エーガ愛好会 (266)昨日 今日 明日  (大学クラスメート 飯田武昭)

この映画、≪ナポリのアデリーナ≫≪ミラノのアンナ≫≪ローマのマーラ≫というそれぞれ独立の話を1本の映画に収めたもので、この当時に流行ったオムニバス映画(数人の監督の製作した別々の物語を1本の映画に収める)と似た構成でした。主演はソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニというイタリアを代表する2大スターですが、監督がヴィットリオ・デ・シーカという点で注目されます。

監督デ・シーカは、映画「」の他10本ほどの名作・注目作を作ったフェデリコ・フェリーニ監督ほどにはイタリアの監督としては注目されていないかも知れませんが、日本の映画ファン史では「靴みがき」(1946年)、「自転車泥棒」(1948年)、「終着駅」(1953年)、「昨日 今日 明日」(1963年)、「ああ結婚」(1964年)、「ひまわり」(1970年)と、それぞれの時代に強烈な印象を与えて来た監督と思います。「自転車泥棒」はエーガ愛好会では評価しない人も居たと思いますが、「ひまわり」は同じ主演のソフィア・ローレンとマストロヤンニで大いなる悲劇で、殆どの人が名作と認める映画だと思います。「終着駅」はモンゴメリー・クリフトとジェニファー・ジョーンズのローマ中央駅(テルミニ)での密会の恋愛物ですが、大きなスクリーンの暗い劇場で観るのと、今日のお茶の間やリビングで観るのとは違った印象があると思いますが、初めてローマを訪れた時にどうしても「終着駅」の舞台になったテルミニをこの目で見たいと思って時間を割いて歩き回ったものです。

「昨日 今日 明日」はイタリア人気質を少し誇張して、更に滑稽に脚本が作られていると思いますが、少し前に書いたように喜劇の製作は中々難しいもので、この作品はくすくす笑いではありますが、上手く出来ている作品と思います。又、製作者がカルロ・ポンティというソフィア・ローレンと結婚した巨匠で、この映画は愛妻を自由自在に演技させている感じが出ていて、ソフィア・ローレンの代表作の1本(勿論マルチェロ・マストロヤンニの代表作の1本でもありますが)でもあると思います。

(保屋野)掲題イタリア映画観ました。久しぶりの洋画鑑賞でした。ソフィア・ローレンとマストロヤンニ主演の(三話)オムニバス映画です。内容等は飯田さんの(完璧な)コメントに付け加えることはありません。

三話とも「強い女」に翻弄される「弱い男」をコメディータッチに描いた作品で、感動はしないが、そこそこ面白いエーガでした。そして、やはり、上記イタリアを代表する男女俳優(特にロ-レン)の魅力は見応えありました。

(安田)フェリーニ、ヴィスコンティを加えて、ヴィットリオ・デ・シーカはイタリア三大映画監督の一人として名を連ねるのでしょうか?既観は「自転車泥棒」、「ボッカチオ‘70」(4遍の艶笑コネディ・オムニバス映画、フェリーニ・ヴィスコンティも参加監督。デ・シーカ編にはローレン主演)、更に「終着駅」、「ひまわり」を相当昔に観ました。やはり「ひまわり」が名曲主題歌と共に忘れ難い。これもローレン、マストロヤンニ共演。今は戦場になっているウクライナのひまわり畑の映像が強烈でした。ゲーリー・クーパー主演の1932年映画「戦場よさらば」(ヘミングウェイ原作小説)のリメイク版映画「武器よさらば」(ロック・ハドソン、ジェニファー・ーンズ共演)1957年公開にデ・シーカはイタリア人軍医役で出演。監督だけだと思っていたので驚いた記憶がある。調べると、監督と俳優の二刀流でしたね。

(’飯田)監督のヴィトリオ・デ・シーカは「武器よさらば」他にも出演し、アカデミー助演賞候補にノミネートされていますね。端正な顔で俳優としても通用する気がします。もう一人、監督であり俳優としても出演作が多かったのは監督ジョン・ヒューストンですね。監督として「アフリカの女王」「赤い風車」「白鯨」などの名作を演出する一方で俳優としても、「枢機卿」でアカデミー助演賞にノミネートされ、「天地創造」(1966年)ではノアの箱舟のシーンで延々と説教するシーンが印象に残っています。「007/カジノ・ロワイヤル」にも出演しています。彼の場合は、どちらかというと一癖ある顔つきなので役柄が広い気がしますが・・・。

(編集子)自分で出てきた監督、なら、必ず冒頭に現れたヒッチコックのことを思い出す。”禁じられた遊び” 以降、テーマが深刻な欧州映画は見ないことにしているが、”自転車泥棒” は記憶にある。エーガと直接関係ない話だが、愛読書のひとつ、北方謙三の ”ブラディドール” シリーズで、”ひまわり” のことがフィーチュアされている作品がある。なんとなく引用されている雰囲気にマッチしてる、と思ったことはあるが、エーガそのものは見ていない。