エーガ愛好会 (238) ジュディ 虹の彼方に  (34 小泉幾多郎)

ハリウッド黄金期のミュージカルスター、ジュディ・ガーランドが47歳で急逝する半年前の1968年冬に行った日々を鮮烈に描いた伝記ドラマ。大人にダメにされた子供のまま中年になった悲劇の歌姫ジュディに扮するのは、レネー・ゼルウイガー。この映画で、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞主演女優賞を獲得している。

子供時代の描写は、晩年のジュディの回想として描かれるが、虐げられ過ぎて救ってあげたくなる。現在我が国で問題になっているようなセクハラ問題や慢性的に強制的ダイエット等覚せい剤投与により、神経症とドラッグやアルコール漬に嵌ってしまう悲劇。救いは、ジュディの歌。ジュディを演じたレネーは、ジュディの奔放で愛すべき女性像、圧倒的なカリスマ性で人々を引き付ける姿を再現させて見せただけでなく、ジュディの歌を再現させるべく、2017年映画の話が来てから、その翌年にかけて、自分の身体から、ジュディの声を出すため、声をパーツに分け歌のトレーニングに励んだという。映画完成は2019年。順番に、レネーがジュディに扮した歌唱を披露して行く。

1.      バイマイセルフ ロンドン初日の舞台から、歌えないと駄々をこねながらも「バンドがいた。使った方が良さそうね」と言いながら、自分の道を歩いて行く、これからもずっと一人で歩いて行くと唄う。
2.      トロリーソング 踊り子を従えながら、子供の頃、眠れずお付きの者から薬を常用するようになったこと等を思い出しながら唄う。
3.      ゲットハッピー 知己になった同性愛者二人と一緒に彼等の部屋のピアノで唄う。当時の同性愛への偏見に対し「自分たちと違う人間を気に入らないなんて糞食らえ」なんて言いながら。
4.      フォーワンスインマイライフ 「新しい恋人シドニーを思い、愛する人がいるから前に進める」と唄うものの、飲んだ後の出演で、観客から罵声を浴び「ろくでなしのひい爺」なんて暴言を吐いたりする。
5.      サンフランシスコ 此処はシカゴ、ロンドン、サンフランシスコ?等と言いながら、再び飲み過ぎが原因から舞台で倒れる。口だけでは、「素晴らしいショウを皆さんにお見せする」と口走るが。結局クビになる。
6.      カムレインオアカムシャイン ジュディの代りに、ロニー・ドネガンが採用される。ジュディが頼む。「ロニー、よかったら一曲だけ唄わせて呉れない?雨が降ろうが晴れようが、二度とここには出演できないし」。他の誰よりもあなたを愛するわ。栄光とと絶望様々な重圧に苦しみながらも自分の道を一人で歩いて行こう。私たちはいつも一緒。大歓声に包まれる。
7.      虹の彼方に 虹の彼方にどこか遠く空がとても青くて、そこでは、どんなに大きな夢も必ず叶うらしい。途中、ジュディが唄えなくなると観客が揃って唄う。絶望を繰り返しながらも幸せを諦めなかったジュディの伝記の終焉。

 

 ジュディ・ガーランドは、アメリカ合衆国の女優、歌手。 子役として出演した『オズの魔法使』で大人気を博し、以後も『若草の頃』、『イースター・パレード』、『スタア誕生』などで抜群の歌唱力を披露してハリウッド黄金時代を代表する大スターの一人となった。娘は女優のライザ・ミネリ。

(編集子)Over the rainbow  という曲は親しみがあるが、エーガとして意識したことはなかった。この人のことも名前だけであまり記憶がない。小泉さん、すみません。