尾瀬へ
誰もが憧れ一度は歩きたいと思う尾瀬。私も尾瀬に魅せられ通いつづけてきたひとりです。初夏のミズバショウ、夏のニッコウキスゲ、秋は見渡すかぎりのクサモミジ。春まだ浅い頃、山の鼻でテントを張り至仏山で春スキーを楽しんだことや、いつもの重いザックから解放されサブザックひとつで足どりも軽く三平峠を越えて燧岳の山頂まで一気に駆け登って一休み、そこからまた山の鼻まで跳ぶように歩いて山小屋泊まりなんてこともありました。若き日の思い出です。
忘れてはならないのは、長蔵小屋平野親子三代の自然保護活動です。この活動がなければ、尾瀬ヶ原はダムの底に沈んでいたと思うと頭がさがります。
屋久島の森と山
「屋久島の自然が危ない」 2005年、あの太田五男さんからの依頼で始まった自然保護委員会の屋久島通いは3年間に及びました。残念ながら成果を残すことかなわず幕引になりましたが、これを機に私個人の屋久島通いもはじまりました。
屋久島=縄文杉でだれもが縄文杉をめざします。
「一度登らぬバカ二度登るバカ」は夏の富士登山の騒雑を揶揄(やゆ)した言葉です。縄文杉もそれに近く、神格化され人工の手が入りすぎました。
5月連休明け、屋久島の山々はヤクシマシャクナゲの花の山に変わります。宮之浦岳までは行っても永田岳まで足を延ばす人は多くありません。その先、無人の鹿之沢小屋で一日の疲れを癒し、翌日は海岸線まで丸1日、全面苔や地衣類に被われ点在する屋久杉の巨木に出会える至福の森の中をひたすら下ります。私が歩いたのは花山歩道、尾之間歩道、宮之浦歩道の3本だけでしたが、屋久島にはこんな歩道が随所にあります。みんな、かつて屋久杉を切り出した夢の跡です。
栂(つが)海(み)新道を歩く
新潟県親不知海岸から北アルプス朝日岳(2,418m)に通じる栂海新道は小野健さん率いるサワガニ山岳会により1966年から5年の歳月をかけて切り拓かれました。
学生時代の山仲間3人でこの栂海新道を歩いたのは夏も終わりの 8月末でした。栂池から入って白馬山荘で1泊のあと雪倉岳を経て朝日岳へ、この夏は残雪が多く秋も近いというのに夏の花々に加え秋の花も咲き始めて見事なお花畑が広がっていました。朝日小屋で1泊のあと、早朝小屋を出て、栂海新道の入り口に立つと懸崖を駆け降りるカモシカが出迎えてくれました。栂海新道は全長27km、下り15時間の長丁場で途中避難小屋に1泊、ハードワークの末海抜ゼロメートルの親不知海岸にたどり着いたときの達成感は言葉にならない感動がありました。
天空の楽園羽後朝日岳
道のない山で知られている羽後朝日岳は、いつか行きたい山のひとつでしたがパートナーが必要でした。日本山岳会のOさんと登ったのは、いつの夏だったか忘れましたが、確か部名(へな)垂(たれ)沢の入口にテントを張り、早朝出発、厳しい沢登りと猛烈な籔こぎのあと稜線に飛び出すと、待っていたのはまさに天空の楽園でした。咲き乱れるお花畑の中の踏みあとをたどって山頂へ。誰でも行ける山ではありませんが、花の百名山番外編に選ばれるだけのことはあります。
ブータン北辺の山旅
同じトレッキングルートでもエベレスト街道とは大違いでした。ブータンの北辺チベットとの国境に沿って200キロを20日かけて歩きます。メンバーは自分を含めて日本山岳会員の4人。手許の地図はカトマンズで発行された39万分の1の等高線が入っていないブータン全図だけで、雇ったガイドも10年前に歩いたことがあるとかで何とも頼りになりません。 確実なのは現地の馬方とヤク方の情報だけで、一日の行程も6時間が12時間になったり、4時間が8時間になったりで、標高も地図上の表示とGPSで全く違っていました。突然思ってもみなかった川や無名峰が現れたり、地図と反対方向に川が流れていたりで、未知の世界に分け入った探検隊気分でした。
5,000mを超える峠が幾つもあり、見たことがない高山植物と出会い、圧巻の氷河湖地帯を行き、半ばあきらめていたガンゲルブンスム(7,541m世界未踏の最高峰)の雄姿を眺望できたのは大収穫でした。
カンゲルブンスムとその一帯は神の宿る峰々として保存され、未登の7,000m峰として世界に君臨し続ける。5,040mのテント場を早朝出発、8時35分今日超えるリンチェンゼーラ峠(5,269m)に立つ。 見えた! 谷を隔てた台形の雪嶺の奥に輝いている鋭鋒は紛れもなくカンゲルブンスムだった。その雄姿を眼底に焼き付け、カメラに収めて数分後、その姿はたちまち湧き出した雲の中にかき消されてしまった。
山川はこのシリーズ投稿をこうしめくくっている。
”経営にあまり関係ない話ですが、強いて言えば”夢の実現”ということでしょうか。なんで私がこの年になるまでたまエンパワー、さがみこファーム両社に関わり続けてきたかと問われれば、ひと言「そこに夢があるから」です。
山川は環境保全活動の集大成として、太陽光発電と農業の両立のモデルケースとして、相模原市郊外に さがみこふぁーむ を建設した。夢を追い続け、実現した努力にはただ感服あるのみである。https://sagamicofarm.co.jp で詳細を。




