認知症は予防あるのみ、です! (普通部OB 篠原幸人)

年をとってくると、「物忘れ」が多くなりますね。当然です。小学生のお子さんやお孫さんとトランプの「神経衰弱」をやってごらんなさい。まず、負けますよね。おそらく人間の「物忘れ」は25歳とか30歳ぐらいから始まっているのではないでしょうか? 認知症で最も多い症状は確かに「物忘れ」ですが、病的な「物忘れ」と年齢相応の「物忘れ」は区別して考えるべきで、一人で悶々と「物忘れ」を心配することはやめてください。

先日、厚生省は今後20年ぐらいの間に、日本人高齢者の3人に1人は、何らかの認知障害を発症するだろうと報告しました。3人に一人ですよ。怖くありません?確かに医学は毎年進歩を続け、がんの早期発見や生活習慣病の治療も大きく変わりました。そこで、今後は高齢とともに起こる認知障害が、医療の最大の目標になるでしょう。

がんや生活習慣病は早期発見でかなり治せます。私自身もすでにもう3種類もの「がん」を克服できました。急性白血病・胃がん・前立腺がんです。 しかし認知症はなってしまうと、原因にもよりますが、早期発見でも完治させることはまず不可能なのです。最近、レカネマブ(商品名レケンビ)という新薬が大々的に発売されました。立川病院でもすでに10名以上の患者さんがこの治療を受けられています。しかし、この薬でも、従来の治療法と比較しても増悪(注)を半年ないし1年ぐらい延ばすのが精いっぱいというのが現状なのです。だから、認知障害は早期発見よりも、その前段階で「発症させない」ことが最も大事なのです。これがガンや心臓病・脳卒中と大きく違う点です。

それでは、必ず年をとっていく我々はどう対応したらいいでしょうか?認知症や軽症認知障害(MCIといいます)の大部分はなってからでは遅いのです。繰り返しになりますが、早期発見よりも、もっと早期に「ならないようにする=予防」のが最も大切なのです。認知機能障害はなにも「物忘れ」だけとは限りません。むしろ「物忘れ」は20歳過ぎからはじまりますから、軽度なら心配することもないのです。

「急に方向音痴になる」、「お金の計算を間違える」、「今までしていた仕事の手順を間違える」、「誰かが自分のものを隠したと騒ぐ」、「料理の手順を間違えた」などから始まることもあります。でもその時にはもう手遅れかもしれません。毎日の話し相手がいない、毎日同じことしかしない、高血圧・糖尿病・悪玉コレステロールが高い方などは皆さん、将来の認知症候補生なのです。

私は、自分では普通に生活していると高を括って方々の中から、将来認知症になる可能性があること方々を、現段階ではその危険がどのくらいあるかを判定し、その発症予防を目的する特別外来の開設を考えています。無論日々の生活習慣の改善・生活習慣病の治療も大切ですが、単に脳の検査をするばかりでなく、勉強会(皆で集まって話を聞くあるいは議論する)・運動指導(リハビリ)・趣味の発展と知識の交換・食生活の指導・音楽療法などを定期的に繰り返し行い、最大の危険因子の一つとされる「孤独」をさける方法も考える「認知障害予防外来とその対応外来」を、開設することを考えていますが、保険診療の壁にさえぎられて未だ遅々とした歩みです。

皆さん、とにかく、他人と頻回に接することが大切で、一人あるいはパートナーとだけの独自の世界を作ってしまうことだけはやめてください。何か、目的を持って、生きていきましょう。

(注)認知症はほっておけばドンドン進行します。その進行を半年ないし1年ぐらいは延ばせるという意味です。

(編集子)そうすると、”OB会日帰り” とか “日平会” に ”月いち高尾” とか ”アンノウンの会” さらには ”エーガ愛好会” なんてのは、お互い、人助けをしてるわけだ。はやくコロナ後遺症から脱却せなあかんな。シモムラあ! 次の予定はいつだっけ?