”とにこにい” 抄 (11) 笠ヶ岳

卒業後毎夏、大体4人くらいを誘い合わせて数日間の縦走をやるのが常になっていった、その5回目くらいだったろうか、三俣から笠へ縦走した。毎日好天に恵まれたが、みんな一様に体力の衰えを嘆き始めたころであった。

 

笠ヶ岳

 

暮れ方の飛騨の空の色に冷やされた

この 花崗岩の亀裂。

倦怠を通り越した疲労がしみわたる

この、亀裂。

国境のスカイラインに作られた

この非情なぬくもりに

俺はいつまで身を任せようとするのだ。

夕照はすでに加賀のプラトオに沈殿したというのに?

笠ヶ岳。

貴様のシルエットだけが

実ろうとする夢のむなしさを語りかける。