七夕ですがまずは帯状疱疹のことです     (普通部OB 船津於菟彦)

友人のひとりが罹病し、急に身近に感じられることになったことについてです。

原因はウイルス
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster)と呼ばれるウイルスに感染することで引き起こされます。水痘・帯状疱疹ウイルスは水疱瘡(みずぼうそう=水痘)の原因となるウイルスです。
子どもの頃に水ぼうそうにかかると、症状は治ってもウイルスは完全に体内からなくならず、神経節(神経繊維の節目)の中に潜んで休眠状態で残存します。
大人になり、疲れやストレス、体力の低下や病気などで免疫力が落ちた時に、そのウイルスが目を覚まし、帯状疱疹として発症するのです。帯状疱疹が起こる確率は50歳から増加し、80歳までに3人に1人が発症すると言われています。

帯状疱疹ワクチン
帯状疱疹ワクチンは、帯状疱疹を予防するためのワクチンです。帯状疱疹ワクチンは、帯状疱疹ウイルスの弱毒化したウイルスを使って作られています。ワクチンを接種することで、免疫系がこのウイルスに対する防御力を身につけます。これにより、帯状疱疹のリスクを減らすことができます。

帯状疱疹ワクチンの効果
ワクチン接種後、帯状疱疹ワクチンは100%の効果を保証するものではありませんが、帯状疱疹にかかるリスクが大幅に減少するデータが得られています。また仮に帯状疱疹を発症してしまっても、ワクチンを接種していると症状が軽く済むこと、また帯状疱疹後神経痛の発症も少なくなることが報告されています。
ワクチンには2種類あり生ワクチンと二回接種の不活化ワクチンとがあるようです。不活化ワクチンは二ヶ月おいて2回接種する必要があり価格も高く、シングリックスと言う物のようです。

シングリックス(Shingrix)とはどんなワクチン?
シングリックスは、日本では2020年1月より使用できるようになった新しい帯状疱疹ワクチンです。生ワクチンではないので、免疫機能が低下した人(造血幹細胞移植を受けた方、ステロイド剤や免疫抑制剤を内服中の方など)でも接種が可能です。
帯状疱疹の予防効果は、50歳以上の方で97.2%、70歳以上の方で89.8%と報告されています。従来のワクチンの予防効果は51.3%ですので、比べてみても非常に効果が高いことがわかります。これらの効果は10年以上持続することが分かっています。また、帯状疱疹後神経痛に対する予防効果も88.8%と非常に高いことが特徴です。シングリックスは、2ヶ月あけて2回(最大6ヶ月以内)の接種が必要となります。

帯状疱疹ワクチンの副作用
帯状疱疹ワクチンは一般的には安全なワクチンですが、接種後に副作用が現れることがあります。一般的に、副作用は軽度で、数日から1週間程度で消えます。
よく報告される副作用には、接種部位の痛み、腫れ、発赤、かゆみがあります。また発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、関節痛などの症状が現れることもあります。
帯状疱疹ワクチンによる重篤な副作用は非常にまれですが、ショックやアナフィラキシーなどの重いアレルギー反応が起こることが報告されています。
罹病した友人は帯状疱疹が顔に移り、眼がやられそうになったとか大変だったようです。矢張り高齢者は注意した方が良さそうです。

この猛暑が世界的に拡がり、40度が当たり前の様相です。人は直ぐに適応できないのでどうする。その内に40度50度ぐらいでも平気で活きていける人間にはなるかと思いますが、それまでどの程度生き残るか。トランプの狂気には参りますが、マァ暫くこれも我慢ですかね。小生、順天堂の皮膚科に別な皮膚病で通っていますが、その先生に聞いたら是非直ぐにやって下さい。問題無いです。やるなら2回接種のワクチンですよとのことで、墨田区に電話したところ公費負担在るので申請書を送るとのことで依頼したら届き1回に付き1万円公費負担とのこと。
一回につき1万2千円自己負担との事ですが「痛い思いが」無いなら安かなぁ。でも2回で2万4千円掛りますね。
これに比べればたいしたことない帯状疱疹を取り敢えず予防して、人生100歳時代を謳歌行きたいですね。がんばろうニッポン。

ともあれ、今日は七夕。七夕(七夕-シチセキの節供)五節供の一つ。旧暦の7月15日の夜に戻って来る祖先の霊に着せる衣服を機織して棚に置いておく習慣があり、棚に機で織った衣服を備えることから「棚機」という。仏教が伝来すると、7月15日は仏教上の行事「盂蘭盆(盆)」となり、棚機は盆の準備をする日ということになって7月7日に繰り上げられました。これに中国から伝わった織女・牽牛の伝説が結び附けられ、天の川を隔てた織姫(織女星、こと座のベガ)と彦星(牽牛星、わし座のアルタイル)が年に一度の再会を許される日と言われる。

お盆-盂蘭盆-お盆の準備をして——。

ついでに例によってウイキさんのいわく:

五節句とは、日本の伝統的な年中行事で、1月7日の人日(七草の節句)、3月3日の上巳(桃の節句)、5月5日の端午(菖蒲の節句)、7月7日の七夕、9月9日の重陽(菊の節句)の5つの節句を指します。これらの節句は、季節の変わり目に邪気を払い無病息災や子孫繁栄を願う行事として、古くから親しまれてきました。
人日(じんじつ)の節句(1月7日):

七草粥を食べて、一年の無病息災を願います。

上巳(じょうし)の節句(3月3日):

女の子の健やかな成長を願う「桃の節句」として知られ、ひな人形を飾ったり、ひし餅、ひなあられ、ちらし寿司などを食べたりします。

 

端午(たんご)の節句(5月5日):
男の子の成長を願う「こどもの日」として親しまれ、武者人形や鯉のぼりを 
飾り、柏餅やちまきを食べます。
七夕(しちせき)の節句(7月7日):
織姫と彦星が年に一度会うという伝説にちなみ、笹に願い事を書いた短冊を飾ります。
重陽(ちょうよう)の節句(9月9日):

「菊の節句」とも呼ばれ、菊の花を飾ったり、菊の花びらを浮かべたお酒を飲んだりして、長寿を願います。

これらの節句は、それぞれ異なる意味や風習があり、日本の豊かな文化を形成する上で重要な役割を果たしています

 

マチユピチュ への旅     (41 斉藤孝)

マチュピチュは、雲海と霧に覆われ小雨までも降っていた。
ヨレヨレ老夫妻はインカの謎の天空都市に登った。大変息苦しい。
その時にインカ帝国の奇跡は起こった。突然晴れて神秘的な雰囲気になった。

標高2,430メートルのアンデス・ウルバンバ渓谷の山頂に築かれたマチュピチュ。80歳過ぎの高齢夫妻を歓迎してくれた。マチュピチュ遺跡を貸し切ることにした。となりの若者を真似て無理なポーズを披露した。少し腰と腕に痛みを感じた。16世紀に滅亡したインカ帝国皇帝パチャクティにゲラゲラと笑われたようだ。

私には、いつまでも漠然としたマチュピチュへの憧れがあった。今から20年前、2003年に初めてマチュピチュを訪れた。カリフォルニア州サクラメントからの短いフライトだった。クスコもオリャンタイタンボ村も変わっていなかった。

マチュピチュ村を流れるウルバンバ川はアマゾン川の源流の一つである。
この激流を征服者スペインのコンキスタドールは下り、エル・ドラード(黄金郷)を探し求めた。インカ帝国の都クスコは標高3,399mの高山である。高山病になるリスクが高まりさすがに息苦しい。

マチュピチュ遺跡に入ると、まず目に入るのが40段にも渡る段々畑である。
3mほどある高さの石の壁が支えている。見事な石組である。こんな石垣職人がいたとは、驚異である。世界も驚く石建造技術。
なぜあの場所に作ったのか?

太陽信仰に基づいて、石組みは曲線を作りだし、高い技術が用いられた神殿。
高度な石職人はいたのだろう。「聖なる石」と呼ばれる巨大な石がいくつもあった。インカ帝国の人々は、そびえる山々に神の存在を重ね、石に削ることで山への崇敬の念を表現した。

(44 安田)カメさん、お帰りなさい!

地球のほぼ裏側、しかも標高3500mの高地への旅、解説と写真ありがとうございます。ご夫妻の好奇心・足腰の軽さ・行動力には漢服致します。

(42 河瀬)マチュピチュのお二人の写真、素晴らしい!

日本の堀の石組みと全く似た素晴らしい石組み技術をインカが持っていたのは驚きですね。
もう一つ私が感心したのは山を越えて水を供給した水路でした。それも敵に発見されないように作ったものでした。日時計もマヤの遺跡にあるものと通ずるものがあります。
 それにしてもこの歳で絶え間なく海外にゆき、地球の裏側にまで飛ぶ、カメさん夫妻の行動力とバイタリテイーには敬服します。ワールドワンダラーズ、万歳!

乱読報告ファイル (57) ”発掘” がテーマの本を読みました  (HPOB  小田篤子)

娘一家が家を建てたい…と言っている裏の土地は、遺跡発掘調査から1年以上経ち、5月から再調査中。6月までの予定が、まだ毎日炎天下で掘っています!
偶然もあり、発掘に関係する本とNetflixの映画をみました。
①アガサ・クリスティの
「さあ、あなたの暮らしぶりを話して」
クリスティは再婚の夫が、大英博物館の考古学者であった為、オリエント急行を使ったりし、シリアなどに度々同行しています。知り合いの人たちにその暮らしぶりを問われることが多く、本にしたようです。
クリスティらしく、発掘の様子よりも現地で雇ったり、出会った人々の様子や自分の暮らしの中のエピソードを面白く書いています。
例えば、シリアで借りた家は、頼んでおいたにもかかわらず、行ってみたら、家族7人と家畜が居座っており、退去させたはよいが、夜、壁一面にネズミが出、現地人に言うと、プロの猫(最高に猫道に秀でた猫)で退治してくれ、その後は出なくなったとか。
雇い人の奥さんに目薬をあげると、説明したにもかかわらず、目にさした残りは飲んでしまったり…。作業員は皆、時計も持たないのに5k,10k離れた所からピッタリ日の出前に現場に来るのが不思議等など。
これらの経験をもとに、彼女はこの時期に、オリエント急行、ABC殺人、ナイルに死す…etc.名作を沢山書いていることに驚かされます。
映画「時の面影」’21年イギリス(Netflix)
夫に先立たれ、広い土地を所有している夫人(エディス)は、塚がいくつかあるのを不思議に思い、農家の出のアマチュア歴史家で発掘の仕事をしている男性(ブラウン)に発掘調査を依頼します。
苦労して掘ると、船型の地位の高い人の墓が出土。この事が知れ、国レベルの大英博物館の発掘調査となってしまい、彼は雑務担当に。
妻は彼を励まし、『発掘は未来と先祖をつなげ…永劫の価値がある』と。この言葉が頭に残りましたが、我が家の裏は…。
発掘品は大英博物館に寄付され、エディスの死後《サットン・フーの遺跡》として公開され、近年になり、やっとブラウン氏が発見した事が記されたそうです。
以前観た映画「ロスト·キング500年越しの運命」もイギリスのアマチュア歴史家の主婦が、駐車場からリチャード3世の遺骨を発見した話でした。
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クリスティのところで書きたかった事2つを忘れていました。
✤ひとつは;アドバイスをしても『すべてはアッラーの神のおぼしめし次第…』となってしまうこと。
✤ふたつめは;命を軽く見る。✩アルメニア人、クルド人、アラブ人等の作業員間で争いが多く、喧嘩には罰金、武器を携帯していないかのチェックをした。
✩「イスラム教徒なんて死ねばせいせいする」
✩「息子を助けて…人をひとり殺しただけです。」
✩「今日は女性の処刑がある。珍しいから行こう。なぜ行かないのか?」と言う人がいること。
✩出土品を横取りしようとし、生き埋めになった人を可哀想と思わないこと…
などが書かれています。
(編集子)素人がいまさら云々するような作家ではないが、小生は(その道のプロの評価は高くないようだが)やはり ”私はポアロがカボチャづくりなんかにこなければよかったのにと思う” で終わる ”アクロイド殺人事件” でこの人に取りつかれ ”そして誰もいなくなった” が最高傑作だ、と思い込んでいるひとりである。エーガではピーター・ユスチノフがポアロを演じた ”ナイル河” かなあ。それともギャラはいくらかかったのか、心配になった超豪華キャスト版(ローレン・バコールが特によかった) ”オリエント急行” だろうか。ミッキー、これを機会にアガサガールズに参加しませんか?

夏の昼間を楽しみましょう!   (バー アンノウン 川島恭子)

スイカのソルティドッグです。
グラスの縁を スイカで濡らして 塩をつけます。
ウォッカ 適量
スイカを絞った物 適量
(アンノーン では マラスキーノという さくらんぼのブランデーみたいなリキュールをほんの少し入れますが なくても大丈夫です)
暑い日の昼間に飲んだら サイコーです!
別荘のテラスなど 素敵な時間になりそうですね🍉
お酒を入れなくても 塩で縁取りしたグラスで飲んだら 暑さ対策にもなりますよ。お試しくださいね!
今年の夏もかなり暑いです。皆さまお身体に気をつけてお過ごしくださいね。❣️
(編集子)ソルティ・ドッグとは、英国で下級水夫を意味したのだそうだ。ホットドッグのドッグのほうは諸説あるようだが、hot dog !  という罵声として使われることもあるという。ま、どうでもいい、恭子ママのおすすめに従おうではないか、諸君。

乱読報告ファイル (56)蝶と人と 美しかったアフガニスタン (普通部OB 菅原勲)

「蝶と人と 美しかったアフガニスタン」(著者:尾本 恵市。発行:朝日選書、2023年)。

この本は、蝶にいささかでも興味のある方にとっては必読の書だ。何故なら、幻の蝶と言われるアウトクラトール(皇帝)・ウスバシロチョウの捕獲記であるからだ。しかし、小生、蝶のことは全く知らないし、興味もない。では何故この本を読んだのか。それは、日経は土曜日の読書欄に「一周遅れの読書術」と言うコラムがあり、そこで岡田暁生がこの本を紹介していたからだ。このコラムは一周遅れと謳っているように、小生にとって知らなかった昔の本、と言っても比較的に最近の話しなのだが、を紹介してくれるからであり、もう一つは、岡田が音楽では信用のおける人であるからだ。確かに、この本は面白かった。しかし、残念ながら蝶については、モンシロチョウは知っているが(最近、自宅の近辺では蝶など凡そ見かけなくなった)、ここで述べられている様々な蝶については、終始、何が何やらさっぱり分からなかった。

さて、この本の著者、尾本だが、その原点は、3-4歳ごろの昆虫少年から始まっており、専門は人類学、集団遺伝学で、蝶の収集家としても有名であり、膨大な標本が東大総合博物館に収蔵されている。彼は1933年の生まれだから、現在、92歳であり、この「美しかったアフガニスタン」は、半世紀以上も前の1963年、彼が30歳の時に訪れた当時を、その時の詳細な日記を基に語っているものだ。従って、同じアフガニスタンと言っても、その後、ソ連が侵入し、米国が侵入し、そして、イスラム教原理主義のタリバンが支配している現在とは雲泥の違いがあるわけで、それを、彼は、美しかったアフガニスタンと言う懐旧の念を込めて表現している。ここで余談になるが、アフガニスタンと言えば、かのシャーロック・ホームズが後にその活動の記述者となる元軍医のワトソン博士と初めて面談したおり、その風采を見ただけで、貴方はアフガン戦争の復員軍人でしょうと見抜いたのが、このアフガニスタンだった。それは、1881年の話しだから、以後、特に、北から南に下って来るロシア、それを食い止める英国が衝突する場と化してしまっていただけに、アフガニスタンは西洋列強の恰好の餌食になってきたわけだ。

尾本は、自分のことを、人類学と蝶類学の二刀流と言っているが、蝶に関しては趣味と言った方が相応しいだろう。このアフガニスタン訪問の目的は、上述した極めて珍しい蝶を捕獲することにあった。その切っ掛けとなったのが、知人であり、蝶の収集では当代随一と言われた英国人コリン・ワイアットから一緒に行かないかと誘われたからだ。ドイツのミュンヘンからアフガニスタンのカーブル(彼は、カブールではなくカーブルが正しいと述べている)に飛び、富士山より高い4000m級の高山蝶の産地であるヒンドゥークシ山脈に分け入り、4例目となる珍しい蝶の捕獲を中心に蝶を捕りまくった。そして、この本には、自身が撮ったそれらの蝶や美しい山々、アフガニスタンなどがカラー写真で撮影され、満載されている。

彼の行為は、何やら、観賞用植物の新種を求めて世界中を飛び回ったプラント・ハンターを思い起こさせる。アウトクラトール探査行を終えたあと、彼は、カーブル博物館、バーミーヤンの仏教遺跡なども見学している。

小生にとって、何が面白かったと言うと、世にも珍しいものを、困難に立ち向かって探しに行く行為、一種のロマンを掻き立てられたからだ。従って、小生にとってその対象が必ずしも蝶である必要はなかったと言うことになる。

前述のとおり、小生、蝶のことは全く知らないし、興味もない。従って、ここでは蝶について言及しないが、その唯一の例外が、ロシアの探検家、プルジェワリスキー・ウスバアゲハの盗難事件だ。1884年、彼の第二次チベット探検の途上、中国青海省山脈で三頭の美麗なウスバアゲハ(パルナシウス)を捕獲し、それがドイツの博物館で陳列されていた。それを名前が伏せられているある日本の実業家が200万円で故買屋から購入する(たかが蝶一頭に!因みに、尾本によると、蝶は一匹、二匹などではなく一頭、二頭と数えるらしい)。結局、尾本を通じてドイツに返還されることになるのだが、蝶に全く興味のない小生から見ると、チョウごときに数百万円の値段が付き、しかも、それを実際に購入する人がいるとは俄かには信じられない、その辺で舞っている蝶ではないにしても。蝶好きの人にとっては命の次に大切なものなのだろうか。

最後に、読み終わって疑問に思ったのは、何故、1963年の誠に貴重な体験が、半世紀以上も経ってから、やっと本になって出版されたのだろう。その経緯について、著者はいささかも触れていない。

朝から不愉快(改題:不機嫌)なのだ

世界情勢がぐらついているこの時期、日本にとってはある種の(言い方はおかしいかも)正念場であろう参院選が始まった。今度は新しい政党がいくつか登場し、その一つに興味を持っていて、候補者のポスターを見に行った。大体ポスター一枚の情報で個人を特定すること自体無理があろうが、すくなくとも比例区に党名を書こうか、位の関心があったからだ。

しかしこのポスターの中の該当する1枚を見て愕然としてしまった。この候補者j自身の確信なのか党是なのか、大きく ”これ以上日本を壊すな” という1行である。いまの日本は壊れているのか?

小生は昨今一種のはやり言葉になっているような ”失われた30年” というフレーズに以前から疑問を持っている。この論者の言い分は、乱暴に言えば、この30年の経済指標なかんずく賃金の上昇がみられない、というあたりが論拠のようだ。共産党だのレーワなんだのあたりにいわせると大企業が利益をため込んでいる、それを吐き出せばいいのだ、というまことにわかりやすい論議にいきつく。確かに企業の内部利益はかつてないレベルである。共産党の言うような(前時代的な概念の)資本家による策謀、であるのかどうか知らないが、これが強欲な外資による買収や干渉を防いでいることは事実だろう。USスチールやGEやそのほか、かつて世界の覇権を握っていた米国企業が危機に直面したのはこういう基本的な動作をわすれて短期の数字だけに狂奔してきたからではないのか、と思うのだ。この30年は失われた、どころか、日本を守り切った30年だったのではないか。

ま、経済学者やいうところの経営エキスパートの人たちに歯向かうつもりはないが、今の日本は壊れている、のか? 80年間の平和を維持しているこの国が壊れているというのか?これ以上壊すな、だと?

ポスターにかかれた1行の文句を、この候補者(偶々当選挙区では女性だが)が信じているのなら(個人名は別にきめてしまっているのだが)、俺はこの政党には投票しない。してやるもんか。

偶々今朝、このポスターを丹念に見る気になったのは、涼しいうちに用事はかたづけようと駅前のATMへ行き、行きつけの店で朝飯を済ませようと立ち寄ったらお目当てのクロワッサンがまだ焼きあがらず、コーヒーもアメリカンはまだ上がっていません、と言われてしぶしぶほかのメニューにせざるを得ず、せっかく来てやったのに、と不機嫌だったからだ。このポスターのことでさらに機嫌が悪くなった。

(普通部OB 船津)でも、史上最高のボーナスとか大企業は良いようですが、写友などの中小企業の社長は四苦八苦のようです。

良いか悪いか知らないけど、「我々の時代」は何しろ働きました。ナーも無いから。総て無から作るときでしたから。今のように物はあふれ何か欲しいものがあれば何でも作られている。時代は大きく変わりましたね。
農業政策もかっての「農協頼り」から自主的な農業へ転換しているのかも知れません。しかし、あの日本原風景の棚田はどうなるでしょうか。
物は売り手は高く、買い手は安く。これを連日対峙してきた我が身。三方何とかとかかっこよく言いますが、価格は難しいですね。

八幡製鉄の稲山さん等が中国へ手取り足取り製鉄のイロハから教えた國が今や世界一。いこわれてはいないが成長が止まっているのはではと。あのソニーがウオークマンを開発したりした精神は何処へやら。マンガとかのビジュアルの世界では伸びている。「ネタ」未だ未だ在る。頑張ろうニッポン。

(44 下村) もちろん日本は壊れていませんよね。 「壊すな」というフレーズ。単に目をひくための浅薄なキャッチフレーズと断言できます。

 もっとも国と地方自治体の借金がGDPの2.5倍にも膨らんでいることから、油断すると破綻するリスクは抱えていますよね。だから石破さんも野党からの減税要求に対して簡単にイエスと言えなかったのでしょう。この点では私は石破さんを支持します。ポピュリズムに負けるなと。
 「失われた30年」。バブル崩壊後、確かに経済活動は停滞し賃金も上がらず、就職氷河期を迎えてパートや派遣など非正規社員が増加してきたこの30年間。でも昭和初めの恐慌期に比べれば、企業の倒産や失業者もごくわずか。まして娘の身売りなどという悲劇も生じなかった30年間でもあります。
 どうもテレビも新聞も前向きなニュースより、リスクや危機の到来を報じたがる傾向がありますね。その方が視聴率が上がり発行部数を維持しやすいからでしょう。
 日本が壊れることよりも、むしろ私が心配しているのは「歴史は繰り返す」ということ。 世界各国が保守化し、ポピュリズムに煽られて自国第一主義に走り、戦前のような不安定な国際社会に入ってわが国が戦争に巻き込まれはしないかということです。

(42 河瀬)「失われた30年」は医師の目から見ると「不用意な規制に翻弄された時代」だったのです。

 1990年は日本が最も豊かさを感じ、医療もオリンパスが内視鏡でドイツと世界を競っていました。しかし厚生省は医療の進歩よりも安全性を重視し、全ての薬に治験を科すようになり、さらに世紀末には『新しい医療機器を作成、改良する場合も、薬と同じ治験を適応する』という規制を作ってしまったのです。
 薬の治験は何百億という大企業の資金が必要ですが、医療機器の会社の多くは手仕事で作る零細企業ですから、それらを負担することは不可能でした。そこで医療機器会社は先進的な医療機器の改革を全てストップさせてしまったのです。その一つにテルモが手がけ始めたカテーテル治療器があったのです。私は『カテーテルは今後の血管治療法』と考えていましたので、ことある毎に厚生省役人にその規制で日本の先進医療はストップする、と訴えたのですが、お役人はその後20年間「安全第一」を堅持して譲らなかったのです。
 その20年間にドイツではオリンパスを追い抜き、テルモは手をひき、米国ではカテーテル治療会社が急成長しました。今では全ての血管の病気(脳動脈瘤、脳血管狭窄、狭心症、大動脈瘤、心臓弁膜症など)をカテーテルで治療できるようになり、そのほとんどを米国から輸入しなければなりません。現在は日本の健康保険がその支払いに追われています。
日本と米国との違いは何だったのでしょうか?それは1)日本の役人は医療を「大金がかかる厄介な支出」、米国は「いずれ収支が取れ輸出もできる収入源」という考えの違いなのです。
 日本の健康保険制度は安く安全で世界に冠たる医療制度で国民の幸せを守ってきました。米国の『貧者を切り捨てる医療』とは違います。しかし現在では健康保険の支払いが十分でないために、沢山の大病院や大学病院が大赤字で危機に瀕しています。その世界に誇る健康保険制度を陰で支えてきた医療従事者の「働き方改革」も赤字の原因になっています。そして崩壊を起こす原因の一つに高額なカテーテルや抗がん剤の輸入があるのです。
「失われた30年」は、技術革新を目指す日本の企業を不用意な規制で止めた時代でした。

(44 安田)日米関税交渉に於ける日本側の赤澤亮正担当大臣は既に渡米7回して交渉しているが、トンネルの出口は見えていない。ステークホールダーの外野席に陣取る我々には交渉の進捗状況・争点・妥結への道筋の詳細は明らかにされず、両国は今奈辺にいるのかが分からない。交渉過程のビデオテープを是非観たいものだ。MLB大谷翔平の試合より面白いと思うのだが。

日本側はトランプの逆鱗に触れることを避けて交渉しているのだろうか?例えば自動車の両国間の輸出輸入量は消費財である以上、民間の国民が購買の決定権を有する。政府が介入してアメリカ車の輸入を抑えている事実はない。非関税障壁は最早存在しない。単純にアメリカ車が日本には合わない・魅力がない(燃費・サイズ・アフターサービス体制の問題など)だけのことだ。

この事実の正論を日本側はトランプにぶつけているのだろうか?トランプの反応は?トランプはそんな事実は百も承知でアメリカの日本車輸入量に匹敵する量のアメ車を日本は購入すべきだと、敢えて脅しているのだろうか?
とても先進2国間の高尚且つ真摯なレベルの交渉とは思えない。「海老(自動車交渉)で鯛(貿易赤字是正)を釣る」トランプ式ディールなのであろうか?敵は本能寺の作戦でディールの他の利を得ようと陽動作戦を展開しているのだろうか?
だから交渉過程をビデオで見てみたいものだ。

いずれにしてもトランプが日本車輸入関税を35%にすれば、自動車業界のみならず日本経済にとっても一大事となろう。安全保障面でアメリカの傘の下にある日本はアメリカには抗えにくいので、アメリカはそれを盾に理不尽な貿易面での要求もゴリ押しして来ているのだろうと思う。

ブーメラン現象でアメリカに多大なマイナスが追って発生することを予期しないのであろうか?遠慮深謀が欠けたトランプの戦略・施策と言わざるを得ない。が、そのとばっちりを避けることが出来ない日本の舵取りは短期的には難しい。
日本政府には泣き寝入りせず威風堂々とトランプアメリカと相撲を取ってもらいたいと思う。

(編集子)いつの間にか、小生の原文の”不愉快”が”不機嫌”に入れ替わってしまった。このほうが正解らしい。参院選のこともあるが、この”国難”に今の政権がどこまで対処できるのか。言っても詮無いことではあるが、安倍内閣だっらどんな対応をしただろう、ということもあるな。ここ数日、新聞の報告だけの話だが、どう見ても今のトランプ政治は長続きしそうもないようにも思えてきた。

ジョン・ヤングさん 逝去

John A. Young, the pioneering executive who succeeded founders Bill Hewlett and David Packard as CEO of Hewlett-Packard, passed away peacefully at home with his family on May 26, 2025, at the age of 93.

A transformative force in technology and business, John helped shape the trajectory of Silicon Valley, modern computing, and U.S. industrial policy. As CEO of HP from 1978 to 1992, he led the company through extraordinary growth – transforming it from a pioneer in test and measurement equipment into a global computing powerhouse. During his tenure, HP’s annual revenue grew from $1.3 billion to $16 billion. (US版 Google より抜粋転載)

横河ヒューレット・パッカード (YHP) の創業にかかわった僕らの世代にとって、 ”ジョン・ヤング” という名前はおなじみであった。ヒューレット、パッカードの創業者二人の後継者として、誰でもが認めていた存在だった。HPが押しも押されれもしない世界企業になった時期、”Bill and Dave” をついで経営手腕はもちろん、控えめながらことにおいて断固とした姿勢をみせた、理想の経営者だったと思う。いまはただ、ご冥福をいのりたい。

編集子は縁あって、日の目は見なかったがHP本社がかかわる大規模なプロジェクトの日本側の責任者を務めた関係で、親会社トップマネジメントと直接の接点が生まれ、ジョン(HPの伝統としてファーストネームでよぶ)と個人的にも接触があった。温厚な紳士であった。

アメリカを代表する企業のトップでありながら、景気対策で経費節減、が課題になると、海外出張の旅行に当たってはファーストクラスから直ちにビジネスクラスに切り替えて率先するような人物だった。その後、鳴り物入りでトップにスカウトされた女性社長がアメリカンドリームの体現を図ったのかどうか知らないが、自家用機にボディガードをつけて帝国ホテルの最高級ルームに美容体操用のセットまで運ばせた、そういう場面にも親会社のトップの接遇を命じられた経験と引き比べて、暗然としたものだった。予想にたがわず、”俺たちのHP” は名前だけの存在になってしまったが。

トランプ騒動 = ”群盲象を撫でる” か?

(菅井)【スマホにハゲたアメリカ副大統領J・D・ヴァンスのミーム画像を保存していた観光客がアメリカ入国を拒否される – GIGAZINE】

https://gigazine.net/news/20250626-us-refuse-tourist-jd-vance-meme/

Facebookにこの記事をリンクした成毛眞(元マイクロソフトK.K.社長)が以下のコメントを付けていました。

「子どもがアメリカ留学中とかの人とか、外資系社員とか、アメリカに出張に行かなければならない人は、ほんとトランプだのキリスト教だのワクチンだのについて、FBであろうがインスタであろうがいいも悪いも書いたらだめだよ。基本SNSに書かないほうがいい。いまなら入国拒否だが、そのうちに国外退去になるかも。ほんと面倒。基本SNSに書くことはトランプアメリカマンセーがいいと思う。さもなくばイミグレで面倒なことになるかも。いまのアメリカイミグレーションは何年も遡って、たとえ皮肉であってもトランプやその関係者の悪口を言った人の入国は許さないかもしれない。」

(飯田)7月に入り関税交渉の先行き見通しも五里霧中から更に、日本には書簡を送って済ませるというトランプ大統領の発言もあり、可成り暗雲が立ち込めてきた感じです。

現時点で個人的に感じていることは矢張りトランプ大統領の論理思考が一貫性を欠いていて分かり難いこと。全ての物事を自分中心に、時には感情的に良不良の2択で捉えて取引に持ち込む手法が交渉相手として難しい。

どうやらはっきりしてきたことは、自動車については日本からの対米輸出が多く、アメリカからの対日輸出が少なく過ぎることで不公平の故、高関税は引き下げないという方針のようです。日本が自動車の輸入に非関税障壁を設けていると未だに思っている節があります。

大統領は第1期目の2017年の安倍総理時代に日本訪問をしており、天皇陛下との会見やゴルフ、大相撲観戦をしていますが、残念ながら日本の街で走っている車については、殆ど見ていないのではないかと愚考します。日本では日本車以外にヨーロッパのベンツ、BMW,VW、ポルシェやアウディのドイツ車、プジョー、ルノーのフランス車、フィアット、アルファ・ロメオ、フェラーリのイタリア車など沢山走っています。アメリカ車だけに非関税障壁を掛けたりして輸入障壁を作っていることではない、燃費を含む日本人の嗜好に合った車でないことが、今のアメリカ車の日本での不振であることを自分の眼で先ず見て欲しいと思っています。

(菅井)この人の辞書(それもあるかどうか疑問ですが)にはLogical Thinking(論理思考)という言葉は無いように思われます。
従って、そもそも無いものを変えることは出来ないのではないでしょうか?

(船津)皆様、入国禁止だなぁ。まぁ4年辛抱。やらしておけー。それにしても「格下」はパシリナーンも役にも立たないのが腹立つ。自動車も売れなくならない.高く成るだけ。日本製鉄もどうするかですね.技術だけ盗まれないように注意ですね。
クリスマス商戦にはナーも無い米国になるのでは。まあ時間の問題ですから相手にしないで静閑。我慢の子が一番みたい。かまうとまたやってくる。後どもの廉価は横から見ているに限る。日本のダメ虎勝ったぞーぉ。。関係無いかぁ.中司親分が怒りしんとうかなぁ。22日の日本の選挙が問題ですね。トラさんどころでは無い。

(編集子)我々横丁老人の心境慨嘆、同感。ただこういう時に、(トランプの一見めちゃくちゃに見える行動に、もしかすると一貫性があるのかもしれない)、と逆の発想をしたのが先日紹介した自衛隊OB横山氏の一節だ。

ユダヤ社会の金で動いている以上、イスラエル問題は人権などの問題は別にすれば、歴史的にくりかえされてきた憎悪の繰り返しだから、ま、部外者には何をすることもできないし、トランプ先生も引っ込みがつかないんだろうと想像はできる。ウクライナのほうも言ってみれば旧ソ連国の間の内輪もめが原因だ。それにくらべると、この横山理論は、思想的バックアップをだれがやっているのか、MAGAの連中がこぞって敵視した ”闇の政府” が今度はサイドチェンジして出てきたのか知らないしどこまで正しいのか、誰にも分らないだけに空恐ろしいものだ。

小生の思うところ、貿易摩擦は長続きせず、民衆の反抗が激化して終息するだろうが、もし、横山氏の大胆な仮説が正しいとすれば、この種の争いは不得手なわがトヨアシハラミズホノク二はどうすべきか、という関心のほうが問題だ。ま、万事ラッキーに過ごしてきた俺たちの時代、なんとかなるたあ思うんだが。

“TACO” とは?    (普通部OB 田村耕一郎)

先日のブログで話題になっていた TACO というジョークについて知人からの話を転送します。

TACOという言葉が、ウォール街に飛び交っているのを読者の皆さんはご存じでしょうかTrump Always Chickens Out(トランプは結局、最後におじけづく)。まずは威勢のいいことをぶち上げ、その後、相手の反応を見ながら調整するというトランプ氏の交渉スタイルを揶揄(やゆ)する造語だそうです。しかし、今回のイランへの軍事攻撃は、その不名誉なレッテルを、力ずくで剝がしにきたようにも見えます。果たしてこれは、これまでの行動パターンからの完全な決別なのか。それとも、これもまた予測不能な「ディール」に過ぎないのか。冒頭の記事で、専門家は彼の衝動的な側面や、周囲に影響されやすい危うさを指摘しています。

乱読報告ファイル (55)「タクトは踊る」:風雲児、小澤征爾の生涯 (普通部OB 菅原勲)

「タクトは踊る」副題:風雲児、小澤征爾の生涯(著者:中丸美繪/ヨシエ。発行:文藝春秋、2025年)。

小澤は、音楽の指揮者だ。従って、その音楽だけを語ってくれたら良いんであって、音楽以外の余計なこと、例えば、その生涯は、一切、関係ないと言う人もいるだろう。しかし、彼が、もっと言えば、彼だけが、何故、これだけ無条件に人を惹きつける音楽を紡ぎ出すことが出来たのか、は大いに知りたいところだ。中丸は、逆に、小澤の音楽には殆ど触れずに、その生涯を語っている。

小澤は成城学園中学時代、「にいちゃん、俺、指揮者になりたい」と彼の兄に言っていたそうだから、並みの子供ではない。普通、音楽の取っ掛かりは、先ずはピアノだと思う。それをいきなり指揮者だとは、恐れ入りましたと言うしかない。とにかく、この小澤と言う人は、後に、米国の指揮者、バーンスタインをして「セイジ、きみはいったいどこの惑星から来たんだい?」と言わしめた、外国人から見ても途轍もない人物だったのだ。

中丸に言わせれば、「ダメでもともと。失敗を失敗としない。恐るべき胆力があった」と述べている。小生に言わせれば、これだけ何事に対しても全くビビルことを知らない人は見たことも聞いたこともない。

ここに興味深い挿話がある。小澤はなんとか海外に行きたかった。行き先はどこでも良かった。そこで、フランス政府給費留学生試験(ただし、小澤はこれをフルブライト奨学金制度と間違えているぐらいだから、全くいい加減だった)、それでも、最終審査まで小澤を含め二人が残った。しかし、選ばれたのは、小生の2年先輩の加藤恕彦/ヒロヒコ(慶應幼稚舎、普通部、高校、大学中退のフルート奏者)だった。夫人はコンセールヴァトワールへの留学生仲間だった英国人オーボエ奏者のマーガレット・キングさん。将来を大いに嘱望されていたが、旅行中、モンブランで遭難。加藤さんのご遺体はその後に発見されたが夫人のご遺体は未だに発見されていないという。享年、26歳の若さだった。

閑話休題。加藤との徹底的な違いは語学だったらしいが (江戸京子に言わせると、英語でもその文法は滅茶苦茶だったらしい)、こんなことでメゲル小澤ではない。金もないが、桐朋学園時代に知り合ったピアニスト、江戸京子の父、三井不動産社長の江戸英雄を通じて、それを調達、三井汽船の貨物船に無賃で乗船、マルセイユで下船し、スクーターでパリに向かう。これは、小澤が書いた「ボクの音楽武者修業」に詳しい。実は、パリに向かったのは、パリでピアノの勉強をしていた恋人の江戸京子に会いたいが為だった。彼女は、後に、小澤の妻となったが(江戸英雄は音楽家同士が夫婦になることに大きな疑問を抱いていた)、離婚してしまう。結局、小澤が再婚したのはモデルだった入江美樹となる(父が白系ロシア人、母が日本人)。

70歳を過ぎてからの晩年は、病気との闘いだった。帯状疱疹、食道癌、大動脈弁狭窄症。それでも、治癒する都度、舞台に立ち続け、指揮をした。指揮者には定年がないとは言え、極めて過酷な最後の十数年だったのではないだろうか。でも、カラヤンやバーンスタインを虜にしたあの人懐こさとか底抜けの明るさは健在だったようだ。小沢が亡くなった2月6日のほぼ2週間前の1月23日、江戸京子も亡くなっている。

小生、小澤の生演奏は、2/3回しか聴いたことがない。いずれも、新日本フィルを指揮したものだったが、なかでも最も印象に残っているのは、モーツァルトの最後の三つの交響曲である39/40/41番を演奏した時だ。あとは、マーラーの交響曲4番、それにストラヴィンスキーの「春の祭典」。そこで、小澤ってなかなか聴かせるじゃないかってんで、早速、缶詰(当時はLPだったと思う)のマーラーの交響曲1番(スタジオ録音)を贖い、聴いてみた。ところが、中丸がいみじくも「スタジオ録音がどこか精彩を欠いて感じられるほどである」と言っているように、小澤の音楽は、聴衆がいる時といない時とでは、その面白さと惹きつける力に雲泥の違いがあることが分かった。中丸は、「彼の音楽は、大勢の聴衆に囲まれることによってその凄まじさが一層発揮される」とも言っている。その意味で、小生が最も感銘を受けたのは、松本で、サウトウ・キネン・オーケストラを指揮したブラームスの交響曲1番だ。これは、YouTubeで聴けるが、それを何回、聴いても、このブラームスは、小生にとっては最高のブラームスだ。これも余談だが、もう亡くなってしまったが、小生の音楽の師匠であった友人は、「お前が小澤は良いって言うのは、あの踊るような指揮ぶりに幻惑されたんじゃないの」と揶揄われたのが懐かしい思い出となっている。

(編集子)文中で触れている加藤さんとは編集子も接点があった。普通部時代、わけもわからないまま、”文学”だとか”詩歌”なんてものにあこがれた時期があって、僕らの時代の名物教諭だった香山さんの主宰する ぶどうの会 というのに首を突っ込んだ。そこで出会った加藤さんはとても1年上、なんてもんじゃなく、及びもつかない大人だったし、彼の話なんてほとんど理解できないレベルで、なまじっか頭でっかちだった自分の幼さに気がつぃてえらくへこんだものだ。アルプスでの遭難事故と知って、なんとも言えない衝撃を受けたことを,気が付かないほどの長い時間を経て、しんみりと思い出す。スガチュー、Thanks.