会社時代米国主張先は事業所があったカリフォルニア、オレゴン、アイダホがほとんどだったが、何回かはそれでも東部にいくこともあった。ボストンにあったメディカル事業のオフィスを訪れたとき、週末を使ってピューリタン上陸の歴史ゆかりの地とかケネディ一家の別荘の所在地ハイアニスポートあたりをドライブしたことがある。そのとき足を延ばして明るい海岸線を走りケープコッドへ行った。およそ ”旅愁” などとは無縁のつもりだったがどういうものか 寂しさ を感じたときの感傷である。
ケープコッド
”ひどい風だね“ 乾いた東部訛りでその男は言った
”地球が丸い、ということを信じるかね?“ と俺は答えた
少し話をしたいと思うような相手だったが
”信じるね。丸いさ” といった男は
少女の肩に手を置き枯草の上を辿っていってしまった
マサチューセッツの夕陽が二人の影を引きずり
重いエンジンの音が俺だけを置きざりにする
振り向いた世界にはなんの色もなかったが
目の前にひろがる大西洋にはそれがあった
むらさき色の、その輝かしい絶望のなかへ
俺は心を投げる