ジョン・ウエインが唯一アカデミー主演賞を受賞した「勇気ある追跡1969」の続編。「勇気ある追跡」は14歳の少女が相手役だったが、続編はウエインと同年齢の4度アカデミー受賞のキャサリン・ヘプバーン。二人共出演時69歳。
「勇気ある追跡」同様ウエインは大酒飲みの片眼の保安官を演じ、少女の代りに、牧師の父親を殺されたシスターの婦人と先住民の青年を連れて奮闘する。冒頭から西部の山野を馬で走る西部男を雄大な音楽と共に描き、その後も山野から岩壁、渓谷と自然を背景とした描写が多く、楽しめた。
保安官ルースター・コグバーン(ジョン・ウエイン)は、派手に人を殺すために、パーカー判事(ジョン・マッキンタイア)にバッジを取り上げられていたが、偶々悪名高いホーク(リチャード・ジョーダン)をボスとする一味が、ニトログリセリンを運搬していた騎兵隊が殺される事件が勃発し、ルースターに一味の生け捕りを条件に再び保安官の地位を確保することになった。ルースターは、ホーク一味を追ったが既に教会の牧師のほか世話していた先住民も殺されていた。牧師の娘ユーラ(キャサリン・ヘプバーン)と先住民の少年ウルフ(リチャード・ロマンチート)に、どうしても協力したいと懇願され、二人を連れての旅となった。
このウエインとヘプバーンの偏屈男と厳格な女が、敵を追跡中に見せる丁々発止と漫才じみた乙なやり取りやあまりにもストレートな愛の言葉に、老人同志のやり取りとは思えぬ痛快さを感じたこどだった。
3人はホーク一味が騎兵隊から奪ったニトロの入った荷馬車を追跡、大人数いるように見せかけ、一味を混乱させ荷馬車を奪い返す。ユーラが初恋の青年から教わったという射撃の腕前を見せてルースターの信頼を得る。その後3人は一味に追いかけられるようになり、渓谷を筏で遁走を図ることになる。周りを岩石で囲まれた急流の渓谷を筏で走る光景はスリル満点。あのモンロー主演の「帰らざる河1954」を思い起こさせる。追いかけるホーク一味に対し、ルースター側はガトリング銃で応戦する。急流を乗り切ったルースターの筏は、ホーク一味の中にいた過去ルースターの友人だったブリード(アンソニー・ザーブ)の助けも借り、急流を乗り切り川幅の狭まった地点に流れ着き、ニトロの箱を待ち伏せしているホーク一味へ流し、ニトロに発砲し、爆発に巻き込み一味を皆殺しにする。無事町へ戻ったルースターは、パーカー判事から一味を皆殺しにしたことを詰問されるがユーラの弁護により、判事も納得する。お互いに信頼に結ばれるが、年齢からか、一緒になる気はないらしい。
最後のヘプバーンのセリフが良い。「忘れないわ、
その仏頂面や大きな腹や熊のような手、そして輝く瞳、あなたは全男性の誉れ、あなたが友人で誇りに思う。
ジョン・ウエインはこの作品の後、「ラストシューティスト1976」を最後の作品として、1979年に亡くなる。死の4年前の作品だが、画面では、元気溌溂で、とても4年後に亡くなるなんて信じられない。
(編集子)ジョン・ウエインについては今更繰り返すまでもないだろう。よきアメリカ人を代表する存在だったウエインが、トランプ騒動の今、生きていたらなんと言っただろうか。
大根役者だとか言われて役者としての評価はいろいろあるだろうが、彼の死がせまったとき、生涯の相棒だったモーリン・オハラが涙ながらに全国民に訴えたことを編集子は忘れられない。ヒーロー、とはこういう人間のことなのだろう。その実像はこの本にくわしい。
もう一冊、ジャーナリストとしていろいろと物議をかもした人物、広瀬隆の本の狙いは表題とは異なっているのだが、一読に値すると思うので紹介しておく。これにはウエインのみならず、同時代の映画スターを襲った悲劇の詳細が書かれている。

(明日から3日間、本稿は休載します。ご投稿は歓迎ですが、アップはその後になります)
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