人口減少・人手不足対応の経済優先移民政策と社会秩序・安全・安寧優先の反移民政策の二律背反の難しい問題は今後の日本社会の模様を大きく左右する可能性が高いと予見される。移民政策を間違えば、基本的にhomogeneous 同種同質な日本は、その国家社会観が揺らぐ方向へ向かう可能もあるやにみえる。
理念・倫理感と世界の潮流に沿った感のあった、前ドイツ首相メルケルが採ったドイツ国内に於ける積極的な移民政策は国内的には大きな問題を惹起して、彼女の政治生命にも大きな負の影響を与えたのは周知の通り。理念や倫理観では測れない社会に及ぼす現実的な負の問題の大きさは予測を遥かに超えていた。
北欧のスエーデンは戦後長らく社会福祉を徹底させ裕福で平和安全な国として知られていた。ところが、国是を積極移民受け入れ政策に転換した結果、今日では犯罪が急増し今や平和で安心安全な国家ではなくなった。.一人当たり人口の銃による殺人事件発生率はヨーロッパ最大(最悪)になった(2020年英国Financial Times統計による).
他にもヨーロッパ域内では、ドイツにおけるトルコ人移民、フランスにおける旧植民地北アフリカイスラム教徒移民による社会の分断と、それがもたらした負の側面は枚挙にいとまがない。スイスの一人当たりGDPは今や日本の3倍近くに達し、世界でも最富裕国の一つだが、スイスへの移民(2024年には17万人、スイス人口は約9百万人)の主たる目的は就労で、その内の95%はEU出身者、すなわち基本的に宗教は同じキリスト教、歴史的にも古代ギリシャ・ローマの何らかの根を共有する可能性も高し、言語にしても、スイスはドイツ語・フランス語・イタリア語を国語とする国で、英語はほぼ国民全員が話す状況下では移民の多くはEU出身者となれば、コミュニケーション・文化・価値観の共有などの面で、社会の中に異物が入り込んできて問題化する可能性は低いと考えるのが妥当だと思える。スイスへの移民出身国は多い順に、イタリア(14%)、ドイツ(13.4%)、ポルトガル(10.6%)、フランス(6.8%)が続く。
スイスは国民皆兵の世界でも数少ない国の一つだ。国民の義務としての兵役を務めるに当たっては、政府と行政は当然ながら、移民としてスイスに居住する者の出自・生活振り・経済状態・税金支払い義務履行・犯罪歴の有無などを詳しく把握しているはずだと推察されます。このことで、社会の分断、犯罪発生を未然に防ぐなどが助長されると思われる。
貧国や発展途上国 ー キリスト教ではない、生活様式・価値観が異なる、経済的に裕福でない ー からの移民には厳しく入国審査を実施しているに違いなく、入り口の段階で、移民がスイス国内で問題の火種になる可能性を排除していると考えられはしないだろうか。

翻って日本の移民政策を観るとき、憂慮せざるを得ない。2024年現在の移民人口は340万人で漸増傾向にある。日本の総人口漸減傾向とは真逆で、一旦移民として日本国内に住み付けば子孫を残し永住する確率が高い。生活習慣・宗教観・文化的価値観の面でhomogenousな社会の構成要素には成りようはなく、社会の分断の火種となる可能性が高い。そして、それは固定化し永続する厄介な問題となっていく可能性大である。今日既に犯罪増加を含め火種が発火していて社会の不安定要素になっている(益々深刻化する可能性大)のはマスコミ等が報せる通りである。将来のより深刻な「覆水盆に返らず」事態を招く移民政策は避けねばならないと思う。かくの如く、軽々しく経済優先の移民増加に舵を切るべきでは決してない、と強く思う。木を見て森を見ない愚を犯さないように。
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