”83歳 初めての山登り” 鑑賞 (34 小泉幾多郎)

今年は新春早々から映画館で珍しくも3本も鑑賞したが、わが同期のアサ会にも映画好き、特に女性軍の映画通が多く、最近でも、コロちゃん(西川加耶子さん)やチンタ(真木弓子)さんから、映画の推薦があった。

コロちゃんからは、「男と女人生最良の日」。1966年の「男と女」の続編。「あのシャララ、ダバダバダという音楽、古い画面を度々写しながら老いた男女86歳と89歳。なんということないけれどゆったり楽しかった。誰かがクロードルルーシュの自己満足と批評していたけれど私は満足でした」との推奨。だが、残念ながら見逃してしまった。

チンタさんからは「イーディ、83歳はじめての山登り」。「リアル83歳で、長年夫に仕えたイーデイが一人になって昔からの夢の山に登るという話で、私とは真逆、の人生ですが考えさせられた・・・。」との推奨。言われるように83歳で初めての山登りと学生時代から山に登り続けている我々とは真逆の人生と言えるが、この歳になってみると山登りに初めても最後もなく、登る意欲があるか否かになってきたことが痛感させられたのだった。この映画のこと、言われるまで知らなかったが、横浜・東京で、上映館は銀座のチネチッタのみ。原名「Edie Never too late」。画面では、83歳で夫の介護から解放されたある日、馴染みの食堂で、「追加注文には遅い?」と聞いた時の店員のの応えが 「Never too late」。その言葉を聞いたイーディの何とも言えぬ表情!父が生前スコットランドのスイルベン山に登ろうと言われた夢を実現しようとの決意をした瞬間となったのだ。同年輩となり、昨年は同じ歳の会社の同僚の死、12月には山仲間の同僚、足立、丸橋両君を失い、今年に入っても、同年のいとこが亡くなり、ヤクルトファンから親近感を持っていたひまわりに対して月見草にたとえたぼやき節の野村克也氏も亡くなったが同じ歳。こういう時期を迎えても、Never too lateは本当かしら?と疑問符が付くのだが、まあ本当のことだと信じて、巷はコロナウイルス騒ぎの中に、この映画を観たことが、生きる糧になることを!

映画は、山に登るまでの経緯が少々長く感じ、早く初めて見るスコットランドの
山々を観たい衝動に駆られた。スコットランドの山はさっぱりわからないが、このスイルベンは標高723mと大したことないが、湿原の荒野にほぼ垂直に切り立っているらしい。ロンドンから夜行列車でスコットランドのインバネス駅まで行きバスか車で。偶々知り合ったのが登山用品店勤務の若者の車に乗ることに。父が使っていた古いラジウス等の山道具に対し、新しい道具との対比も語られる。その若者がガイドも出来る幸運にも恵まれたり、雨中遭難寸前に駆け込んだ山小屋の番人が一言も発しなかったことに違和感を覚えたが、初めての山登りに誘った父親が遭難寸前の娘を救ったということを言いたいらしい。ボートで湖を渡ったりしながら、無事山頂に辿り着き、素晴らしい景観を眺めるところで終わるが、人を寄せ付けない意固地な老人が山に登ることで過酷な自然と向き合い、今まで自らが築き上げ、暮らしてきた自己の破壊を経て自分の未来を切り開いたということを描いたようだ。明るく希望に満ちたこれからの人生を頑張れ!と言いたいが、これからの残された人生、介護施設を拒否し、娘と喧嘩別れをしたままでは、どういうことになるのか。山での経験を活かし、楽しい後世を生きて行って欲しいと望むばかり。同年齢の我々も同じ。