ドナルド・トランプが2016年以降の大統領選で掲げたキャッチフレーズ「MAGA(Make America Great Again)」は、実は彼のオリジナルではありません。ご存知の方も多いかもしれないが、このフレーズは1980年の大統領選でロナルド・レーガンの選挙キャンペーンでも使われていました(なお、トランプは厚顔無恥にも2016年にこのフレーズの商標登録を申請していますが、承認されたかどうかは不明です)。
このフレーズに含まれる Again という言葉が示すように、レーガンもトランプも「アメリカの栄光の時代」を想起させ、それを取り戻そうとする政治的メッセージを打ち出していたことは明らかです。
レーガンが理想としたのは、第2次世界大戦後の経済成長を背景にした、1950〜60年代の「黄金時代」とされるアメリカです。この時期、経済は持続的に成長し、中産階級が拡大しました。日本でも当時、テレビで放映されていたアメリカのホームドラマ(『パパは何でも知っている』『うちのママは世界一』など)には、豊かなホワイトカラー層の家庭が描かれていた。まさに「パクス・アメリカーナ(Pax Americana)」が完成された時代といえます。
一方、トランプも「MAGA」を掲げましたが、彼の言動を見る限り、目指しているのはレーガンが思い描いた50〜60年代のアメリカとは異なるように思われます。アメリカの歴史を振り返ると、トランプが再現しようとしているのは、1865年の南北戦争終結から1893年の恐慌までの間に産業革命が進み、資本主義が急激に発展した「金ぴか時代(Gilded Age)」ではないかと思われます。
この時代には、現在でもその子孫が繁栄を謳歌しているカーネギー、ロックフェラー、モルガン、グッゲンハイム、ヴァンダービルト、ハリマンといった名だたる実業家・富豪が輩出されました。当時のアメリカには政府による規制がほとんど存在せず、ダーウィンの進化論を社会に適用した自由競争・適者生存・自然淘汰の思想が支配的だった。その結果、拝金主義による政治の腐敗が進み、国の庇護を受けた資本家は莫大な富を蓄積し、経済格差が一層拡大する社会が形成されました。
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1895年に完成したビルトモアハウス(ノースカロライナ州)はヴァンダービルト一族のみならず、アメリカ合衆国の富の象徴である。
金ぴか時代(きんぴかじだい)、ないし、金メッキ時代(きんメッキじだい、英: Gilded Age, Gilded Era)は、1865年の南北戦争終結から1893年恐慌までの28年間、あるいは特に1870年代と1880年代をさし、アメリカ合衆国において資本主義が急速に発展をとげた時代である[1]。いわゆる「西部開拓時代」とほぼ重複する。
拝金主義に染まった成金趣味の時代として扱われることが多く、政治腐敗や資本家の台頭、経済格差の拡大を皮肉った文学者、マーク・トウェインらによる同名の共著小説に由来する。
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