「昼下がりの情事」初めて観ました。ゲーリークーパー、初見参ですね。ちょっと年食ってますが・・・
タイトルは例によって、ちょっと違和感がありますが、この映画はやはり、ロマンチックコメディーの傑作といって良いのでは。ヘプバーンとクーパー、はもちろん、脇役のモーリス・シュバリエとの競演は、ユーモアたっぷりのセリフを含めて大いに楽しめました。そして、4人の雇われ楽団が演奏する、テーマ曲「魅惑のワルツ」も(ちょっと、しつこかったけど)この映画の主役の一つでしょう。
ただ、大富豪のプレイボーイという役は、ケーリー・グラントとユル・ブリンナーに断られた経緯があったようですが、確かに、クーパーより、私は、ブリンナーの方が適役だったような気がします。
さて、ビリー・ワイルダーという監督は、この映画を始め、、ヘプバーン(麗しのサブリナ)シャーリー・マクレーン(アパートの鍵貸します)マリリン・モンロー(7年目の浮気・お熱いのがお好き)等キュート美人が好きだったようですが、確かに、お得意のロマンティックコメディーにバーグマンみたいな正統派美人は似合いませんね。最後に、ネットでは、ラストシーンに賛否両論があるようですが、私は「列車に乗らないで別れる」方に1票を投じます?
(44 安田)
探偵役のモーリス・シュバリエがヴァンドーム広場の真ん中の、ナポレオンがアウステルリッツ戦勝記念に建てさせた円柱の上からリッツ・ホテルの部屋を双眼鏡で覗き見するシーンから映画は始まる。円柱の頂きにはナポレオン像、円柱には戦争のレリーフが彫られている。映画舞台のゲーリー・クーパーの部屋から窓越しに円柱が常に見えている。映画の舞台は花の都パリの中心の一等地だと訴えているかのよう。このリッツホテルのシーンを見ると思い出すのは、この映画からちょうど40年後の1997年8月、ホテルに宿泊後パパラッチに追っかけられセーヌ河右岸沿いの道路で交通事故で亡くなったダイアナ妃の悲劇だ。妃が出入りした映画と同じ玄関前の光景を思い出す。
舞台となったリッツホテルは、オードリー・ヘップバーンがピーター・オトウールと共演した「おしゃれ泥棒」の舞台にもなり、ココ・シャネルやヘミングウェイが定宿にした欧米人であれば知らぬ人がいない程のパリでは3指に入る高級ホテル。映画の格付けも重要視したのであろう。
映画当時ヘップバーンは28歳、「ローマの休日」でグレゴリー・ペック、「麗しのサブリナ」ではハンフリー・ボガート+ウイリアム・ホールデン、「パリの恋人たち」ではフレッド・アステアと共演、彼女の映画キャリアの最盛期にあたる作品かと思う。服飾デザイナー・ジバンシーの専属となり映画でも洗練された服装が目立っていた(貼付写真参照)。相手役ゲーリー・クーパーは水も滴る男の中の男。彼は当時56歳、死の4年前の作品。「モロッコ」「ヨーク軍曹」「打撃王」「誰が為に鐘は鳴る」のクーパーを知る人にとってはその老いは隠せず、言い分があるファンがいてもおかしくはない。ただし、ヘップバーンとの28歳の年令差を乗り越えて初老の紳士役を色気も失わず魅力タップリに演じていたと思う。洋服姿も格好いい。「脱出」(To Have and Not Have) で共演した25歳違いのハンフリー・ボガート45歳、ローレン・バコール20歳の組み合わせと双璧をなす初老の紳士と若い美女の共演映画だと言って良いだろう。音楽も素晴らしい「「シャレード」でのケーリー・グラントとの共演を観るのが楽しみだ。
父親役のフランスの名優モーリス・シュバリエのいかにも家父長然とした落ち着きのある演技が、一般には不釣り合いな年齢の男女の組み合わせの恋愛物語に潤滑油的役目を見事に果たしていた。ビリー・ワイルダーお得意の軽妙なロマンチック・コメディー映画だが、ユーモアとウイットに富んだ会話が売りとなれば女優はヘップバーン、モンロー、マクレーンは適役だろう。エリザベス・テーラー、バーグマン、デボラ・カーでは似合わないと思う。
最後にラストシーンの結末だが、「カサブランカ」のバーグマンとボガートは同行するか否か、「第三の男」のキャロル・リード監督と小説作者グレアム・グリーンの墓場でのジョセフ・コットンとアリダ・ヴァリの異なる別れ方と同様、物議を醸す出発する列車に飛び乗るか否かの結末であった。一般的には20代の女性が60才近い男性に未来を委ねはしないだろうが、映画は夢を売るのが最も大事な役目の一つ。あの終わり方で良かったと思う。
主題曲「魅惑のワルツ」は映画の両輪の一つになっていたのは確かでした。片肘張らずに気楽に楽しめた面白い映画でした。
(編集子)
映画より音楽の方が印象にある一例かな。クーパー、悪くなかったけどなあ。列車に乗らずに別れる、シーンならやっぱり 旅情 のロッサノ・ブラッツイとヘプバーンのほうが小生の趣味。