもらいたいもんだ。

 

なお、この本の解説によると、クリスティはこの菅原定義による風俗小説を書くときはメアリ・ウエストマコットというペンネームを使っていたとのことで、全部で6作品、あるそうだ。以下、例によってググリングの結果・・・・

 

なお、スガチューが怒っている理由は推理小説かくあるべし、とヴァン・ダインなどが出した定義に沿っていない、という正統的推理小説ファンとして正しい態度。その定義を書いてしまうわけにはいかないのが残念だが(ネタが割れてしまうから)ただ編集子にとってはダイン説に関係なく、ミステリの面白さを教えてくれた本、として貴重な存在なのだがね。