エーガ愛好会 (312) エルダー兄弟 (34 小泉幾多郎)

父親が前年に殺され、今年母親が亡くなり、4人の兄弟が、葬儀に帰って来る。長男ジョン(ジョン・ウエイン)は指折りの無頼のガンマン、次男トム(ディーン・マーティン)はさすらいのギャンブラーで、冷静だがときに熱く、兄とはやや対照的、「リオ・ブラボー」以来の競演。三男バッド(アール・ホリマン)がは、物静かで控え目だが、やるときはやる、末っ子バッド(マイケル・アンダーソンjr)は、大学生で、まともな人間になるという一家の期待を集める。

製作時4人の各年齢順をみると、58,48,37,22歳とジョン・ウエインが末っ子から見れば、父親の歳、しかも肺癌手術後初の映画出演とのこと。それにしては、そういったことを感じさせない出演だった。「赤い河」「黄色いリボン」と言った老け役も見事だったが、高年齢になっても手術後をも感じさせない若々しい姿を見せてくれていた。

冒頭河川に沿って走る蒸気機関車に聴きなれた音楽が伴奏する。音楽はエルマー・バーンステイン、「荒野の七人」や「大脱走」ほどの強烈なテーマはないが、全編に心地よく響く。監督が、ドキュメンタリータッチで男臭い作品なら西部劇、戦争物、スリラー等々何をやらせてもヒットを飛ばすヘンリー・ハサウエイ。ジョン・ウエインとも西部劇「丘の羊飼い1941」「アラスカ魂1960」「勇気ある追跡1969」のほか計数作品を監督し、「勇気ある追跡」ではウエインにアカデミー賞をとらせている。

葬儀に帰る長男ジョンを駅に出迎える3人の兄弟、「真昼の決闘」の親玉を迎える子分3人に似ている。しかしジョンは来ない。実は揉め事を嫌い、丘の上から葬儀を見守っていたという。その後、父親が半年前、殺され、父の牧場は搾取され、モーガン・ヘイスティングス(ジェームズ・グレゴリー)によって銃器製造所にされていたことが、その息子デイヴ(デニス・ホッパー)の証言で判明する。母のことは、生前親しくしていた下宿屋のメアリー・ゴードン(マーサ・ハイヤー)から母ケイティの息子達を愛した生前のやさしさを知らされる。ジョンは世話になったお礼にと父親から贈られ形見の揺り椅子と聖書を進呈する。クローゼットに一着しかなかった形見のドレスはサイズが合わなかったか?このメアリーと兄弟が誰とも恋愛感情が表面化しないのが、腑に落ちなかった。母親の方は、亡くなっているにもかかわらず、あらゆるものに関連づけられるような主役を演じ、揺り椅子の動きが母親のため息にも聞こえるのだった。

ヘイスティングスとエルダー兄弟の戦いは、最初に犠牲者が三男パッド、一時、ビリー・ウイルソン保安官殺害の疑いで、牢獄に入れられたり、次男も末っ子も戦闘不能になり、苦戦するも、ジョンが復讐の鬼となって、ヘイスティングを銃砲店共々爆破し、復讐を果たす。

以上概要だが、久しぶりに肩の凝らない痛快西部劇と言っても良いのだろう。