”とりこにい”抄 (7) 八甲田 – 忘れられない夏

KWVでわれわれの1学年上、35年卒の方々が卒業60周年記念の同期会(野郎会)をt特に ”拡大野郎会” のネーミングで八甲田夏合宿の思い出をテーマに、ゆかりある先輩後輩を糾合する、という企画をたてられた。大いに楽しみにしていたのだが、憎きウイルスのため延期されてしまった。当初の予定は4月9日であったので、その日に僕の八甲田合宿での想いを書かせていただくことにした。

合宿、解散の朝。

ワンダーフォーゲル部生活3年の夏、現役部員として一番脂の乗りきる時期。僕らの場合、このときに八甲田合宿という歴史的な企画に参画できたのは心底、幸運だった。過去、ベースキャンプ方式で運営されてきた夏合宿を、分散集中方式に切り替え、実行に移された荒木総務以下、35年卒の先輩の皆さん (現在の ”野郎会” メンバー)の決断とそれを実現させたたぐいまれな結束力にただ感謝するばかりだ。この方式は以後、KWVのお家芸として定着し、僕らが主宰した木曾開田高原合宿はまさに ”八甲田の再来” を目指したものだった。

開田高原のベースキャンプまで、わざわざ休暇を取って参加してくれた荒木さんに、”ジャイ、うまい所見つけたなあ” と褒められて本当に嬉しかったことを思い出す。”ショッペイさん” のあまりにも早かった旅立ちがあらめて悔しい。

その時の ”ふみあと” 特集号に、編集を担当された吉沢さんに命ぜられて巻頭のページに掲載していただいた詩まがいのものがある。2018年8月、本稿で ”山のあなたに” として書いたのだが,山戸先輩に ”カール・ブッセみたいなもの” とからかわれたのがこれである。同期の文集を編纂した時、横山美佐子に強く勧められて再び、巻頭詩とさせてもらった。やはり同期一同、”八甲田” の印象は生涯わすれられないもののようだ。

 

八甲田の夏

 

あの時 教わった星……..

ヴエガだっけ ?

どこにあるのか もう忘れちまった。

いっぱいあるからなあ 星なんて。

星だらけだっけな……..

八甲田の夜は。

黒かったっけな……

八甲田の夜は。

もう一本 薪を持って来いよ。

もっと 火の粉を 飛ばすんだ。

何故?

さあ…….

あの夜の 火も こんな 色だったからな。

おかしいかい ?

でも 想い出って いいもんさ。

そっと しまっとくんだな、おたがいに。

 

(36 高橋)
なつかしい写真。私どこにいるかお分かりになりますか?
コロコロ太っていて健康優良児だったわねェ。

つい先頃まで笑い興じもした、大騒ぎもした、遅くまで酒を飲み、夜更かしもした、気のおけぬ連中と。
でも、もうみんな消えてしまったのだ、あの昔の懐かしい顔は。
いとしい人も去ってしまつた。       チャールズ・ラム

風が立つ、生きようとつとめなければならない。  ポール・ヴァレリー

(38 町井)八甲田の夏合宿は私にとっても一番忘れがたい合宿です。テンテンさんリーダーで、東北の東海岸を尻屋崎まで歩きました。途中、小舟に乗って、船上でビーバーさんから「海女の子供」を歌唱指導して頂きました。体力不足でしたので、重いキスリングで肩から腕がつり、一緒の班にいらしたドテさん(医学部5年生?)にお世話になりました。そして、何と言ってもインディアンごっこです。牧場のような広い野原の両端に陣地を作りました。あまりに広いので、敵の顔は良く見えませんでした。間にある灌木に隠れながら、敵の陣地に忍びこもうとしました。まだ一年生でしたから、大人のような大学生がインディアンごっこを大規模に、ダイナミックにしていることに驚きました。そして、このクラブは楽しいクラブに違いないと思い、続けることになり、今も楽しんでいます。この夏で57年間です。

自粛疲れは散歩で解消しよう! (34 小泉幾多郎)

 先月から引き続き、下村君の先輩からのコロナ情報、船曳ドテ先生のコロナ講義、米空母艦長解任、英女王スピーチ・・・新型コロナウイルスに関する貴重なるブログ投稿を有難く拝受することが出来ました。

当然のように、今年の花見は、団体は勿論、遠出も無理、歩いて行ける範囲として、近所の鶴見川堤の新横浜付近を歩きました。お彼岸の頃の赤い横浜緋桜はすっかり消え、そろそろ終わりに近ずきつつある白いソメイヨシノを楽しみました。

米国空母艦長解任事件と我が国のコロナ対応について

色々と情報が飛び交い、穏やかならぬ事情のもとで今朝、緊急事態宣言が発表された。この実施までの過程とか,検査体制の問題とか、いろいろと批判も多いが、小生は今までの政府の対応は日本人の道義心、公共心などを前提にした、この国ならではのやり方だったのではないか、と評価してきた。ただ物理的な問題で医療崩壊を防ぐ意味で実施された一連の措置は万、やむを得ない事だろうと納得する。そこへ今朝、コロナ問題の米国でのありかたについて生々しい情報を届けてくれている、サンフランシスコベイエリア在住の友人五十嵐恵美から違った視点から新しいメールが届いたので、その一部をご紹介する。

異常時にあって、軍や警察や罰金などと言う強制力を待たずとも、おのずと社会のバランスが取れる、その基本にあるのは、ビジネス万能なんでもグローバル、と唱える人たちからは批判が絶えないが、個人ベースの上に社会の価値を考える,”思いやり” の文化の価値が示されているからだろうと思う。本稿で紹介したかどうか忘れてしまったが、東日本大震災の時の ”トモダチ作戦” で現地に赴いた米軍の司令官は、被災者たちの逆境に会っても列を乱さず公共心を忘れない、日本人の在り方に深い感銘を受けた、と言ったそうであるし、古い話だが、阪神淡路大震災の直後神戸へ赴いたとき、崩壊した道沿いにある高級車の露天展示場が全くあらされることもなく無傷で残っているのを見て日本人の道徳心を改めて見た気がしたのを思い出す。

以下、彼女からのメールの抜粋であるが、後半にあるAFPの記事は翻訳も整っているので、ぜひご一読をお勧めする。古い映画だが ”ケイン号の反乱” を思い出すような事件、と言えるかもしれない。

(五十嵐―中司)国の緊急事態宣言、東京都の緊急事態措置の案の公表、等、ウイルスに関する対応が「やっと」始まったという感じですが、その後、いかがお過ごしでしょうか.カリフォルニアのShelter-in-place order (自宅避難勧告) は4月7日に終了の予定でしたが、州の公表を待たずにBay Areaのサンフランシスコ、サンマテオ、サンタクララ郡を含む6郡 (カウンティー) が、それを一ヶ月延長し、5月3日までStay at home order (自宅待機命令)を4月1日に発令しました

3週間前に友人から「そちらは急激に状況が変化しつつあるようですね.というか、一挙に対策をすすめる、というのはやはり軍隊をもっている国の行動様式かな、と思います」というコメントをもらい、その件、色々考えていました.そして (すでにご存知だと思いますが) 今回の「米海軍の原子力空母セオドア・ルーズベルトにおける新型コロナウイルスの流行で、軍の対応が不十分だと訴えていた艦長が2日、解任された」という事件です.サンフランシスコ  クロニクルに (艦長が上層部にあてた書簡も含めて) 全容が載っていますのでご覧ください(https://www.sfchronicle.com/bayarea/article/Exclusive-Captain-of-aircraft-carrier-with-15167883.php?campaign_id=49&emc=edit_ca_20200406&instance_id=17380&nl=california-today&regi_id=117711487&segment_id=24008&te=1&user_id=6adebc50299062468e5c9126fd05ca53#photo-19240172

AFP=時事 (AFPはフランス系のNews Agency)には日本語で比較的艦長に心情的な(?)記事が載っています(https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E8%A7%A3%E4%BB%BB%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E7%B1%B3%E7%A9%BA%E6%AF%8D%E8%89%A6%E9%95%B7%E3%80%81%E4%B9%97%E7%B5%84%E5%93%A1%E3%81%AE%E5%A3%B0%E6%8F%B4%E5%8F%97%E3%81%91%E4%B8%8B%E8%88%B9/ar-BB129D6l

クロージャー艦長の行動に対する賛否両論、多々聞かれますが、原子力を搭載している空母の艦長がChain of command  (指揮系統)を無視して公式の国防省の上層部への書簡を自らミディアにリークするというのは原則的に問題だと私は思います.  恐らく、解任を覚悟での行動だとは思いますが、メディアを利用したアメリカ式「腹切り」とでもいうのでしょうか.

新型コロナウイルス感染症  (34 船曳孝彦)

 KWV三田会の皆さん、このブログ掲載、下村君発の情報は、ジャイさん、菅谷君のやり取りを見て、発信元が確りした人だと分かりました。大変価値のある文章ですので、よく読んでください。

人類のウィルスとの戦いは有史以前から続いていたもので、天然痘のように勝利を収めた疾病もあり、スペイン風邪のように負けではあっても完全に収まった疾病もあります。収まったということは、下村情報にもある集団免疫閾値が高まったためです。

今回のウィルスは、中国に始まり、日本、韓国に伝播した後、世界に広まり、WHOで早々とパンデミックとの発表がありましたが、遅れて始まったイタリアに於いてはアッという間に急増し、医療崩壊も伴い、他所と比べて2倍以上の死亡率(スペインも同様になりました)となりました心配なことは、あれだけ中国が進出しているアフリカの感染率、死亡率がさほど高くないことです。十分なデータが出ていないからだと思いますが、はっきり表に出てくるととんでもない数値となるような気がします。

ウィルスの流行には、第1波で世界的に広まり、治まるかなという時期に第2波の流行が来て、この時は遺伝子変異があり拡散力、悪性度が強くなって多くの死者が出る。その後第3波、第4波と、ワクチンの助けも借りつつ集団免疫閾値を獲得して治まる、という経過をたどることが多いとされています。

TV,新聞に出てこないので(何故か分かりませんが)これは私見ではありますが、イタリアでの感染爆発は第2波の始まりではなかったか、ということです。つまりイタリア、スペインで流行しているのは変異した悪性度の高いウィルスで、これが日本にも入ってきて最近の爆発的流行となっている可能性があります。帰国者の感染が増えています。

東京都の感染者数を実数で見るだけでなく、グラフ上右端が急速に跳ね上がって見えると思いますが、これを片対数グラフにプロットしてゆくと、直線的となります。この直線が3月24日を境に急傾斜となります。これぞパンデミックに特徴的な感染爆発です。私は2,3日前までは爆発寸前といってきましたが、最早爆発は始まっているようです。私の友人の科学者は、もしこのままの勢いを止めることが出来なければ、何と4月29日には感染者32,000人、死亡者1,000人に達すると警告しております。

大変な事態です。メディアでは早く非常事態宣言を出せといっておりますが、

国民の間にそれほどの危機感はないようです。私は独断専行・強権指向の安部に握られることに不安はありますが、国民の意識レベルアップには必要かもしれないと思うようになってきました。

ではどうすればよいのでしょう。拡散力はSAARSの68倍とのことです。各人それぞれが、【罹らない・移さない】を徹底して守ることです。

国・行政のやるべきこと:

  • PCR検査をどんどんやること 恐らく今までごく限られた人しかやっていないので、最初は爆発的に感染者数が増えるでしょう。しかし本当は感染者が増えたわけではないのです。感染していても知らずに周囲の人に移しまくっていただけです。低検査率はアメリカ、WHOの日本不信を買っています。一説にオリンピック中止にならぬよう数値を抑えるため検査を制限していたという噂があります。もう1年延期となったので早く徹底検査をすべきです。

加えて、まだ正規に認められてはいないにせよ血清診断を行うべきです。

  • 軽症者、無症状者のホテル収容がやっと始まるようですが、この増加率から見て到底足りません。オリンピック選手村や報道陣用宿舎など、ちょっと手を加えれば使えるところも多いでしょう。今までの“自宅待機“がどの程度自粛が守られていたか疑問で、感染者増大の一因になりかねません。
  • PCR検査希望者が電話で断られたり、電話がつながらなかったりの一因となっているのは、保健所崩壊です。この数年保健所は数も減らされ、人員も削減、予算縮小が続いてきました。今のような危機に対応するような体制は取れません。本来無理強いしているのですし、業務多忙でパンクしていますので、至急人員も予算も手当てすべきです。
  • 感染爆発とともに医療崩壊が起こります。起こる恐れでなく確実に起こります。国・都道府県・大学病院・公的私的医療機関・開業医(医師会)が早急に議論を煮詰め、医師派遣を含めた大号令を発するときです。
  • 他のウィルス薬などで、効いたという報告があれば積極的に試用、研究すべきです。もちろん公的に認めるためには時間を要しますが、その前に弾力的に用いるべきです。
  • とにかく国の政策を見ていると、海外で笑われているアベノマスクなどでなく、医療側の意見を入れた金の使い方をしてほしいものです。

われわれがやるべきこと:

  • 外出自粛。とくに3密を避けること。従って各種の会合が出来なくなります。誰が保菌者(ウィルスですから菌ではありませんが)か分からないですし、あなたがそうかもしれません。飲酒は自宅に限りましょう。
  • 外出時には、混雑を避け、なるべくあちこち手を触れないで、区切りごとに手を消毒するか石鹸で洗いましょう。
  • マスクは通常のものではウィルスは通過してしまいますが、少なくとも不意のくしゃみ対策にはなりますので、必須です。
  • デマ拡散、差別、風評被害、買い占めなど理性的に考えて行動しましょう。

この感染はいつまで続くのでしょうか。誰にも分かりません。2,3か月で終息するとは思えず、1年以上続きそうです。下村情報にもありましたが、マラソンが始まったところですので、長期戦に対処すべく、体力的にも精神的にも鍛えながら過ごしましょう。

  • 山歩き、ゴルフ、ウォーキング(人通りの少ない)は絶好の体力保持、精神的リラックスになります。体力保持のため、私は自宅引きこもりの日は階段トレーニング(500段)をしています。
  • クラス会など私自身が幹事、世話役をしている会合もみなキャンセルとなりました。メールや電話でコミュニケーションをとっています。

以上84歳で公的な発信力もなく、現場でも役に立ちそうにない医師として、皆さんに多少お役に立つことがあればと書きました。

 

コロナに打ち勝とう―英国女王のスピーチ (44 安田耕太郎)

(メルケルのメッセージに続いて、エリザベス女王のスピーチである。長文でもあり、多くの写真なども参考になると思われるので、ここでは投稿者安田君からのメールをそのまま転載する。折も折、今夕には安倍首相の重大発表があるとのことであり、わが国の指導者の在り方と比べてみたい)

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既にご存じかもしれませんが、念のためご参考までに。
今更英語の勉強ではありませんが、エリザベス女王のスピーチを是非お聞きください。欧米のリーダーは国民に向けてよく発信しますね。特に国難に際しては。
民主主義体制下のリーダーの役割と責任、国民に対するコッミュニケーションの大切さをよく認識して実践しているようです。天皇陛下がこのようなスピーチ
をするとはとても想像できません。

コロナウイルスについての知識を! (42 下村祥介)

 ゼミの先輩が送ってくれました。他の仲間にも知らせてよいとのことですので転送します。ご参考まで。

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最近、知り合いの開業医から、「季節性のインフルエンザでさえ毎年60万人の人が世界で死亡しているのに、なぜ新型コロナウイルス(まだ2万人しか死亡していない)でこれほど世界中が大騒ぎしているのか?」という質問を受けました。

確かに政府の説明を聞いているとオーバーシュートとか感染爆発の危機が目の前にあるので、ひたすら自粛に協力してほしいというだけで、なぜこのまま放置しておくと、どのように大変なことになるという具体的な説明がありません。いかに深刻であるかという事実をよく説明した上で、だからこそ、そのような深刻な事態に陥らないために対策するのであると、訴えなければ説得力はないと思います。また本当は1万メートル競争、あるいはフルマラソンなのに100メートル競争のように全力疾走をすると、フルマラソンはもちろん1万メートル競争も完走不可能です。COVID-19との戦いは100メートル競争(水際作戦は100メートル競争です)ではなく、パンデミックになった現時点では、1万メートル競争、あるいはフルマラソンであることを認識する必要性があります。ペース配分を十分に考えて走る(対策を立てる)必要があると思います。

 

1)前書き

昨年12月に中国で発症した新型コロナウイルス感染症( COVID-19)は当初中国政府が情報公開せず、また事態を甘くみていたこともあり、瞬く間に武漢を中心に中国に広がりました。その後ダイヤモンドプリンセス号の感染症騒ぎがありました。2月24日に開催された専門家会議が、今後1−2週間が瀬戸際であるとアナウンスしました。その後学校の休校が始まりました。ヨーロッパ、特にイタリアの感染拡大にも関わらず日本はなんとか押さえ込みに成功した感がありました。しかし最近は日本全体に気の緩みがでて危険な状態にありました。

そのような中で、大阪では3月20−23日の3連休は大阪と兵庫県の行き来の自粛要請が大阪府知事よりありました。3月25日には東京都知事が緊急記者会見を開きました。そして26日に政府が対策本部を設置し、いつでも緊急事態を宣言できる体制を整えました。このように、今、日本は感染爆発の瀬戸際にあります。

世界に目を向けると中国に端を発した感染流行は今やヨーロッパに広がり、イタリアでは医療崩壊が起こり死者は中国の2倍以上になりました。そして流行地はアメリカに移りつつあります。世界で44万人が感染し死者は2万人以上になりました。インドは13億人の国民の外出禁止、移動制限を発令しました。中国が情報公開しなかったのがそもそもの原因ですが、欧米やWHOも当初甘くみていた節があります。おそらく以前の新型インフルエンザ、SARASやMERSのように封じ込めに成功すると考えていたのではないかと思います。しかし、封じ込めに失敗し、世界にウイルスが拡散してしまい、もはや後戻りができない状態にまで進展してしまいました。

では、なぜ新型コロナウイルス感染症は恐れられているのか?季節性インフルエンザとなにが異なるのか?

まず、心理的な側面があります。季節性インフルエンザはワクチンと治療薬がありますが、新型コロナウイルスに対してはワクチンも治療薬もありません。人は、自分でコントロールできないことに対しては漠然と不安を抱きます。しかし、単に心理的な側面だけではなくもっと重大な客観的な事実があります。

人類の歴史は感染症との戦いであったと言っても過言ではありません。中世ヨーロッパでは人口の50%近くがペストの流行で死亡し、ヨーロッパの中世封建体制が崩壊しました。アステカ文明やインカ帝国の滅亡も感染症が大きな原因となりました。16世紀当時、北米や南米には天然痘がそもそもなかったので、現在の新型コロナウイルスのように人々は免疫がありませんでした。一方、ヨーロッパ人では天然痘の流行がしばしばあったのである程度免疫がありました。わずか200人のスペイン人兵隊のなかで一人が天然痘にかかっていました。この一人からインカ帝国2000万人にあっという間に天然痘が広がり半数近くの人々が死亡したと考えられています。そして、インカ帝国は1年でスペインに降伏しました。新型コロナウイルスは当時のインカ帝国の人にとっての天然痘に相当します(もっとも天然痘の致死率は50%ぐらいなのではるかに危険ですが)。 

2)結論

1)何もせずに放置すると終息するまでに、日本では最悪、70万人から250万人、世界では1.9億人が死亡する。この数字は第二次世界大戦の死亡者(世界全体で6000~9000万人、日本では300万人)に相当するかそれを上回る。

2)ワクチン開発は終息を早めるための要だが、開発に少なくても2−3年あるいはそれ以上かかる(1年で可能というのは気休め)。

3)治療薬の開発により死亡者の数を減らすことができるが、新しく治療薬を開発するためには5~10年はかかる。既存の治療薬の中に効果があるものがあれば最短数ヶ月以内に治療現場で使用可能になる可能性がある。

4)今後、終息までに1−2年はかかるので、長期戦(1万メートル競争)と考えて心の準備や日常生活を可能な限り正常に続ける工夫、そして仕事も可能な限り正常な活動ができる個人的な工夫(会社/組織/国としての工夫は当然必要)をしていかなければならない。この間、各地域では流行の波を起こしながら、世界中のどこかで流行している状態が続く。したがって日本で流行が終息したとしても海外からウイルスが流入するし、国内でもまた流行が起こる。このように流行の波を作りながら最終的に国民の30−60%が感染して免疫を獲得するまでは終息はしないと考えられる。

5)個人的には、感染防御に努める。まずは丁寧な手洗いを頻繁に行う。可能な限り家庭に持ち込まないように玄関でアルコール(70%エタノールか0,05%次亜塩素酸)で手を消毒してから家に入り、さらに石鹸で丁寧に手洗いする。食事の前、料理の前、その他機会があればこまめに石鹸で手洗いをする。もちろん勤務先でもいつもより頻繁に手洗いする(可能な限り石鹸で)。

6)3条件を避ける。密閉空間(換気をする);近距離での会話;手の届く距離に多くの人がいる。

7)このウイルスは細胞膜が脂質でできているので界面活性剤(石鹸)で簡単に破壊される。また飛沫感染なので以上の3条件を守るとともに、手洗いを頻繁に行えば感染するリスクを限りなくゼロにできる。

8)日頃の生活において睡眠を十分にとるとともに、過労を防ぎ、栄養価の高い食事に心がけて免疫力を十分に維持することを心がる。

9)幼児や若い人は発症しないか軽症ですむという点は、未来に希望がある。しかし幼児や若い人でも重症者や死亡者が出ているので安心はできない。一旦重症になれば人工心肺を装着しなければならないほど危険な状態になる。

10)幸いにもはしかのように空気感染ではなく、飛沫感染なので、手洗いを励行して、3条件を厳格に実行すれば感染は防ぐことが可能。過度に恐れる必要はない。あくまでも冷静な行動が求められる。 

3)結論に至る理由

1)死亡率が高い(季節性インフルエンザは0.1%に対して新型コロナウイルスは4.6%(0.5%~10%))

季節性インフルエンザは確かに世界中で25−60万人が毎年死亡する。また日本でも3000人から1万人が毎年死亡する。日本では毎年1000万人ぐらいが季節性インフルエンザに感染していると推測されています。すなわち死亡率は0.1%です。これに対して、新型コロナウイルスでは死亡率は現時点で世界の平均値は4.6%(20308/440295X100=4.6%)です。もちろんドイツの0.5%から医療崩壊に落ちいっているイタリアの10%までそれぞれの国の医療体制などの異なりにより死亡率は異なりますが、世界中を平均すると現在4.6%です。ちなみに日本では3.5%です。PCR検査を増やせば日本国内の感染者数が増える結果、死亡率は減るとは思います。

2)ワクチンが存在しないことの意味

免疫学的にはこのような感染症が終息する条件は集団免疫閾値(Herd immunity threshold;ワクチンや自然感染により集団が免疫を獲得する割合)で決まります。この割合は以下の式で決まります。

H=(1-1/Ro)x 100

H:herd immunity threshold(集団免疫閾値)

Ro: basic case reproduction rate(一人の患者が何人に感染させるかの数)

例えば、新型コロナウイルスのケースで、Roを2.5人とすると、(1-1/Ro)x 100=(1-1/2.5)x100=60%となります。もし1.5なら33%です。1なら、0%となり感染が集団に広がることはありません(一人が一人に感染させても、元の人は免疫を獲得して治癒するか、あるいは死亡する)。1.1人以上なら感染が集団全体にひろがり、Roが大きければ大きいほど集団免疫閾値は大きくなります。

通常はワクチン接種と自然感染の両方合わせて集団免疫閾値を獲得すると感染が終息に向かうことになります。しかし新型コロナウイルスに対するワクチンが現在存在しないという状況下では、約6割の人が自然感染して免疫を獲得しなければ終息に向かわないことになります。これが、イギリスやドイツの首相が1−2年かけて、国民の6−7割が感染するだろうと言っている根拠です。 

現実的な問題として、何もせずに放置すれば急激に感染者が増加する代わりに終息に向かう期間も短くなりますが、その間に多くの人が重症となり医療機関が対応できなくなり、その結果としてイタリアで起こっている医療崩壊により多くの人が死亡することになります。これを防ぐために、隔離などで感染の広がりのスピードを穏やかにしていくという政策が様々な手段で講じられています(テレワーク、自宅隔離、イベント中止、都市封鎖や広域地域封鎖など)。

今回の新型コロナウイルスのケースでは、ワクチンがないので、60%の人が感染するまで終息しないことを意味します。これを日本に当てはめると1.2億の60%すなわち7200万人が感染しなければ終息しません。死亡率を仮に1%としても72万人がなくなります。3.5%なら252万人が亡くなる計算になります。世界の人口を仮に70億とすると、42億が感染し、1.9億人(死亡率4.6%とすると)が死亡することになります。 

ワクチンが存在すれば多くの人に人工的に免疫を付与できますので、当然感染して発症する人は激減します。現在の季節性インンフルエンザはワクチンと自然感染を合計して免疫のある人の割合が集団免疫閾値(季節性インフルエンザでは33~50%)を達成することにより感染者の数がある一定以内に抑えられています。 

以上のように、たとえ死亡率が高くてもワクチンがあれば集団免疫閾値をワクチンにより達成することにより発症者の数を減らすことにより死亡する人の数を減らすことができます。このようにして人類が克服した典型例が天然痘です。人類の歴史に脅威を与えていた天然痘はワクチン開発により20世紀に世界から撲滅することができました。 

ちなみに、様々な感染症のRoは以下のようです。

新型コロナウイルス:1.5~2.5—>H=30%~60%、

季節性インフルエンザ:1.5~2->H=33%~50%

はしか:12~18—>H=92~94%

百日ぜき:5~17—>H=80~94%

天然痘:5-7—->H=80-86%

 

感染症の脅威は、死亡率とRoにより決まります。さらにワクチンがあれば集団免疫閾値を達成することが容易になります.

3)治療薬がないことの意味。

抗ウイルス薬があれば感染しても軽症で済みます。また重症呼吸器不全の治療薬があれば死亡者の数を限りなく少なくできます。治療薬はウイルス感染により引き起こされる病態を軽減しますが、治療薬がウイルスを完全に追い出すわけではありません。治療薬には、1)ウイルスの増殖、2)ウイルスの細胞へ感染、3)細胞内からウイルスが出る(結果として他の細胞に感染)、などのそれぞれのステップを抑制する抗ウイルス薬や、重症呼吸器不全の治療薬があります。抗ウイルス薬は体内でのウイルスの増加速度を抑制することができますが、単独でウイルスを完全に追い出すのは無理です。例えば、生まれながらに免疫を欠損している人は、あらゆる抗生物質や抗ウイルス薬を使用しても一年以内に感染症でなくなります。では、抗ウイルス薬はなにをしているかというと、ウイルスの増加速度を抑制して、免疫が活性化するまでの時間稼ぎをしています。最後に免疫が働き、ウイルスを体から完全に追い出します。すなわち治療薬はあくまでも免疫が活性化されるまでの間、時間稼ぎをしているにすぎません。もちろん、治療薬があることにより死亡率を著しく下げることができるので、1日も早い治療薬の開発が望まれます。ということで、日頃の生活において睡眠を十分にとるとともに、過労を防ぎ、栄養価の高い食事に心がけて免疫力を十分に維持することを心がけてください。 

最後に、

新型コロナウイルス感染症の深刻さを理解していただけたと思います。やはり現実を見据えて行動をすることが重要です。新型コロナウイルスの深刻さに関して私の見解が間違っていれば良いとは思いますが、現実逃避は避けなければなりません。少なくとも言えることはこの先1−2ヶ月で終息するものではないと言うことです。以上の私の見解が誤りであり、夏には世界中で終息していれば本当に良いと思いますし、そのように心から願っています。しかし覚悟はしておかなければなりません。そしてそのことを頭に考え、行動しなければなりません。

しかし、幸いにもはしかのように空気感染ではなく、飛沫感染なので、手洗いを励行して、3条件を厳格に実行すれば感染は防ぐことが可能です。過度に恐れる必要はありません。あくまでも冷静な行動が求められます。

 

こちら仙川、春うらら

仙川駅前に数本、ソメイヨシノが植えられている。数年前、駅前整備計画があってもう少しで伐採されるところだったのを、住民が反対して計画を変更させて保存に成功した、地元の自慢のひとつである。4,5日前にほぼ満開と思っていたが、雪が幸いしたのか、今日も見事な咲きぶりであった。

住民の勝利!を記す標識

この桜のいきさつを説明した標識を写そうと思ったのだが、前にベンチに座っていたご老人に話が通ぜず、動いてもらえなかったので,良き市民として振る舞い、斜めから遠慮して撮影した。

桜が元気だと街も元気なのか、なじみのとんかつ屋はこのご時世だというのにアルバイトを募集していた。タクシーの運転手さんたちも何だかのんびり構えている、春のひるさがり、だった。

僕の推理小説遍歴  (36 後藤三郎)

ブログに貴兄の探偵小説に関する興味ある投稿を読み、私も小学校高学年から中学時代に読み漁った探偵本を紹介したいと思います。私の場合は母親が近所の貸本屋から借りてきて姉と三人で乱読して”あれは面白かった”などとお互いに感想を言いました。貸本屋は週単位でいつも3冊ほど借りて週末には読み終わって返却し、その足で次の本を借りるという有様でしたので記憶に止めるのは大変です。それでも気に入った別冊”宝石”の世界探偵小説全集だけは今でも本棚に飾ってあります。途中の2-3冊は紛失しましたが:1.アガサクリスティー
2.F.W クロフツ
3.E.フイルポッツ
4. L.J.ビーストン・G.K チェスタトン
5.シメノン他フランス編
6.E.S ガードナー
7.E.クイーン
8.スカーレット ヘキスト
9.ヴァン・ダイン
10.チャンドラー
11.D.R.ビガーズ
12.デクソン・カー

がそれぞれ傑作と思われる代表作の作品が収められており大切にしています。私の場合はコナンドイルに魅入られてしまいシャーロックホームズの原本を全てそろえ、延原謙という方の新潮社からの名訳本10冊と英語の方と比較しながら読みました。丁度普通部時代に日本では何故か一切本に訳されていないホームズの一編を夏休みの宿題として全訳しました(The Reigate Squire/Puzzle)と言うタイトルです。コナンドイル博士にはその後も興味がありシャーロックホームズが引退後の小説やミツバチの研究などやっていた話なども読みました。今でもBBC/TVでホームズは色々と俳優も変えて制作されて出てきますが全く飽きなく楽しんでいます。英国出張の折にはわざわざベーカー街221乙(ホームズの家)を訪ねまた”思い出”の最後に悪党のモリアテイ教授と格闘しながら落下したスイスのライヘンバッハの滝まで見に行きました。私はハードボイルドのものは”大いなる眠り”など数編でしたが亡くなった畠山さんがチャンドラーをこよなく愛していたことを思い出します。探偵小説はいずれにせよ面白くいつまでも楽しく読んでおります。取りあえずキリがないのでこの辺で辞めます。

コロナ問題についてメルケル首相のメッセージ (36 浅海昭)

欧州全域に拡大したコロナ感染の中で深刻な状態にあるドイツで、国民に充ててメルケル首相が送ったメッセージを友人から送ってくれたのでご紹介する。

メルケル首相の国民あてメッセージ

現在、コロナウィルスは私たちの生活を著しく変えています。日常生活、公的生活、社会的な人との関わりの真価が問われるという、これまでにない事態に発展しています。

何百万人もの人が職場に行けず、子供たちは学校や保育施設に行けない状況です。劇場、映画館、店などは閉鎖されていますが、最も辛いことは、これまで当たり前に会っていた人に会えなくなってしまったことでしょう。このような状況に置かれれば、誰もがこの先どうなるのか、多くの疑問と不安を抱えてしまうのは当然のことです。

このような状況の中、今日、首相である私と連邦政府のすべての同僚たちが導き出したことをお話ししたいと思います。

オープンな民主主義国家でありますから、私たちの下した政治的決定は透明性を持ち、詳しく説明されなければなりません。決定の理由を明瞭に解説し、話し合うことで実践可能となります。
すべての国民の皆さんが、この課題を自分の任務として理解されたならば、この課題は達成される、私はそう確信しています。

ですから、申し上げます。事態は深刻です。

どうかこの状況を理解してください。東西ドイツ統一以来、いいえ、第二次世界大戦以来、我が国においてこれほどまでに一致団結を要する挑戦はなかったのです。連邦政府と州が伝染病の中ですべての人を守り、経済的、社会的、文化的な損失を出来る限り抑えるために何をするべきか、そのためになぜあなた方を必要としているのか、そしてひとりひとりに何が出来るのかを説明したいと思います。

伝染病について私がこれから申し上げることは、「ロベルト・コッホ研究所」のエキスパート、その他の学者、ウィルス学者からなる連邦政府協議会からの情報です。世界中が全力で研究していますが、まだコロナウィルスの治療薬もワクチンも発見されていません。発見されるまでの間に出来ることがひとつだけあります。

それは私たちの行動に関わってきます。つまり、ウィルス感染の拡大の速度を落とし、その何カ月もの間に研究者が薬品とワクチンを発見できるよう、時間稼ぎをするのです。もちろん、その間に感染し発病した患者は出来る限り手厚く看護されなければなりません。

ドイツには優れた医療制度があり、世界でもトップクラスです。しかし、短期間に多くの重症患者が運び込まれた場合、病院には大きな負担がかかります。それは統計上の単なる抽象的な数字ではなく、父または祖父、母または祖母、パートナーであり、彼らは人間です。そして、私たちはすべての人の命に価値があることを知るコミュニティで生活しているのです。

まずこの場を借りて、医師、そして看護施設、病院などで働くすべての方にお礼を申し上げます。あなた方は最前線で戦っています。この感染の深刻な経過を最初に見ています。毎日、新しい感染者に奉仕し、人々のためにそこにいてくれるのです。あなた方の仕事は素晴らしいことであり、心から感謝します。

さて、ドイツでのウィルス感染拡大を遅らせるために何をするべきか。そのために極めて重要なのは、私たちは公的な生活を中止することなのです。もちろん、理性と将来を見据えた判断を持って国家が機能し続けるよう、供給は引き続き確保され、可能な限り多くの経済活動が維持できるようにします。

しかし、人々を危険にさらしかねない全てのこと、個人的のみならず、社会全体を害するであろうことを今、制限する必要があります。私たちは出来る限り、感染のリスクを回避しなければなりません。すでに現在、大変な制限を強いられていることは承知しています。

イベントは無くなり、見本市、コンサートは中止、学校も大学も保育施設も閉鎖、公園で遊ぶことさえ出来ません。州と国の合意によるこれらの閉鎖は厳しいものであり、私たちの生活と民主的な自己理解を阻むことも承知しています。こういった制限は、この国にはこれまであり得ないことでした。

旅行や移動の自由を苦労して勝ち取った私のような人間にとって(注※メルケル首相は東独出身)、そのような制限は絶対に必要な場合にのみ正当化されます。民主主義国家においては、そういった制限は簡単に行われるべきではなく、一時的なものでなくてはなりません。今現在、人命を救うため、これは避けられないことなのです。

そのため、今週初めから国境管理を一層強化し、最も重要な近隣諸国の一部に対する入国制限を施行しています。経済面、特に大企業、中小企業、商店、レストラン、フリーランサーにとっては現在すでに大変厳しい状況です。

今後数週間は、さらに厳しい状況になるでしょう。しかし、経済的影響を緩和させるため、そして何よりも皆さんの職場が確保されるよう、連邦政府は出来る限りのことをしていきます。企業と従業員がこの困難な試練を乗り越えるために必要なものを支援していきます。

そして安心していただきたいのは、食糧の供給については心配無用であり、スーパーの棚が一日で空になったとしてもすぐに補充される、ということです。スーパーに向かっている方々に言いたいのです。家にストックがあること、物が足りていることは確かに安心です。しかし、節度を守ってください。買い溜めは不要で無意味であり、全く不健全です。

また、普段、感謝の言葉を述べることのなかった人々に対しても、この場を借りてお礼を申し上げます。スーパーのレジを打つ方々、スーパーの棚に商品を補充される方々は、この時期、大変なお仕事を担われています。私たち国民のためにお店を開けていてくださって、ありがとうございます。

さて、現在急を要すること、それはウィルスの急速な拡散を防ぐために私たちが効果的な手段を使わない限り、政府の措置は意味を持たなくなるということです。私たち自身、誰もがこのウィルスに感染する可能性があるのですから、すべての人が協力しなければなりません。まず、今日、何が起こっているかを真剣に受け止めましょう。パニックになる必要はありませんが、軽んじてもいけません。すべての人の努力が必要なのです。

この伝染病が私たちに教えてくれていることがあります。それは私たちがどれほど脆弱であるか、どれほど他者の思いやりある行動に依存しているかということ、それと同時に、私たちが協力し合うことでいかにお互いを守り、強めることができるか、ということです。

ウィルスの拡散を受け入れてはなりません。それを封じる手段があります。お互いの距離を保ちましょう。ウィルス学者は明確にアドバイスしています。握手をしてはいけません。丁寧に頻繁に手を洗い、人と少なくとも1.5メートルの距離を置き、出来るだけお年寄りとのコンタクトを避けましょう。お年寄りは特にリスクが高いからです。

この要求が難しいことであることは承知しています。こういった困難な時期にこそ、人にそばにいてもらいたいものですし、物理的な近接、触れ合いこそが癒しとなるものです。残念ながら、現時点ではそれは逆効果を生みます。誰もが距離を置くことが大変重要であることを自覚しなくてはなりません。

善意のある訪問、不必要な旅行、これらはすべて感染を意味し、行ってはならないのです。専門家が「お年寄りは孫に会ってはいけない」と言うのには、こういった明白な理由があるからです。

人と会うことを避ける方は、毎日たくさんの病人の看護をしている病院の負担を軽減させているのです。これが私たちが人命を救う方法なのです。確かに難しい状況の人もいます。世話をしている人、慰めの言葉や未来への希望が必要な人をひとりにはさせたくはありません。私たちは家族として、あるいは社会の一員として、お互いに支えあう他の方法を見つけましょう。

ウィルスが及ぼす社会的影響に逆らうクリエイティブな方法はたくさんあります。祖父母が寂しくないように、ポッドキャストに録音する孫もいます。愛情と友情を示す方法を見つける必要があります。Skype、電話、メール、そして手紙を書くという方法もあります。郵便は配達されていますから。自分で買い物に行けない近所のお年寄りを助けているという素晴らしい助け合いの話も耳にします。この社会は人を孤独にさせない様々な手段がたくさんある、私はそう確信しています。

申し上げたいのは、今後適用されるべき規則を遵守していただきたい、ということです。政府は常に現状を調査し、必要であれば修正をしていきます。現在は動的な情勢でありますから、いかなる時も臨機応変に他の機関と対応できるよう、高い意識を保つ必要があります。そして説明もしていきます。

ですから、私からのお願いです。どうか私たちからの公式発表以外の噂を信じないでください。発表は多くの言語にも訳されます。
私たちは民主国家にいます。強制されることなく、知識を共有し、協力しあって生活しています。これは歴史的な課題であり、協力なしでは達成できません。

私たちがこの危機を克服できることは間違いありません。しかし、いったいどれほどの犠牲者となるのでしょう?どれだけの愛する人々を失うことになるのでしょう?それは大部分が今後の私たちにかかってきています。今、断固として対応しなければなりません。現在の制限を受け入れ、お互いに助け合いましょう。

状況は深刻で未解決ですが、お互いが規律を遵守し、実行することで状況は変わっていくでしょう。このような状況は初めてですが、私たちは心から理性を持って行動することで人命が助けられることを示さなければなりません。例外なしに、一人一人が私たちすべてに関わってくるのです。
ご自愛ください。そしてあなたの愛する人を守ってください。

ありがとうございます。

メルケル

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(4月4日 読売新聞記事)

メルケル氏の自宅隔離終了

ドイツ政府報道官は3日、新型コロナウイルスの感染者と接触したメルケル首相が、自宅での隔離処置を終えたと明らかにした。隔離後、3回のウイルス検査を受け、いずれも陰性だった。メルケル氏は、3月20日に予防接種を受けた際の担当医師がウイルスに感染していることが判明したため、22日から自宅にとどまり、執務にあたっていた。