エーガ愛好会 (114) 大砂塵と主題歌を巡って

(34 小泉) ジェームス・ディーンの「理由なき反抗1955」フィルムノワールの傑作「夜の人々1948」のニコラス・レイの監督だけに、西部劇でも、男でなく女が主役という異色作となる。主演が当時女優稼業も終わりに近づきつつあった50歳のジョン・クロフォードとその大女優に対立するのは、マーセデス・マッケンブリッジで、「シマロン1960」にも出ていたが、「ジャイアンツ1956」で、ロック・ハドソンの姉を演じた。原題のギターを抱えた渡り鳥ジョニー・ギターにスターリング・ヘイドン。何といっても、ペギー・リー作詞、ヴィクター・ヤング作曲の主題歌ジョニー・ギターの旋律が懐かしくもあり、映画の中に溶け込んでいる。最後に生き残った二人に流れるペギー・リーの歌も良いが、冒頭山道を馬でいくジョニー・ギターを伴奏するメロディーも良い。それと劇中、葬儀帰りの黒ずくめの群衆が酒場に集る緊張の中、白いドレスでピアノで応えるクロフォードが何とも素晴らしい。

荒野の片隅にある酒場が舞台。辺境の風情を醸し出す中、ランプが灯るうら寂しい酒場。女主人ヴィエンナ(ジョン・クロフォード)は、鉄道開通による新しい街作りを期待して酒場を経営しており、そのために過去懇意だったジョニー・ギターを雇うことから物語は始まる。このジョニーとヴィエンナの酒場チーム、ダンシング・キッド(スコット・ブレイディ)率いる強盗チームのバート(アーネスト・ボーグナイン)、ターキー(ベン・クーパー)、コーリー(ローヤル・ダン)の4人組、エマ(マーセデス・マッケンブリッジ)率いる牧場主たち鉄道建設反対住民グループ(代表ワード・ポンド)が三つ巴の構図で渡り合う。何故エマが。これほどにヴィエンナを憎むのか。鉄道への反発もあるが、色男ダンシング・キッドを巡ってのエマの嫉妬からくる憎悪が狂気を駆り立てたようだ。エマの酒場のランプを落とし焼失させた満足気な得意気な顔、マーセデスの演技力もなかなかのものだった。

女の憎悪を下敷きにした女性ふたりの演技に対し、団体の動きとなると意思の弱いアウトローになり下がり、煽動されリンチに走るかと思えば、いざ吊るし首の執行となるとその役をたらい回しする等情けない面ばかりだったが男たちも夫々の演技力を発揮している。しかし 何といっても、ジョン・クロフォードのための映画で、途中火事の場面やら川を渡る場面やらが出てくるが、それら全てが衣裳替えのための口実だった。白いドレスでピアノを弾いたと思えば次は赤、次は黄色と洋服の色が変わる。この映画はカラーだがテクニカラーではなく、制作会社リパブリックのトウルーカラーという低予算のフィルムで作られているが、テクニカラーと遜色ない色彩の峻別がみられた(余談になるが、一時西部劇を中心にシネカラーで作られたものもあったが、色彩などというものではなかった)。

最後は、キッドの隠れ家での戦いとなり、キッド一味の若者ターキーが騙され縛
り首にされ、ヴィエンナも危なかったところジョニーに救われキッド一味の隠れ家へ。バートの裏切りからエマを導き入れてしまうが、裏切りに入らないコーリーはバートに殺され、バートもジョニーに撃たれる。エマはヴィエンナを殺そうとして、キッドともめ、キッドは殺されてしまう。エマが撃った弾はヴィエナの腕に命中するが、ヴィエナの弾はエマを殺し女の闘いは終わりを告げる。

(編集子発信のメール)僕らが高校時代には今のように多彩なメディアがありませんでしたから、映画の主題歌やテーマソングがそのままヒットチャートを飾るのはごく普通でした。器楽曲ならば、かの 第三の男 や 禁じられた遊び 現金に手を出すな、避暑地の出来事 に 史上最大の作戦 のマーチなどが代表的だったでしょうが、主題歌そのものが歌われたというケースはあまり数がなかったように思います。

その中では シェーン の Call of the faraway hills や 真昼の決闘 Do not forsake me とならんで 大砂塵 の主題歌 Johnny Guitar は ペギー・リー が歌って、哀調を帯びたけだるいトーンが好評でした。実は今日は張り切ってゴルフの練習に行くつもりをしてましたが朝刊でこの放映を知り、予定変更してこれで三度めだと思いますがエーガにしました。これが終わると17時には大岡越前第15部(!)、22時にはごひいき(スガチューは嫌いらしいが)山本耕史の居眠り磐音と、小生にはめずらしくテレビの日になりそうです。映画の筋そのものは言ってみればB級西部劇ですが、しいて言えば女二人が最後に対決する、というのが売りで、放浪のガンマンスターリング・ヘイドンはギターを担いだ引き立て役です。そういえば最近、小林旭の ギターを持った渡り鳥、なんて思い出しましたが、ひょっとしてこれ、大砂塵 の焼き直しかなあ?

(42 保屋野)大砂塵観ました。俳優陣はパットしない映画でしたが、ストーリーはまあまあ面白かった(少々変わった)西部劇でした。さて、映画より有名になった主題歌「ジャニー・ギター」ですが、昨年実施した「映画音楽ランキング」で使った映画音楽リストを見て大砂塵のように、映画とは独立して大ヒットした「主題歌」を探してみました(ミュージカルやディズニーは除きます)。

①   ジャニー・ギター(大砂塵)②モア(世界残酷物語)③ケ・セラ・セラ(知りすぎていた男)④死ぬほど愛して~アモーレ・ミオ(刑事)⑤   サウンド・オブ・サイレンス(卒業)⑥ムーン・リヴァー(ティファニーで朝食を)⑦マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン(タイタニック)~歌ではないのですが・・・⑧魅惑のワルツ(昼下りの情事)⑨禁じられた遊び(同名)⑩追憶(同名)

(飯田)映画「いそしぎ」のテーマ曲:The Shadow  of Your Smile(アンディ・ウイリアムスが歌う)「ヘッドライト」のテーマ曲なんかも流行ったと思いますがリストにありますか?

(編集子)この 大砂塵の主題歌は当時のジャリタレ歌手が歌いましたが、みんな ジャニーギター、と発音してあたかも英語通みたいにしていました。これはペギーの発音に影響されたのだと思います。当時、僕らには高根の花だったウイスキーの最高峰(勝手に思ってただけで要はほかのブランドを輸入する業者があまりいなかったのだと思いますが)とされていた Johnny Walker は ジョニ赤やジョニ黒であった、ジャニーウオーカー と呼ぶ人はいませんでしたな。

(ウイキペディアから)小林旭主演でヒットした『渡り鳥シリーズ』で、主人公のトレードマークがギターなのは『大砂塵』の影響だといわれている(キャラクターは『シェーン』の影響)。なお、1960年に封切られシリーズ中最も西部劇のムードが濃い『大草原の渡り鳥』において、小林旭は『大砂塵』のスターリング・ヘイドンとほぼ同じデザインのフリンジウェスタンジャケットを着て登場している。