エーガ愛好会 (131)   帰らざる河とマリリン・モンロー  

 

(中司)本日のBS劇場、帰らざる河。セーブゲキ、と決め打ちせずにモンローが酒場で歌う River of no return  を聞く映画、とお考え下さい。この歌はほかにも歌い手がいますが、モンローの歌い出しがかもす何とも言えない雰囲気はありません。此処だけでも見る(聞く?)価値はありますぜ。

(小泉)この映画の有楽座のプログラムが出てきた。鑑賞時の記録がないが発行昭和29(1954)年8月とあるから、その年に観たのは間違いない。昭和30年大学入学だから、浪人時代でとても映画なんか観ている余裕はなかった筈なのに、マリリン・モンローの魅力の方が勝っていたようだ。それも横浜からロードショウ劇場の有楽座まで。そのプログラムに、当時有名な映画評論家・翻訳家の清水俊二氏が「マリリン・モンロウの素顔」として4頁に亘り書いているが、要は、モンローはエロティシズムだけを売り物にしていない内面的な温かい情感に期待していることが述べられていた。

1954年1月ジョー・ディマジオと結婚、2月に新婚旅行で来日した時の素顔のモンローの印象が強かったようだ。この映画でも、酒場の歌手ケイ・ウエストンとしての色っぽい肢体を見せつけるものの、イカサマ・カード遣いのロリー・カルホーン扮するハリー・ウエストンに対し「一人前の女として認めたのはハリーだけ」と純情さも見せるように、ひたすら可愛いい女を演じている。

先ずは主題歌River of No Returnが素晴らしい。ケン・ダービー作詞ライオネル・ニューマン作曲。タイトル・バックでテネシー・アーニー・フォードが歌い、ラストに近い酒場のシーンでモンローが歌いカントリー・バラード調のセンチメンタルなメロディは美しく響く。モンローはこのほか、酒場でOne SilverDollarとI’m GonnaFile My Claim 宅地の庭と川畔でDown in the Meddowとの三曲を魅力的に歌う。

カナディアン・ロッキーのジャスパーとバンフ国立公園で2か月に亘るロケーションが行われ、大自然を舞台に繰り広げられ、特に帰らざる河と言われる急流を筏で下るシーンは迫力があり、合成場面があるにしても、モンローはじめ俳優たちがよく頑張ったものと感心してしまった。大筋は、開拓者のマット・コールダー(ロバート・ミッチャム)が、妻が死んでから酒場の女ケイ・ウエストン(モンロー)に預けてあった息子マーク(トミー・レティグ)に再会し、帰らざる河といわれる横での農場を開墾にしている際、ケイと婚約者ハリーが筏で漂流しているのを救った。そのハリーは恩人のマットから馬と銃を奪って旅立ってしまう。インディアンの襲撃から逃れるべく父子とケイは筏で、紆余曲折の末目的地カウンシルシティに着く。此処でハリーは買い物をしていた空身のマットを銃で狙うも父親危ふしと見た息子マークが店にあった銃でハリーを殺すことに。過去父マットが友人の危機を救うため咄嗟に背中を射った過去と同じ因果が巡ったのだった。父子とケイは農場での新生活が待っていた。

監督オットー・プレミンジャーは演劇と映画の演出を兼ねている数少ない一人。相手役ロバート・ミッチャムに対しては、モンローが「部屋から簡単に摘み出せないないような、たくましい男のお相手を務めるのは素敵よ」と述べていた。ロリー・カルホーンは二枚目のタフガイで、ヒーロー役悪玉役の双方を器用にこなしたが、どちらかと言うとダーティな裏切り者や女騙しの紐の役等が合っていたかも。子役のトミー・レティグはこの映画までにすでに10本の出演がある人気者だった。

(金藤)M・モンロー さすがの美貌。 可愛かったですし、歌は吹替ではなくて本人が歌っていたのですね! よかったです。 男の子にも優しく歌ってあげていましたね。

河下りでは、ずぶ濡れになりながら筏も操作出来るほど逞しくなってジーンズ姿のM・モンローも格好良かったです。R・ミッチャム 西部で生きて行く男は、女子供も守っていくのですから強くないといけません。 体は逞しそうなのに殴られて倒れ、ピューマと格闘して怪我をして、 M・モンローに手当てして貰えるのでよかったのですが。 魅力的なモンローと同行して “困ったなー“  と R・ミッチャムならではの表情、格好良くない不器用な、でも優しい男を演じるミッチャムも見られてよかったです。 今回はM・モンローの引き立て役と良い父親役。 筏はしっかり漕いでいました。
利発な可愛い男の子、父親と同じ事をしてしまいトラウマにならないとよいけれど、と思ってしまいました。激流の中、筏を漕いで、悪党に出会ったり、インディアンに執拗に追われたり ピューマに襲われたり、多くの場面で特写が使われているのでしょうが、俳優さん達は大変そうでした。 ストーリーは・・・今一つでしたが、最後にまたM・モンローの歌を聞けてハッピーエンドでした。

(保屋野)西部劇?「帰らざる河」初めて観ましたが、

良かった・・①筏によるラフティングシーン ②M・モンローの唄う有名な主題歌                                   イマイチ・・①ストーリーがやや単純。②R・ミッチャムの魅力が「眼下の敵」ほど出せていない。

(安田)主題歌の歌詞は、(Mm‥‥hum・・・)If you listen, you can hear it call Wailerie (wailerie), There is a river called the river of no return. Sometimes it‘speaceful and sometimes wild and free と続く。もしあなたが聴くなら、あなたは呼んでいるのが聴こえます“もの悲しさを”。 彼女が酒場で歌う場面のビデオ映像を添付しました。「Waillerie」の意味が解らず、調べるとWailは嘆き悲しむ、の意。哀愁の感情を“wailerie”の単語に込めて歌ったものと、勝手に解釈しました。

主題歌の作曲はその時代の映画音楽家として知られるライオネル・ニューマン(Lionel Newman)。モンロー主演映画の主題歌をいくつか作曲しています。「億万長者になる方法」「紳士は金髪がお好き」「恋をしましょう」など。有名な「ハロー・ドーリー」も彼の作曲。

(飯田)皆様の感想と同じく、モンローのハスキーボイスはしっとりとしていて良いですね。カナダ山々の景色もきれいで、ミッチャム親子の組合せも、小鹿物語やシェーンを思い出させました。

(関谷)釣られて見ました。うん十年振りに。映画の内容はともかく、M.モンローは魅力的ですね。JFKが熱をあげたのも納得!

(小田)皆様の感想と同じく、モンローのハスキーボイスはしっとりとしていて良いですね。カナダ山々の景色もきれいで、ミッチャム親子の組合せも、小鹿物語 や シェーン を思い出させました。

(編集子)ミッチャムが子供と離れていたのは人を殺して入獄していたからだとわかるが、その時、背後から撃ったという、当時もっとも恥ずべきこととされていたことを知ってマークは父を許す気にならなかったが、最後に自分が父を救うために背後からカルホーンを撃ち、そういうこともあるのだと納得する。

このパターンがメインテーマだったのがロバート・ライアンとジェフリー・ハンターの 誇り高き男 だ。ライアンは保安官時代、丸腰を装って隠し持った銃で彼を撃とうとした男を射殺し、丸腰の人間を撃ったと非難された。その後、移り住んだ違う町で保安官となるが、その殺した男の息子(ハンター)を部下に持つということになる。ハンターはどうしてもライアンを信じられず、一時は彼を撃とうとさえするが、仕事に慣れてきた彼は酒場でやはり隠し持った銃で撃とうとする男を大勢の眼前で射殺する。彼らが厳しい非難の目で見つめるなかで、ハンターはゆっくりと男の懐中から撃鉄を起こした銃を取り出して、無言のまま、それを見せて皆を納得させる。それを見てライアンは微笑し、馬車でまた街を去る。この映画の主題歌はウイキペディアによれば日本ビクターから発売されて、レコード売上は50万枚を超える大ヒットになり、文化放送ユア・ヒット・パレード』で1956年度の年間9位を記録している。”帰らざる河” がヒッパレにランクされていたかどうかは記憶にない。”誇り高き男” の主題歌、ユーチューブでぜひご視聴ありたいものだが。DVD編集子所蔵につき貸出可能。

なお、最近の方はディマジオをご存じないかもしれないが、1939年までニューヨークヤンキースの主砲だった有名なプレイヤーである。引退後サンフランシスコに彼の名前を冠したレストランを持っていて、小生も一度食事したことがある。野球選手としてもそうだが紳士として尊敬されていたよきアメリカ時代のヒーローだった。