エーガ愛好会 (313) ローンレンジャー   (34 小泉幾多郎)

日本では、1958年から、クレイトン・ムーア主演で愛馬シルバーにまたがり、白のテンガロンハット、黒のマスクをトレードマークに、ハイヨーシルバー!の掛け声とともに、ウイリアムテル序曲に乗って活躍した姿が放映されたが「白人嘘つき。インディアン嘘つかない」等のセリフを思い出す。映画化も5度目とのこと。

しかしこの2013年制作の映画は最低の映画を表彰するという34回(2014年)ラジー賞(ゴールデンラズベリー賞)のリメイク・続編・盗作賞を受賞、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞を何れもノミネートされている。主演にジョニーデップ、監督ゴア・バービンスキーで、ジュリー・ブラッカイマーが製作した「パイレーツ・オブ・カビリアン」3部作を、其の侭西部劇に落とし込めた作品と言えるが、そのわくわく感とドタバタ感が楽しめた。ということで、ラジー賞受賞にも拘らず期待以上の作品だったことは間違いない。

物語は、サンフランシスコの遊園地で、The Noble Savage in his Natural
Habitatと銘記されたトント(ジョニー・デップ)の銅像が、客の少年に話を聞かせることから始まる。その後過去に遡り、テキサス州コルビーに向かう列車で護送される極悪人ブッチ・キャベンディッシュ(ウイリアム・フィクナー)と一緒に鎖に付けられたトント、法律を学び西部に戻ってきたジョン・リード(アーミー・ハマー)との列車を使ったアイデア満載のアクションシーンが最初の見せ場。キャベンディッシュには逃げられ、ジョンとトントはコルビーへ。ジョンの兄ダン・リード(ジェームス・バッジデール)とその仲間のテキサス・レンジャーズと共にキャベンディッシュを追うが、その連中に待ち伏せされ、一行は全滅。兄の妻レベッカ・リード(ルース・ウイルソン)と息子ダニーまで捕われてしまう。このテキサス・レンジャーが追跡するモニュメントバレーの岩山の群群に溶け合うレンジャーズの面々が噛み合う景観が美しい。

中間では、やや中弛みの感じもしたが、西部劇に求められる渓谷での激突、騎兵隊とコマンチとの戦い、特に前半と後半の列車でのアクションシーンは実に迫力があった。ジョンが馬に乗って屋根から列車へジャンプ。トンネルすれすれに馬で走る、レベッカが下に落とされると其処に馬が。梯子をつかって列車に飛び乗る。鐡道橋を爆破、連結をはずして谷に列車を落とす等々。しかしアクション場面での迫力は感じたものの、もっと奥行きを考えてみると、スッキリしない面も感じた

主人公ジョンは当初、相手を直接殺すことに躊躇していたが、徐々に、法を守るから、直接殺す方向へ。トントは、どうやら過去に、白人とコマンチとの経緯から、コマンチに対し弱みを持っているようだが、この辺スッキリしない。また相変わらず、騎兵隊と先住民とのスッキリしない関係というか、先住民寄留地に平気で鉄道を敷こうという傍若無人さを画面で見ると、そういう時代を経て来たのだということが判る

(編集子)曜日まで覚えていないが、サンセット77、拳銃銃無宿、ライフルマン、ララミー牧場、ペリーメイスン、コンバット、ローハイド、などなどに午後8時になればV9継続中のジャイアンツ。いい時代にテレビ全盛を迎えたものだった。付け加えれば巨人戦中継は ”解説 中澤不二雄、実況越智正典” と決まっていたものだ。そういう時代

 

のレギュラー番組の一つが ”ウイリアム・テル序曲にのったローンレンジャー”、の話だ。歳月、人を待たず。

ここのところ、テレビはもっぱら、あの頃 プラスワン、位の時代の刑事ドラマに決め打ちしている。すでに境をことにした名優たちの若いころが現代に見えてきて、ふっと気が付いている自分がいる。これが洋画だとそういう感情はわかないのが不思議だ。