先日、BSシネマ放送にあった映画「ショーシャンクの空に(The Shawshank Redemption)」(1994年)を観た。私のような年齢になると厳しいストーリーの映画は、例え評判が良かったとしても、もはや観たくないという気持ちが先立つもので、この映画もその種の感情を持ちながら恐る恐る見始めて、結局一気に全部観てしまった。(私は映画がスリル、サスペンス、それに加えてバイオレンスを重視するようになった1970年代以降の映画は、勿論、例外は除いて殆ど見る気がしないし観ていない)。この映画で引き付けられたものは、俳優たちの演技力、撮影技術、場面展開の妙の3つかと思う。
一例で言うと、もともと薄暗い刑務所内ではあるが、度々出てくる囚人たちが食事をするシーンで、囚人の演ずる俳優たちの顔の表情、小さな動作などが生き生きしているのと、そのシーンのライティングが上手い。そんなこんなで最後まで見てしまったが、刑務所内での3回ほどあるリンチのシーンや50年間の刑期を終えてシャバの戻る模範囚(ジェームズ・ホイットモア演ずる)は、社会に馴染めず間もなく首つり自殺するシーンなど観るに堪えないシーンも多々あった。
この映画の原作はスティーヴン・キングの小説「刑務所のリタ・ヘイワース」(※)で、その映画化版権を監督初のフランク・ダラボンが入手してから5年の歳月を構想に費やして製作されたと観終わってから知った(※囚人たちが刑務所内で観る映画「ギルダ」(1946年)に出演しているのが当時の人気女優のリタ・ヘイワース)。
ストーリーは簡単に言うと、刑務所内の人間関係を通して、冤罪により投獄された有能な銀行員が、腐敗した刑務所の中でも希望を捨てず生き抜いていくヒューマンドラマ。主人公アンディ役はティム・ロビンス、囚人仲間の調達員レッド役はモーガン・フリーマン(彼の演技、顔の表情が抜群に良い)、悪徳な刑務所長役はボブ・ガントン。他にウイリアム・サンドラー、クランシー・ブラウン、キル・ベローズ、ジェームズ・ホイットモア等が脇役として出演している。
当初は主人公アンディ役にトム・ハンクス、トム・クルーズ、ケビン・コスナーなど当時のスター俳優が検討された由。他にもブラット・ピット、ジーン・ハックマン、ロバート・ヂュバル、クリント・イーストウッド、ポール・ニューマン、ジョニー・デップ、ニコラス・ケイジ、チャーリー・シーンなどもキャスティング候補に挙がっていたとのこと。
劇場公開当初は主役のティム・ロビンスやモーガン・フリーマンの演技を中心に評論家は高い評価をしていたが、興行的には大失敗作となった。理由は強力な競合作「フォレスト・ガンプ」などが公開された年だったことや女性が殆ど登場しない映画であることなど。しかしその後、アカデミー賞7部門にノミネートされ(結局、受賞はゼロ)て、興行成績は持ち直し、現在では多くの人から映画史に残る傑作の一つとの認識がなされている由。
主人公アンディが脱獄するシーンは息を飲むほどの迫力があるが、脱走後は故郷を超えてメキシコへ逃亡し、その後に刑期を終える友人のレッドも彼の後を追うところで話は終わる。レッドに至っては40年の刑期を終えても何の感傷もなく、最早、刑務所に居続けてもシャバへ戻ってもどちらでもない人間に変わってしまう。
繰り返すが、レッド役を演ずるモーガン・フリーマンは黒人俳優としては「手錠のままの脱獄」の故シドニー・ポワチエに迫り越える演技力と思った。又、脱獄映画は「大脱走」を直ぐに思い浮かべたが、「大脱走」は脱獄までの過程をスティーブ・マックイーン、チャールス・ブロンソンなどの人気俳優が時にユーモラスとも思える演技で楽しませてくれて、脱獄後の逃走シーンからは一転、スリルとサスペンスで盛り上げ、悲劇的な結末となっていた。
(映画の舞台はメイン州であるが、撮影はほとんどオハイオ州マンスフィールドにあるオハイオ州立矯正施設(オハイオ州少年院)跡がショーシャンク刑務所となった)。
リタ・ヘイワース(Rita Hayworth, 本名Margarita Carmen Cansino、1918年10月17日 – 1987年5月14日)は、アメリカ合衆国ニューヨーク市ブルックリン出身の女優。1940年代にセックスシンボルとして一世を風靡した。