エーガ愛好会 (325)  アパッチ   (34 小泉幾多郎)

「アパッチ1954」は、バート・ランカスターが、ハロルド・ヘクトと独立プロダクションを作り、監督ロバート・アルドリッチと組んで製作主演した西部劇。

偉大なるアパッチの酋長ジェロニモが降伏した1886年に、ランカスター扮するジェロニモの配下のマサイは最後までアパッチの誇りを持つ最後の一人ということで戦い抜く。映画は、アパッチの酋長が降伏したが、マサイが騎兵隊と銃撃戦を交わすものの捕まり、列車の座席に、ジェロニモとマサイが並んで腰掛け、フロリダへ送られることになる場面から始まる。写真班によりシャッターの閃光が切られる度に、アパッチの部下たちが色めき立つところが面白かった。結局は、マサイが隙を逃さず、線路と車輪で手錠を切り、逃げ出すことになる。

これまでの西部劇が大自然の驚異、先住民の恐怖、悪漢との戦いという立ちはだかる困難を克服するというのが大きなテーマであり、その白人側からの先住民悪役仕立てから、その恐怖の対象たる先住民を白人側からでなく、先住民側から描いたところに、この映画の斬新性があった。最近に至り、先住民側から描いた西部劇も多く見られるが、この映画の製作当時では、「折れた矢1951デルマー・デイビス監督」位しか気が付かなかった。

ジェロニモを継いだ族長サントス(ポール・ギルフォイル)は白人から与えられたウイスキーで魂を抜かれ。もはや聖地を奪回する意思を失っている。サントスの娘ナリンリ(ジーン・ピータース)とは、マサイと恋人関係にあり、二人は遁走を続ける。セントルイスでは白人の文明社会に圧倒され。また郊外ではチェロキー族が白人社会に同化し、畑を作り、穀物を得、冬を飢えないことも知る。
その後マサイとナリンリの間の胎内に子供が出来る。チェロキーに貰ったトウモロコシの種で畑を作る。しかしナリンリが盗んだ洋服等で、居所が判明し、騎兵隊が二人を取り囲むようになってしまった。撃ち合いが続いた後。子供の産声が聞こえた。騎兵隊の司令官が叫んだ。「撃ち方やめ!」アパッチがが初めて畑を作った!数の上では、勝ち目などあるわけないが、今まで戦士として戦ってきた最後の戦士マサイとの共存への意志が白人側に見え隠れして終演。

***************************************************************************

アパッチ(Apache)は、北アメリカ南西部に居住していた6つの文化的に関連のあるアメリカ・インディアン部族の総称。いずれも南部アサバスカ語系の言語を話す。現代の用語では、類縁にあるナバホ族は含まない。「アパッチ」という名は、ズニ族の言葉で「アパチェ=敵」を意味し、それを聞いたフランス人によって広まった。

乾燥した灼熱の岩山を好んで根城にし、その襲撃方法も地形を利用した山岳ゲリラというべきものだった。また、彼らは健脚で知られ、馬は移動手段というよりむしろ食料だった。戦士たちは口に水を含んで山々を駆け巡り、戻ってきたときに口の中の水が減っていれば失格とする厳しい訓練を積んだ。こうして灼熱の中で水を見ても無視できるほどの忍耐力と持久力を身につけていた。伝統的に好戦的で、領土に入りこむ異民族を襲撃した。南西部での彼らの抵抗による入植者数人の死者は、東部では情報操作されて数百人の死者となって大げさに伝えられ、白人達を怖れさせ、残虐な部族として語り継がれている。

現在、アパッチはアリゾナ州ニューメキシコ州オクラホマ州の特別保留地に居住し、その数は5000から6000とされている。

(飯田)主演のバート・ランカスターは、この映画の出演当時は 代表作「真紅の盗賊」「地上より永遠に」「バラの刺青」「空中ブランコ」「OK牧場の決闘」などに、立て続けに出演していて、俳優として最も脂の乗り切っていた時代だったと思います。
従って、この作品でも製作者ハロルド・ヘクトと組んでヘクト・ランカスター・プロという独立プロダクションで自分の思い通りの映画を製作したかったのでしょう。まあ、表現は悪いが、バート・ランカスターのやや半開きの口元が、役どころのアパッチ族のマサイという戦士役に結構ぴったり合った熱演と言えるし、マサイの恋人ナリンリ役の美女ジーン・ピータースが、珍しくアパッチ族という役に扮し力演するのが楽しめました。

(編集子)セーブ劇の聖典、”駅馬車” は当時普及し始めた電信の急報が ”ジェロニモ!” という単語を最後に途切れるところから始まる。これが暗示するのは先住民族の蜂起であり、その中を突っ切ろうとする駅馬車の旅がぶつかるであろう危険を浮かび上がらせる。実に効果的なトップシーンだった。この不気味なイントロは一発の銃声とともに大写しになる若き日のジョン・ウエインの登場で一気に躍動的な場面に移って行く。何度見ても心躍らせるエーガだ。